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日本では「熱意ある会社員」はたった6% 世界最下位クラスだった衝撃の調査結果と日本政府が推し進める「働き方改革」について

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日本では「熱意ある会社員」はたった6% 世界最下位クラスだった衝撃の調査結果と日本政府が推し進める「働き方改革」について

日本は「熱意あふれる社員」の割合がたった6%


日本経済新聞の記事(2017/5/26掲載)にれば、米国の大手調査会社ギャラップ社が世界各国の企業を対象に、従業員の仕事への熱意度(Engagement)を調査したところ、日本は「熱意あふれる社員」の割合がたった6%しかないことが分かったという。

なんと、日本は調査対象となった139か国中132位と最下位クラスだったようなのだ

さらに、「熱意あふれる社員」以外の残り94%のうち「やる気のない社員」の割合が70%で、「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合が24%との調査結果も合わせて報じられている

やる気のない社員が多いという調査結果を、私たち日本人はどのようにとらえるべきだろうか

本来、勤勉な国民性を持っていた日本人

本来、日本人は勤勉な国民性を持っており、会社への帰属意識や忠誠心が強いことで国際的に知られていたのではないだろうか?

筆者のサラリーマン時代の記憶を思い起こすまでもなく、日本の会社には無気力で能力のない会社員が相当な割合いることは容易に想像できるが、世界最下位クラスというのは、いくら何でもひど過ぎないだろうか…とどこか腑に落ちない気分になった。

1980年代後半から90年代前半にかけての好況期には「会社人間」と言われた日本のサラリーマンは、バブル経済崩壊の長引く不況の中で、勤務先への帰属意識を徐々に無くしてきたのかもしれない

日本の会社員の仕事への熱意がなぜここまで低下したのか

それでも、この調査結果にあるように、日本の会社員の仕事への熱意がなぜここまで低下したのか…。

その理由や背景について解明すべく日経新聞の記事では、来日したギャラップ社のジム・クリフトン会長にインタビューをしている。

そのインタビューの内容をまとめると、

・ 日本は1960~80年代に非常によい企業経営をしていて、コマンド&コントロール(指令と管理)という手法で他の国もこれを模倣していた。

・ 問題は、ミレニアル世代(1980~2000年頃に生まれた世代)の若手会社員が求めていることと、経営陣・マネージャーたち(部下をもつ管理職層)の考え方が全く違うことである。ミレニアル世代は自分の成長に非常に重きを置いている。

・ さらに大きな問題は、「不満をまき散らしている無気力な社員」の割合が24%と高いこと。彼らは社員として価値が低いだけでなく、周囲へ悪影響を及ぼす。事業における事故や製品の欠陥、あるいは顧客の喪失など会社にとって重大な問題が起きる場合の多くは、そういう社員たちが関与している。

・ 無気力な社員が多くなった背景には、上司の言ったことを、口答えせずに確実にやれば成功するという仕事のやり方・考え方があるとのこと。この考え方(マインドセット)を変えていき、上司と部下が一緒になってどう結果を出すか、部下をどうやって成長させていくかを考えることが不可欠であり、それこそが上司の仕事である。

・ そのためには、部下の強みが何かを上司が理解することが重要。部下の弱みを改善することに集中する従来の上司のやり方を改め、部下に合った仕事に変えることで無気力な社員を半減させることができる。いくら指導をしても、部下の得意でないことが強みに変わることはない。

米国では、15年程前から企業におけるマインドセットが変わり始めた。それまでは大手テレビ局も3つ、大手自動車メーカーも3つ、大手航空会社も3つと、どの業界も大手企業の寡占状態で安定していた。その後、自由化が進んで各業界とも厳しい状況に追い込まれ、自社の強みを伸ばすことに注力したことで、米国では「熱意あふれる社員」の割合が高まり生産性も上がった

・ 強みを伸ばし熱意ある社員を増やせば会社の業績向上につながる。日本企業は今、厳しい状況にあるが、経営者・リーダーたちのマインドセットに変革が起き始めており、生産性を高めることに対する危機感が強い。大きな変革は困難な状況にならないと起きないのであれば、今は逆にチャンスの時である

ギャラップ社CEOのコメントからだけでは「日本の会社員の熱意のなさが世界最低クラスである」ことはイマイチ納得できないが、調査の方法(調査対象である会社員一人一人に対する質問の仕方)や統計の組み方が特殊なのかもしれない。


