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2017年春には「ビットコイン」が非課税に 「支払い手段」となる準通貨として普及なるか?

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2017年春には「ビットコイン」が非課税に 「支払い手段」となる準通貨として普及なるか?

いよいよ日本でも通貨としての性質を持ち始める


最近、各種メディアの報道をみていると「ビットコインが日本でもいよいよ通貨としての性質を持ち始めるのではないか!?」という期待が高まっている。

ビットコインは、インターネット上で最も多く取引されている仮想通貨であり、現在の時価総額は約100億ドル(1兆円)といわれている。

仮想通貨市場全体のおよそ8割を占めており、利用者は世界で1,300万人以上と過去2年間で約3倍と急増している。日本ででも数十万人が利用しているとされる。

日本経済新聞10月12日の記事『ビットコインの取得時に消費税課さず、通貨と同じ位置づけに』によれば、財務省と金融庁は、ビットコインなどの仮想通貨をモノやサービスではなく「支払い手段」となる準通貨としての位置付けを持たせる方向で議論を進めているようだ

それにしたがって、現在はビットコインを買う際にかかる消費税が、2017年春からは非課税になる可能性が高まっている

仮想通貨になぜ消費税がかかっているのか?

「仮想通貨になぜ消費税がかかっているのか?」と疑問を持つ読者は少なくないだろう。

ビットコインをはじめとする仮想通貨について馴染みのない読者のために、最初にお伝えしておこう。

ビットコインは日本国内で利用されているプリペイド型の電子マネーであるSuicaやWAON、楽天edyとは全くの別物で、インターネット上で流通するいわば「発行体のない通貨」に近い存在である

他人への送金や商取引での支払い手段として使用できることはもちろんのこと、仮想通貨を保有することで資産価値の保持(価値は変動するが)ができ、円やドルなどの主要通貨との交換(両替)が比較的自由にできるという流動性もある。

世界中では、ビットコインを含め600種類以上の仮想通貨が流通しているといわれている。

今の日本では、仮想通貨は公式な通貨ではないことは当然のこと、外国通貨や有価証券(株式や債券など)のいずれにも該当せず、その他のモノと同様に消費税の課税対象になるという解釈が、2014年に公表された参議院での政府答弁で確認がされている。

一方、与党自民党からもビットコインに関する見解が出され、『仮想通貨は通貨でもモノでもない「価値記録」という新たなものである』というなんとも曖昧な位置付けがされた。

ビットコインの普及はまだ追いついていない

ビットコインが世の中に登場したのは2009年であり、その普及に対して法整備がいまだ追いついていない状況なので、日本ではビットコインの定義が定まっていないというのが実態なのであろう

したがって、これまでビットコインの消費税に関する明確な規定はなかった。

ところが、自民党IT戦略特命委員会から2014年に出された「ビットコインをはじめとする価値記録への対応に関する中間報告」によれば、『通貨と価値記録および、価値記録と物・サービスの交換は消費行為に該当するので、消費税を課税する』という一つの判断が示された。

説明が長くなって大変申し訳ないが、結論として、日本においては「仮想通貨の購入時と売却時には消費税が発生する」というのが現時点での正しい認識である

でも、ビットコインを普通に売買する個人は特に心配する必要はない。なぜなら、消費税の納税義務は売上高1,000万円以上の個人事業主や法人が対象なので、個人がビットコインを売却する際は消費税の対象にはならないからである。

つまり、ビットコインの保有において個人で消費税を納税する煩わしさは通常ないと考えていいだろう。


今の日本では、ビットコイン売買において消費税が課税されている

ただし、今の日本ではビットコインの売買においては消費税が課税されているので、専門の取引所や販売所でビットコインを入手する場合、利用者はコインの対価とともに8%の消費税と手数料を支払っている。

先に紹介した記事報道の通り、正式に法整備がされ2017年春以降、ビットコインの取引が非課税になれば、購入時に消費税8%分の価格が下がり、また事業者が消費税を税務署に納める手間がなくなる見通しだ

大手の事業者にとっては、事務的な作業が大幅に減ることでビットコインの取引にかかる作業が円滑にでき、今後の普及に弾みがつく可能性はある。

主要な先進国(米国、英国、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7か国)でビットコインに消費税を課しているのは日本だけである

ビットコインをはじめとする仮想通貨が消費税の対象かどうかをはっきりさせるよう要求していた金融庁にとっては、改正資金決済法(2016年成立)により、プリペイドカードなどと同じ「支払い手段」と定義づけられた仮想通貨が、消費税の対象外になる流れはほぼ固まったと安堵していることだろう。

課税対象が減ることにいつも消極的な財務省も、改正資金決済法の定義に沿って仮想通貨を非課税にする方針である。

日本でも仮想通貨は急速に普及するだろうか?

では、消費税が課税されなくなれば、日本でもビットコインをはじめとする仮想通貨は急速に普及するだろうか?

