日本の不動産業界を代表する三井不動産と三菱地所は、ともに3月期決算を採用しており、今回そろって2027年3月期第1四半期の決算を公表しました。前年同期は三井不動産が過去最高益を更新する一方で三菱地所が追い上げる構図でしたが、今回はその明暗がくっきりと分かれています。本稿では両社の最新決算をもとに、その収益構造と事業戦略の違いを読み解きます。
2027年3月期第1四半期 決算内容の比較
三井不動産株式会社 2027年3月期第1四半期 決算説明資料

三井不動産の2027年3月期第1四半期における連結業績は、営業収益6,169億円、事業利益1,045億円、経常利益894億円、親会社株主に帰属する四半期純利益758億円と、前年同期比でいずれも減収減益となりました。
減益の主因は、前年同期に計上した物件売却の反動によるものです。もっとも、賃貸・マネジメント・施設営業の各セグメント別事業利益は、いずれも第1四半期としての過去最高を更新しています。前年の高水準な物件売却益がはく落したことで見かけ上は減益となったものの、稼ぐ力の本体である安定収益は着実に成長している点が特徴です。
三菱地所株式会社 2026年度(2027年3月期)第1四半期決算

一方、三菱地所の2026年度第1四半期連結業績は、営業利益は1,212億円(前年同期比94.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は954億円(前年同期比198.3%増)と、ともに第1四半期としての過去最高益を大きく更新しました。営業収益も4,976億円と、前年同期の3,569億円から大幅に増加しています。
増益の背景には、積極的な資産売却があります。国内ではオフィスビルや分譲マンションの売却益が利益成長を牽引し、海外ではロンドン「Warwick Court」、シドニー「180 George Street」等のプライムオフィスビル売却が寄与して大幅増益を実現しました。加えて、政策保有株式の売却益300億円を特別利益に計上し、四半期純利益の大幅増益に寄与しています。
両社を比較すると、今四半期は「物件売却をどのタイミングで計上したか」という一点が業績の明暗を分けたことが分かります。三井不動産は前年に売却益を先行計上した反動で減益となり、三菱地所は今四半期に国内外の売却益を集中的に計上して大幅増益となったのです。
セグメント別に見る収益構造の違い

三井不動産のセグメント別事業利益を見ると、「賃貸」は国内外オフィスの収益・利益の伸長、国内外商業施設の売上伸長等により、前年同期比で60億円増益の517億円となりました。また「マネジメント」はリハウス(個人向け仲介)の取引件数・単価向上等により24億円増益の198億円、「施設営業」は国内ホテルのADR上昇や東京ドームの収益伸長等により6億円増益の150億円となっています。

一方で「分譲」は、国内住宅分譲で前年同期の都心・高額・大規模物件計上の反動があり、営業収益948億円(前年同期比△60.7%)へと大きく減少しました。分譲事業の反動減が全体の減益を招いた構図です。
三菱地所のセグメント別営業利益(2026年度1Q実績)を見ると、コマーシャル不動産事業が300億円(前年同期比+137億円、物件売却益の増)、丸の内事業が272億円(同+26億円)、住宅事業が233億円(同+34億円)、そして海外事業が430億円(同+366億円、物件売却益の増)となりました。とりわけ海外事業の伸びが際立っています。
ここに両社の収益構造の違いが表れています。三井不動産は賃貸・マネジメント・施設営業といったストック型・フロー型の各事業が幅広く底上げされ、分散型の安定成長を志向しているのに対し、三菱地所は丸の内の賃料改定に加え、国内外の物件売却益と政策保有株式売却益を機動的に積み上げることで、単一四半期での利益を最大化する戦略を鮮明にしています。