日本は「熱意あふれる社員」の割合も明らかに低い

ちなみに、このギャラップ社による調査(Gallup poll)は、G.H.ギャラップが 1935年に設立したアメリカ世論調査研究所が継続的に実施している世論調査のことを指す。

科学的かつ統計学的な手法を用いた標本抽出 (回答者の選出)ならびに面接法による調査によって、世論調査が精度の高いものであることは全米および世界中で知られており、現在も民間の世論調査会社の調査としては、「Gallup poll」が米国で最も信頼性が高いと言われている。

日本人にはなじみが薄いギャラップ調査ではあるが、世界的に信頼性が高い調査である以上、今回の調査結果を私たち日本人は甘んじて受け入れる必要があるだろう。

記事でも言及されていたが、米国における「熱意あふれる社員」の割合は32%と大きく日本を引き離しているし、世界全体でもその割合は13%なので、8%という日本の割合は明らかに低いと言っていい

米国企業を対象にした2016年以降の調査結果を調べてみたが、「熱意あふれる社員」の割合の増加ペースが年々鈍くなっているとはいえ、概ね30%前後の高い水準をキープしている。

先に紹介したギャラップ社クリフトン会長のコメントにあるとおり、15年程前から米国企業におけるマインドセットが変わり始めたことは間違いなさそうだ。

≪参照元:HR Examinerウェブサイト内にある”IMPROVEMENTS IN EMPLOYEE ENGAGEMENT HAVE BEEN SLUGISH”の項目(英語)≫

アジア全体における「熱意あふれる社員」の割合も相対的に低い

また、2011—2012年のギャラップ調査で少し古いデータはあるが、世界の各地域における「社員の熱意度を比較」したものも紹介しておこう。

「熱意あふれる社員」の割合は、北米地域29%・オセアニア24%・EU諸国14%となっており、また意外にも中南米地域は21%と比較的高い割合である。

それらに対して、東南アジアは12%、東アジアは6%となっており、日本を含めたアジア全体における「熱意あふれる社員」の割合が相対的に低いことが分かった。≪参照元:GALLUP(英語)≫

尚、上記URLでは言及していないが、東アジアにおいて、日本・韓国・中国・台湾・香港の社員の熱意度はほぼ同じ水準であるし、過去10年間で「熱意あふれる社員」の割合はほとんど変化がなく、一向に改善する兆しがないことも確認できた。

会社員のやる気や仕事への熱意度に、アジア人固有の特徴や事情があるのかどうかは分からないが、世界平均でみても「熱意あふれる社員」の割合が明らかに低く世界最下位クラスのわが日本は、早急に対策が求められるだろう。

社員の強みを伸ばし熱意ある社員を増やしていくことが、生産性を高め会社の業績を向上させることに繋がるだろうし、そのためには、日本の経営者・リーダーたちのマインドセットの変革がまずは不可欠だ

日本政府が成長戦略の一環として推し進めている「働き方改革」


しかし、筆者には一つ気になることがある。

それは、日本政府が成長戦略の一環として推し進めている「働き方改革」と「熱意あふれる社員を増やすこと」の整合性だ。

長時間労働の是正は当然であるし、ワークライフ・バランスも人間らしい豊かな働き方を実現するためには大切であることは言うまでもないが、政府と経済界が提唱・推進している「プレミアム・フライデー」なるキャンペーン施策はどうにも感心できない。

毎月末金曜日に、普段よりもプレミアムな生活を推奨する個人消費喚起を謳っているが、一部の大企業に勤めている恵まれた会社員層のみがその恩恵を受けているのが現状だろう。

むしろ、サービス業ではプレミアムフライデーによるしわ寄せもあり、社員・労働者の負担増が懸念されている。

やはり、政府が主導する「働き方改革」よりも民間企業の経営者たち自らが率先してマインド・セットを変革して社員の仕事に対する熱意を向上させることが、真の意味での「働き方改革」に繋がっていくのではないだろうか。(執筆者:完山 芳男)

《完山 芳男》
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完山 芳男

完山 芳男

独立系FP事務所 FPオフィスK 代表 米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格) 慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。 寄稿者にメッセージを送る

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