国民全体にとって不信感・不安感の高い公的年金制度であるが、筆者は以下の様に考えている。

現行制度の維持は難しいが、公的年金制度自体は破綻しない

 公的年金制度を維持するため、将来年金受給額が大きく減らされ、現役層が納める保険料率(※)がさらに上がること、さらには年金受給開始年齢が現在の65歳から大幅に繰り下げられることは十分想定される。

※厚生年金の保険料率は、毎年段階的に引き上げが実施されており、平成29年9月以降は保険料率18.30%(労使で折半)で固定されることになっている。

 しかしながら、年金制度自体が破綻することは国家が破綻することを意味しており、GDPの2倍を超える政府債務を抱える日本の国家財政が破綻する可能性はゼロとはいえないが、そのような事態は想定しなくても大丈夫だろう。

 万一国家が破綻する事態になれば、年金制度云々以前に、日本国債を保有する多くの金融機関の破綻は必至で、金融システムひいては金融市場・経済全体が大混乱することになる。筆者は日本の政府や政治家に全幅の信頼を置いているわけではないが、そこまで悲観的な想定をする必要はないと考えている。

自営業者や非正規労働をしている人は、国民年金に必ず加入し保険料を納付するべき

 厚生年金・共済年金に加入している会社員・公務員を除けば、その他の国民は国民年金に加入することになるが、現在の年金受給額である77万円程(平成26年度 老齢基礎年金)では生活費を賄うには全く不足する金額であることは明らかである。

 しかしながら、公的年金は終身年金であり、不十分な金額であっても老後の主たる収入源であることは間違いない。年金受給を受けながら働き続けることや、他の所得を得る手段を持つこと、さらには老後のため十分な貯蓄を準備することで年金を補完することは必要になるが、安定的かつ確実に受給できる基礎年金の重要性は高い

 また、基礎年金財政の半分を支えているのは税金であり、また厚生年金財政からも支援を受けているため、現在の受給水準から大幅に減額されることは想定しにくい。

保険料の納付が困難であれば、免除の申請をすること

 所得が少ない等の理由で、保険料納付が困難な場合は、未納のままにせず、必ず保険料免除・納付猶予制度を活用すること。保険料免除や納付猶予になった期間は、年金の受給資格期間(25年間)に算入されるからだ。

 また、いずれ所得環境が改善した時、険料免除・納付猶予(学生の場合は学生納付特例)を受けた保険料は、10年以内であれば、後から追納して老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることが可能である。

 さらに、保険料免除・納付猶予を受けている期間中、ケガや病気で障害や死亡といった不慮の事態が発生した場合、障害年金や遺族年金を受け取ることは、免除申請することの大きなメリットである。

100年安心どころか30年後に年金積立金が枯渇する!?

 ところで、自民・公明連立政権下で行なわれた2004年の年金制度改革で「年金100年安心プラン」が掲げられたことを記憶している読者は多いことだろう。このプラン名称のとおり「今後100年間は、現役時代の収入に対する年金額の割合、すなわち所得代替率を最低50%程度保証をしますからどうか安心して下さい」と政府は国民へ訴えたのだ。つまり、この安心プランは、リタイヤした後でも現役世帯収入のおよそ半分程度の年金が受け取れ、その制度が100年は続くと解釈することができる。

 しかしながら、この政府・厚労省の掲げた安心プラン宣言をほとんどの国民は信じていなかったであろう。そもそも100年後の将来、日本経済がどうなっているか誰にも分からないし、少子高齢化が進む中、現在の年金制度が将来にわたって存続できるのかという不安があるからだ。そういった国民の疑心暗鬼に配慮したのか、政府は2004年の年金制度改革以降、5年ごとに年金財政に問題がないかをチェックする「財政検証」を実施することを合わせて決定した。

 昨年2014年に2回目の年金財政検証が行われ、将来の年金財政がどうなるかをいくつかのシナリオをもとにシミュレーションした結果が公表された。この財政シミュレーションは、前提条件として「物価上昇率」、「年金積立金の運用利回り」、「経済成長率」等の想定を細分化し、今後、日本経済が順調に成長を続ける5つの「高成長ケース」と、経済成長が伸び悩んだ場合の3つの「低成長ケース」、合わせて8つのケースを示したものだった。

 結果は、日本経済が順調に成長を続ける5つのケースでは、100年間、年金受給額の所得代替率50%をなんとかキープする一方、低成長した場合の3ケースにおいては50%水準を割り込むというものだった。

