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国民年金の納付率が過去最高に達しても、年金額の少ない方が増える理由

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国民年金の納付率が過去最高に達しても、年金額の少ない方が増える理由

国民年金の被保険者(65歳になった時、死亡した時、一定の障害状態になった時に、国民年金から年金や一時金が支給される方)は、次のような3種類に分かれているのです。

国民年金の納付率が過去最高

【第1号被保険者】

日本国内に住所がある20歳以上60歳未満のうち、第2号や第3号に該当しない方は原則として、第1号被保険者という取り扱いになります。

この第1号被保険者の例としては、自営業者、フリーランス、農林漁業者、20歳以上の学生、失業中の方などが挙げられます。

【第2号被保険者】

厚生年金保険に加入している会社員や公務員は、20歳未満や60歳以上の方も含めて、第2号被保険者という取り扱いになります。

つまり会社員や公務員の方は厚生年金保険に加入すると同時に、国民年金にも加入しているのです。

ただ次のような期間を合わせた期間が原則10年以上あるため、65歳になると国民年金から老齢基礎年金が支給される方は、65歳以降は第2号被保険者になりません

・ 公的年金(国民年金、厚生年金保険など)の保険料を納付した期間

・ 国民年金の保険料の免除を受けた期間、または納付猶予や学生納付特例を受けた期間

【第3号被保険者】

第2号被保険者に扶養されている、年収130万円未満の配偶者(20歳以上60歳未満)のうち、第2号被保険者の勤務先を通じて所定の届出を行った方は、第3号被保険者という取り扱いになります。


以上のようになりますが、この中の第1号被保険者については、2023年度額で月1万6,520円となる国民年金の保険料を、納付書、口座振替、クレジットカードなどで各人が納付します。

一方で第2号被保険者と第3号被保険者については、第2号被保険者の給与から控除された厚生年金保険の保険料の一部を、国民年金の保険料として使用するため、各人が保険料を納付する必要はありません。

納付期限から2年以内なら国民年金の保険料を納付できる

2023年6月26日に厚生労働省から、国民年金の保険料の納付率に関するデータが発表されました。

国民年金の被保険者の種別は上記のように3種類あるのですが、厚生労働省から定期的に発表されている納付率のデータは、ほとんどが第1号被保険者だけの納付率になります。

また第1号被保険者が納付する国民年金の保険料の納付期限は原則として、納付対象月の翌月末日になりますが、納付期限から2年以内なら、保険料の徴収権が時効を迎えていないため、まだ納付できるのです。

そのため納付期限から2年が経過するまでは、国民年金の保険料が納付されていない期間を、未納期間と確定できないのです。

こういった事情により国民年金の保険料の納付率には、2年が経過する前の暫定的な納付率と、2年が経過した後の最終的な納付率の、2種類があるのです。

厚生労働省が作成している、「令和4年度の国民年金の加入・保険料納付状況」という資料によると、2020年度分の保険料に関する最終的な納付率が、80.7%に達したそうです。

参照:厚生労働省(pdf)

国民年金の保険料の最終的な納付率が80%を超えるのは、2002年に調査を開始してから初めになるため、比較可能なデータの中では過去最高になります。

国民年金の保険料を納付しなくても納付率は改善する

国民年金の保険料の納付率は、「(保険料を納付した月数÷保険料の納付対象になる月数)×100」で算出します。

そのため保険料を納付した月数が増えなくても、保険料の納付対象になる月数が少なくなれば、納付率は改善するのです。

また保険料を納付する必要がない、次のような各種の免除を受けた期間は、保険料の納付対象になる月数から除外して、国民年金の保険料の納付率を算出するのです。

(1) 法定免除

生活保護の生活扶助を受けている方、1級や2級の障害年金を受けている方などを対象にした制度です。

(2) 申請による全額免除と納付猶予

収入が減ってしまった、または収入が途絶えたなどの経済的な理由で、保険料の納付が難しい方を対象にした制度です。

申請による全額免除は20歳以上60歳未満の方が対象、納付猶予は20歳以上50歳未満の方が対象という違いがあります。

(3) 学生納付特例

経済的な理由で保険料の納付が難しい20歳以上の学生は、申請による全額免除や納付猶予ではなく、こちらの制度を利用する必要があります。

第1号被保険者の半数くらいは保険料を納付していない

厚生労働省が作成している上記の資料によると、2020年度は第1号被保険者が1,449万人いるとわかります。

この中で (1) ~ (3) を受けた方の累計は609万人、国民年金の保険料を未納にしている方は115万人いるようです。

直近のデータである2022年度については、1,405万人の第1号被保険者に対して、 (1) ~ (3) を受けた方の累計は606万人、国民年金の保険料を未納にしている方は89万人いるようです。

いずれの年度についても第1号被保険者の半数くらいは、国民年金の保険料を納付していないため、80.7%という最終的な納付率とは、大きな隔たりがあるのです。

また新型コロナの感染拡大が始まった2020年度以降は、 (1) ~ (3) を受けた方の累計が高止まりしています。

そのため最終的な納付率が改善した主な要因は、 (1) ~ (3) を受けた方が増えたため、保険料の納付対象になる月数が少なくなったことだと推測しています。

各種の免除を受けると受給できる年金額が減っていく

20歳から60歳までの40年間(480月)に渡って、国民年金の保険料を納付すると、次のような金額の満額の老齢基礎年金を受給できます。


・ 67歳以下の方:79万5,000円(1か月あたり6万6,250円)

・ 68歳以上の方:79万2,600円(1か月あたり6万6,050円)


このように480月の納付で満額になるため、「満額の老齢基礎年金÷480」という計算を行うと、国民年金の保険料を1か月納付するごとに、どのくらい老齢基礎年金が増えるのかがわかります

例えば67歳以下の方の場合、「79万5,000円÷480=1,656.25」になるため、国民年金の保険料を1か月納付するごとに、1,656円くらい老齢基礎年金が増えるのです。

逆に言えば国民年金の保険料を1か月未納にするごとに、1,656円くらい老齢基礎年金が減っていきます。

ただ法定免除や申請よる全額免除を受けた期間には、2分の1の国庫負担があるため、10年以内に追納しなくても、1か月あたりの老齢基礎年金の減額は、828円(1,656円÷2)くらいで済みます。

一方で納付猶予や学生納付特例を受けた期間には国庫負担がないため、10年以内に追納しないと未納期間と同じように、1か月あたり1,656円くらい老齢基礎年金が減ってきます。

このように各種の免除を受けると多かれ少なかれ、受給できる年金額が減っていくのです。

また納付率が改善している主な要因が、各種の免除を受けた方の増加だとしたら、年金額の少ない方が増えてしまうため、将来的に大きな問題になると思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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