市街化地域内の農地が市場に大量放出によって引き起こされるとされる2022年問題。
需要を大幅に上回る不動産が市場に流出することで不動産価格の相場は下落すると予想され、不動産投資家にとっては問題というよりむしろチャンスと捉えることができます。
この2022年問題については、以前のコラムでご紹介しましたが、実は時を同じくして、不動産の大量放出を招きかねない問題がもうひとつ存在します。今回は、その問題について紹介いたします。
もうひとつの2022年問題
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1947年から49年生まれの団塊世代が後期高齢者になるのが、2022年以降。それに伴って、
相続の大量発生が予想されています。
相続財産については、申告期限となる被相続人の死亡から10か月後から3年以内に売却すれば、相続税の一部を取得費として扱うことができるなど、売却の際、税制上の優遇措置を受けることができます。
その結果、2022年以降、相続財産である土地や建物が、市場に大量に出回るのではないかと予想されているのです。
それが、「2022年問題」、つまり都市農地の大量放出によって引き起こされる、不動産の供給過多に拍車をかけるのでは? そのような問題が懸念されています。
供給過剰に陥った不動産の価格は、下落することが予想されるため、不動産投資には好機と言ってよいでしょう。
しかし、相続の当事者の立場で考えると、2022年以降の不動産は「負動産」になることも考えられるので、注意が必要です。
負動産が招く負の連鎖
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不動産価格が下落し始めると、団塊世代が暮らしていた住宅を相続しても、それを持て余してしまうケースが増えると見られます。
団塊世代が後期高齢者となる2022年以降、人口が減少した地域の生活インフラや産業は、徐々に衰退していきます。
そうなると、若者は都市部に流出、人口減少に拍車が掛かることになるでしょう。再開発も行われなくなるため、不動産価格は一層下落するという悪循環を招くことに。
相続した不動産を売却しても二束三文にしかならないとはいえ、放置しておけば固定資産税を始めとした維持費を支払わなくてはなりません。
住んでもいないのに出費がかさむこうした相続財産は、相続人の団塊ジュニアにとってまさに「負動産」というほかありません。
これから相続を迎える人は、自分が相続人になったときのことを想定して、早めの対策を講じておくことがなにより大切です。
例えば、相続対象となる不動産を、不動産価格が安定している今のうちに売却してしまうというのも、ひとつの方法でしょう。
投資家としてだけでなく、さまざまな観点から自分の財産を評価することも、これからの時代は必要になってくることでしょう。(執筆者:内田 陽一)