 つまり、現在の所得代替率62%程度の年金給付水準から約2割も減ってしまう50%の水準を維持できないだけでなく、最悪の低成長ケースのシナリオでは、21年後(平成27年・2015年から)には早くも所得代替率が50%を割り込み、40年後の2055年には現在資産残高およそ130兆円の金積立金が完全に枯渇するという試算結果が示されたわけだ。事態は大変深刻である。

 前回2009年に実施された財政検証が、経済見通しを楽観的に設定し過ぎたシナリオに基づくものだったことの反省が、昨年の財政検証に表れたといってもいいだろう。厚生労働省が政治に一定の配慮をし、経済が順調に成長したケースでは、年金の所得代替率が50%を維持できるシナリオを提示しつつも、現在の様な低成長が今後も長く続けば、現行の年金制度を維持することは事実上不可能であると警鐘を鳴らした財政検証だと受け止めたい。

毎年、年金積立金が5兆円前後の取り崩されている

 ご存知の通り、日本の公的年金制度は、賦課方式で運営されており、現役世代の納めた年金保険料が高齢世代の年金受給にそのまま充てられている。ただし、現在の高齢化社会になる前の時代、つまり年金受給世代の数が現在よりかなり少なかった時代においては、納められた保険料のうち、年金受給に充てられなかった分が、将来の年金支給のために積み立てられている。

 これが公的年金における積立金であり、昨今、マスコミを賑わしているGPIF(年金積立金運用ファンド)が運用対象としている年金積立金だ。

 この積立金を効率的に運用し資産残高を増やすことができれば、受給世代の数がますます増加していく将来において、年金財政を助けるものになると期待されていた。ところが、近年は積立金の資産を増やすどころか、逆に取り崩す事態になっていることを多くの国民は気づいていないだろう。その取り崩し額は毎年5~6兆円(※)といわれている。

 実は、公的年金のうち基礎年金部分(自営業者等が加入している国民年金のこと)の年金支給には、2009年から国庫負担率が従来の3分の1から2分の1へ引き上げられている。国庫負担すなわち税金投入で基礎年金財政を支援することにより、積立金の取り崩し額を最小限に止めることができると思われたが、実際には兆円単位の膨大な金額を毎年取り崩すことになっているのである。

 その理由は、2011年3月に勃発した東日本大震災に対する復興予算に充てざるを得なかったことや、2000年以降のデフレ時代に本来ならマクロ経済スライドを発動して減額すべき年金給付額を減らさなかったことが挙げられる。本来の受給水準より2.5%程高い「特例水準」の年金給付額(2011年度)は、2012年度から3~5年程度かけ段階的に減額されることになったため、年金積立金の取り崩し額は今後いくぶん少なくなることは想定されるが、当面は毎年4~5兆円規模の取り崩しはやむを得ないかもしれない。

※年金積立金管理運用独立行政法人が公表している過去の年度計画によれば、積立金の取り崩し額は2009年度から2013年度までの5年間で、合計30兆円程で年平均6兆円程の取り崩しであった。

 GPIFによる積立金の運用状況次第ではあるが、仮に現在約130兆円ある年金積立金の資産を毎年4兆円強ずつ取り崩していけば、およそ30年で残高はゼロになる計算になる。2009年に実施された財政検証における「低成長ケース」シナリオよりも積立金が枯渇する時期が10年も早くなる事態もあり得るのだ。幸いにも、GPIFによる積立金の運用は、アベノミクス効果もあり2012年度と2013年度はそれぞれ10.23%、8.64%と高い収益率を達成しており、おそらく2014年度の収益率も好調と思われる。

 しかしながら、公的年金の自主運用を開始した平成13年度(2001年度)から平成25年度までの13年間の平均収益率は年2.51%に過ぎず、10%前後の高いリターンを長期的に期待することは現実的ではない。むしろ、公的年金の運用改革が進み、国内外の株式への投資比率を従来から大幅に高めたことは、高いリターンを得られる可能性がある一方、将来運用の大幅損失により積立金を大きく減らすリスクを高めたともいえる。

 以上、公的年金の財政状況について、説明してきましたが、現状は極めて深刻であることはお分かり頂けたと思う。では、私たち国民は、年金制度についてどう向き合ったらよいだろうか?

 「そもそも制度自体が破綻しており、将来受給できる年金額は大幅に減らされるか、少なくとも支払った保険料を下回る金額しかもらえないのなら、保険料を納付するのはばかげている!?」と考える若年層は多いかもしれない。しかしながら、制度自体の大幅改正(受給水準・受給開始年齢・保険料率の改正はおそらく必至で、富裕高齢者層への年金受給制限等も議論されている)は不可避であるものの、冒頭で述べた通り、筆者は「それでも公的年金制度は破綻しないと考えよう」と訴えたい。(執筆者:完山 芳男)