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【ゼロ葬】という衝撃 「葬儀」、「遺骨引き取り」、「お墓」…一切なしという選択

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【ゼロ葬】という衝撃 「葬儀」、「遺骨引き取り」、「お墓」…一切なしという選択

故郷の墓を考える


先日、筆者の事務所へ老後に向けた資産設計の相談にお越しになったAさん(男性60歳代)から、お墓に関する話題を伺い大変考えさせられた。

『故郷(東北の某県)にある親の墓の扱いに困っています。

これまで、手入れをしてくれていた叔父が高齢のため体調を崩し、墓の世話をすることができなくなりました。周りに墓を引き継ぐ人は誰もいません。

墓の手入れのためだけに、高い交通費を使って年に数回帰省するわけにもいきませんので、この際、「墓じまい」をして名古屋に引き取ろうかどうかと考えています』

とAさんは故郷にあるご両親のお墓に関して悩んでおられた。

「墓じまい」とは、お墓参りや墓の世話をする人がいなくなった場合に、お墓を撤去したり、処分したりすることである

Aさんは、墓じまいといってもお墓を処分するのではなく、東北にある故郷のお墓から、現在住んでいる愛知県名古屋市中心部から少し離れた郊外に新たに墓地を購入し、そこへ遺骨を移す「改葬」をしようと検討されている。

そうすれば、故郷にある両親のお墓がそのまま放置され荒れ放題になることが避けられるからだ。

Aさんのケースのように、今ある故郷の墓から、現住所に近い新しい墓地に遺骨を移す「改葬」が増加しているという。

都会に住む方には「永代供養墓」が人気

また、近年都会に住む人たちの間では「永代供養墓」が人気となっているようだ。

東京に住む筆者の友人は、最近、郊外にあった両親の墓を都心の永代供養墓(納骨堂)に移し、自宅にあった仏壇も無くした。

友人が利用している永代供養墓は、大規模な納骨堂で都会の一等地にあるビルの施設内に備えられた「大量のロッカー型納骨堂」に遺骨を納める形態とのこと。

従来から日本で行われている「墓を作って守っていく」というやり方とは異なり、納骨堂は一度入ると管理を事業者にすべて任せられるため手間がかからず、維持費がお墓を買うのに比べて安いという利点がある

しかし、ある意味で「墓を捨てる」という行為である以上、ご先祖や両親に対して申し訳ないという気持ちもあったと友人は話していた。

少子高齢化や核族化が急速に進むにつれて、家族の力が弱まってきている。

家族の絆が失われつつある現代、多くの人にとっては、先祖・両親の墓を守ることが身体的にも、金銭的にも大きな負担となっていることが、「墓じまい」するケースが増加している背景だと思われる


聞いたことありますか?「ゼロ葬」

ところで、読者の皆さんは『ゼロ葬』という言葉を聞いたことはあるだろうか?

9月21にNHKで放送された「クローズアップ現代」という番組で「あなたの遺骨はどこへ 広がる『ゼロ葬』の衝撃」というテーマで、現代の葬儀事情を特集していた。

テーマを見ただけで筆者のみならず普通の人なら大きな衝撃を受けることだろう。家族が葬儀もせず、遺骨も引き取らず、そして墓も作らないことを『ゼロ葬』と業界では呼んでいるとのこと

現代の家族の在り方を、弔いの現場からみた取材が大変興味深く、自分自身の弔いやお墓、遺骨の扱いについて深く考えさせられる番組であった。

番組を視聴してまず驚いたのは、これまでのように、亡くなった人を家族の手で埋葬するのではなく、遺骨を引き取る新たなサービスを最近利用する人が増えているということだ

ある葬儀会社による遺骨引き取りサービスには、以下の3つがあるようだ。

・ 預骨(よこつ)
・ 迎骨(げいこつ)
・ 送骨(そうこつ)