筆者は、ビットコイン普及の障害になるものとして以下の2つが大きいと考えている。

・ 代金の支払いとして、ビットコインが利用できる店舗数がまだ圧倒的に少ないこと

・ ビットコイン自体の価値の変動が大きく、投機の対象とみなされていること

ビットコインを使える店舗が増えていることは事実である。国内の大手ビットコイン取引所によれば、日本で買い物や飲食の支払いとして利用できる店舗は2016年9月時点で約2,500店と、昨年同時期と比べて4倍程に増えている。

2016年内に電気代の支払い(一部の新電力事業者)が可能になるようだ。

しかしながら、利用できる店舗数はまだまだ少ないといえるだろう。電力料金をはじめ公共料金の支払いとして、ビットコインを受け入れる大手事業者の動きは今のところほとんどないといってもいい。

ネットショッピング業者が普及する鍵?

また、仮想通貨はインターネット上で利用されるところに最大の利便性が発揮されることを踏まえると、リアル店舗よりもネットショッピング業者が大々的に決済手段として導入することが、日本でビットコインが普及する鍵になるだろう。

Amazonや楽天市場、ヤフーショッピング等での買い物でビットコインが使えることになれば、普及が一気に進んでいくかもしれない。

ちなみに、楽天の三木谷社長は、

「時期は企業秘密で言えないが、楽天でもビットコインの導入は検討している。実施するのにそれ程コストもかからないと思う。あらゆる決済のプラットフォームを受け入れたいと考えており、PayPalやビットコインを含めた様々な決済手段を選ばないプラットフォームを構築したい」

と、楽天金融カンファレンス2015でコメントしている。

「ビットコインを楽天市場での支払いに使えるよう検討している」という言及から、三木谷氏の前向きな姿勢は伺えるが、ビットコインをあくまで多種多様な決済手段の一つとして捉えているところに、ビットコインが主要な支払い手段として定着するかどうかはいまだ未知数といった印象を筆者は受けた。

ビットコインの価値変動は非常に激しい

また、日本では「ビットコインは支払い手段というより投機の対象である」という強いイメージがあるのが現状だ。なぜなら、ビットコインの価値変動は非常に激しいからである。

円建ての国内価格の推移を見てみると、2013年12月に1ビットコイン=約12万7,800円の最高値まで上昇した後、翌2014年2月に約9,400円まで急落し価値が10分の1未満になった。

この暴落と言ってもよい価値の下落は、2014年2月に発覚した大手取引業者であるMTGOX(マウントゴックス社、2013年には世界の取引の70%を占める最大の取引所であった)がハッカーの大規模なサイバー攻撃を受け、引き出し停止を余儀なくされた事件により引き起こされたといってもいいだろう。

顧客から預かったビットコインなど数百億円が消失したとして、MTGOX社は民事再生法の適用を申請し経営破綻に至ったが、後に同社のマルク・カルプレス社長自身が口座を不正に操作し、米ドルに換金したり不正流用や着服したりしていたことが発覚し、カルプレイス元社長は15年8月に業務上横領容疑等で逮捕された。

しかしながら、MTGOX事件は同社固有のデータ管理・セキュリティ上の不備や元社長の不正が原因であり、ビットコインの仕組みや制度全体に問題があったわけではないことを市場が認識するにつれて、2015年にかけてビットコインの国内価格は2万円前後から6万8,000円水準へ回復をした。2016年6月以降は、約5万8,000円~約7万5,000円の水準で価格は安定的に推移している


フィンテック時代の到来

FinTech(フィンテックとは、金融とテクノロジーが融合した新たな金融サービス)時代が到来しつつある今、その一翼を担うであろうビットコインの普及は、いわば「社会革命」といってもいいかもしれない

ビットコイン自体をどのように評価するにせよ、読者の皆さんにはまず正確に理解してもらいたい。

本記事コラムでは説明は省くが、中央銀行のような発行体や管理主体のない通貨であるビットコインの取引は、『ブロックチェーン』と呼ばれる技術により、インターネットに接続された膨大な数のコンピューターで承認されているので、偽造や二重支払いのような不正が起きない仕組みになっている

最後に

「ビットコインを値上がり益狙いの投機目的で保有する」ことを筆者はお勧めしないが、少しでも興味のある読者はまずは取引所に口座を開設することから始めて、ビットコインを少額でもいいから保有してみてはどうだろう。

最近ではビットコインの取引所数もかなり増えており、それぞれに特色(取引単位・手数料・入金方法・スマホアプリの使い勝手など)があるので自分にあった取引所を選んでもらいたい。

BitCoin日本語情報サイトを参照されたい。

価格の変動が大きく投機の対象となりやすいビットコインであるが、国内における法整備により「支払い手段」、すなわち準通貨としての位置付けがなされ消費税の対象外となれば、2017年度以降は普及に弾みがつく可能性がある。

また、ビットコインには国内外への送金手数料がほぼゼロという大きなメリットがあるので、もし読者の方に海外留学している、またはその予定のあるご子息がいるのであれば、彼(彼女)への学費の送金にはビットコインは最適といえるだろう。(執筆者:完山 芳男)

《完山 芳男》
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完山 芳男

完山 芳男

独立系FP事務所 FPオフィスK 代表 米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格) 慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。 寄稿者にメッセージを送る

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