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支持と関心が高まる「インデックス・ファンド」

・ NISA
・ つみたてNISA
などの税制が優遇された資産形成制度が普及するのと平行して、インデックス・ファンドへの支持と関心が高まっているように見える。
投資信託に詳しいブロガー達が投資信託に投票するイベント(「ファンドオブザイヤー」など)でも、例年上位を占めるのはインデックス・ファンドだ。
インデックス・ファンドとは
何らかの市場指数(=インデックス)に連動するように運用される投資信託で、
・ 手数料が低廉な商品が多い
ことが特徴だ。
インデックスに代表される「市場の平均」を上回るリターンを目指すアクティブ・ファンドの対比で語られることが多い。
インデックス・ファンドには大まかに3つの長所がある。
長所1. 何と言っても手数料が安い
投資家にとっては長所だ。
アクティブ・ファンドの多くが年率1%前後から1.5%内外の信託報酬を取るのに対して、インデックス・ファンドは公募の投資信託で0.2%程度のものが多く、その差は圧倒的だ。

長所2. 投資の状態を把握、管理しやすい
運用成績が概ね指数に連動するので、自分の投資の状態を把握しやすい管理のしやすさを挙げることができる。
長所3. 資産運用全体の整合性を確保しやすい
資産運用にあっては、内外の株式、債券などへの配分比率を決めるアセット・アロケーションと呼ばれるプロセスが重要だが、この際に
・ 外国株式
などの資産分類のリスクとリターンは何らかの指数のリターンで代表されることが多い。
投資家がインデックス・ファンドを持つのであれば、アセット・アロケーションと自分の運用との間に大きな乖離は生まれない。
アクティブ・ファンドを持つとアセット・アロケーションとの「ずれ」を気にしなければならない場合がある。
リターンの優位性は頑健

肝心の運用成績だが、実績で平均を見ると、国内でも海外でも、インデックス・ファンドの方がアクティブ・ファンドよりも優れている。
数年単位以上の期間で見ると、どの期間をとっても、アクティブ・ファンドの6割から7割くらいがインデックス・ファンドに負けることが多い。
先にインデックス・ファンドの長所として挙げた運用商品としての手数料の安さに加えて、
ことが、主な要因だが、現在のように圧倒的な手数料差がある以上、この傾向は変わりそうにない。
一方、インデックス・ファンドに勝つことができるアクティブ・ファンドを投資する「前に」見つけることができるといいのだが、残念ながら、相対的に優れたアクティブ・ファンドを事前に見つける方法はない。
アクティブ・ファンドがインデックス・ファンドに勝てない理由
としばしば言われるのだが、これは正しくない(この状況を学術的には「市場の効率性」と呼ぶ)。
インデックス運用の優位性の根拠は、
ので、市場で形成される株価が正しくても、正しくなくても、変わらないのだ。
ついでに言うと、「市場全体が上げ相場の場合はインデックス運用が有利だが、上下に大きく動かない相場(「ボックス相場」と呼ぶ)や下げ相場ではアクティブ運用が有利だ」と言われることもあるのだが、これも俗説だ。
インデックスとアクティブの比較は相対的なものであり、上げ相場なのか下げ相場なのかは、本質的に無関係だ。
但し、アクティブ・ファンドは時にキャッシュ・ポジション(現金)を持っていることがあるので、下げ相場でたまたま有利になることがあるとは、申し上げておこう。
しかし、キャッシュ・ポジションは、長期的には運用成績を損なう要因になりやすく、有利な要因とは言い難い。
現実には、アクティブ運用者の悩みの種である
現状では、平均がインデックス・ファンドよりも劣っていて、相対的に良いファンドを事前に見つける方法がない。
金融マンやFP(ファイナンシャル・プランナー)のような専門家が、アクティブ・ファンドを「他人に勧めること」は正しくないと筆者は考えている。
投資家が自分のお金と判断で、勝手にアクティブ・ファンドに投資することは全く問題がない。
インデックス・ファンドの弱点
アクティブ・ファンドとの比較では何とも強力で、無敵にも見えるインデックス・ファンドなのだが、弱点もある。

弱点1:インデックスの対象銘柄の入れ替えや銘柄のウェイト変更がある場合
事前に発表されることが通例だが、入れ替えに先回りする市場参加に利用されて、インデックスで表されるポートフォリオのパフォーマンスが劣化することがある。
代表的な指数に関しては、今のところ、アクティブ・ファンドとの手数料差を埋めるような規模で問題は起きていないようだが、注意すべき要因の1つではあると申し上げておく。
弱点2:インデックスの使用料
インデックスとなる指数には著作権がある。
インデックスを計算・発表し、これを利用させているインデックス・ベンダーは運用会社からインデックスの使用料を取る場合がある。
これが、運用資産額に対して2~3ベイシス(1ベイシスは1%の百分の一)に及ぶことがあり、近年運用手数料の引き下げ競争が進んでいるインデックス・ファンドにあって、相対的に大きな負担となる場合がある。
インデックス・ファンドによっては、ターゲットとするインデックスを使用料が安いものに変更する場合もあって、運用業界内で注目されている材料の1つだ。
総論としてはアクティブ・ファンドの手数料が高すぎることが圧倒的なのだが、
・ インデックス・ファンド間の競争を考える場合
・ 将来アクティブ・ファンドの手数料が十分下がって来た時
個々のインデックスやインデックス・ファンドの優劣を比較する際にこれらの弱点を思い出して欲しい。(執筆者:山崎 元)