【預骨】…墓が用意できるまで一時的に預かることが預骨

【迎骨】…家まで遺骨を引き取りに来てくれるサービス

【送骨】…そして宅配便で送るだけで合同のお墓に埋葬してくれるサービス

遺骨を宅配便で送ることに法的な問題はないようだが、遺骨を物のように取り扱うことに個人的には抵抗感を禁じ得ない。

人間誰しもがいずれ死ぬし、死んだ後には遺骨が残る。

「いずれ自分自身が亡くなれば家族が葬儀を行ってくれ、火葬後の遺骨はお墓に納めてくれる」という考え方がこれまでは一般的であったが、その考え方があたりまえという時代ではもはやなくなってきている。

遺骨を預けたまま音信不通となるケースも

番組では、高齢の母親の介護や医療費がかさむ中、亡くなった父親の墓を買う経済的余裕がなく、やむなく葬儀会社の「預骨」サービスを利用(保証金3万円で預けられるという手軽さゆえ)している男性が紹介されていた。

遺骨の預かり期間が終了するまで、お墓を準備することができればいいのだが、それができなければ、預けた遺骨は引き取り手のない他の遺骨とともに合同墓で埋葬されるとのことだ

「預骨」で遺骨を預けたまま音信不通となるサービス利用者は少なくないようである

合同墓で40体もの遺骨が一斉に埋葬される様子を映像で見たとき、筆者は本当に胸を突かれる思いがした。

「預骨」というのは、遺骨を一度引き取る人がいるケースであるが、遺骨の引き取り手が全く見つからずに、自治体の無縁墓地などに埋葬される遺骨が近年増えているとうことにも驚いた。

埼玉県さいたま市の例では、無縁墓地に埋葬された遺骨が2003年は33件だったのものが、2015年には188件と6倍にも急増している。

背景にある社会的な変化

死亡年齢の高齢化

このような背景の一つに、『死亡年齢の高齢化』があると番組出演者のシンクタンク研究員が分析していた。

90歳以上で亡くなった人の数が2000年には約12万人だったものが、2014年には約30万人へと年々増加しているとのこと。今の日本は、亡くなっている人の5人に1人以上が90歳以上という計算になる

そうなると、90歳代で亡くなった人たちのお子さんは60歳代後半~70歳代の高齢者で既に年金生活者になっていることが想定される。

彼ら(彼女たち)は自分たち自身の医療や介護に非常にお金がかかっていて、結果として親の葬儀代やお墓の費用が払う経済的な余裕はないという事態が生じる。

生涯未婚と熟年離婚の増加

無縁墓地に埋葬される遺骨が増えているもう1つの背景には、『生涯未婚の人と熟年離婚が増えている』ことがあるという

生涯未婚であれば配偶者や子供はいないので、自身が亡くなったら誰が弔うのかという問題はおのずと発生する。生前に親しく交流をしていれば、甥や姪が葬儀や墓の面倒を見てくれることもあるかもしれないが、あまり期待はできないであろう。

また、熟年離婚をした場合、自分が死んだとき別れた元夫(元妻)が死後の面倒をしっかり見てくれるのだろうか?

ライフスタイルはもちろんのこと、家族の形が多様化している現代社会において、自分自身が亡くなった際、配偶者(元夫、元妻を含め)や子ども、あるいは親類が葬儀やお墓の世話を本当にしてくれるのだろうか…と深く考えさせる番組であった。

死後に発生する諸問題に、しっかり向き合っていく 


老後の親の介護や自身の老後生活への不安といった問題については、筆者もFPとして相談者には資金プランの面で様々な助言をさせて頂いている。

しかしながら、相談者が亡くなった後の遺骨やお墓をどうするかという問題、つまり『老後のあとの問題』を意識することはほとんどなかった

死後に発生するかもしれない諸問題に、しっかり向き合っていくことの大切さをあらためて認識した次第である。2025年には団塊の世代が全て後期高齢者となる。

世界でも類を見ない超高齢時代を迎える日本では、家族がいないから自分自身の介護や葬儀、お墓のことを悩んでいる人だけでなく、「家族がいても悩む」という時代がやってくることは間違いないであろう。(執筆者:完山 芳男)

実際の購入者の口コミなど詳細な情報から霊園を探せる「いいお墓」

《完山 芳男》
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完山 芳男

完山 芳男

独立系FP事務所 FPオフィスK 代表 米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格) 慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。 寄稿者にメッセージを送る

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