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「職場の近くに住み、給与の一部を退職金に回す」と社会保険料が安くなる 保険料は「基本給」だけでは決まらない

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「職場の近くに住み、給与の一部を退職金に回す」と社会保険料が安くなる 保険料は「基本給」だけでは決まらない

都市部の大学や専門学校に進学する際に、生まれ育った地域を離れ、卒業後もそこに戻らずに、都市部の会社に就職するという若者は、かなり多いそうです。

これにより若者が流出した地域は人口が減少するため、一部の自治体は生まれ育った地域から、都市部などの大学や専門学校に通う学生に対して、新幹線通学の補助を実施しております。

特に首都圏に近い自治体で実施している場合が多く、ここ最近は補助を実施する自治体が増えていると、ニュースサイトの記事に掲載されておりました。

また自治体によっては、都市部などの会社に通勤する社会人に対しても、新幹線通勤の補助を実施しております。

新幹線通勤

その他、一部の会社では「新幹線通勤制度」を設け、遠方から通勤する従業員に対して、新幹線の定期券代の全額、または一部を通勤手当として支給しているそうです。

これらの制度に興味を持った方は、住所地の自治体のウェブサイトや、勤務先の会社が作成した「就業規則」を開いて、制度の有無やその内容を調べてみるのが良いと思います。

公共交通機関を利用している場合、通勤手当は15万円まで非課税

勤務先の会社から支給される通勤手当は、一定の限度額まで非課税になります。

例えば、電車やバスなどの公共交通機関を利用している場合、一定の限度額は1か月当たり15万円です。

通勤で新幹線を利用している場合でも、通勤手当の金額がこの範囲内に収まっていれば、所得税は課税されません。

ただ「経済的かつ合理的な経路や方法」に限られるため、グリーン車の料金については、この範囲内に収まっていても課税されます。

社会保険料を安くしたいなら、職場の近くに住んだ方が良い

通勤手当の金額が増えると、社会保険料が負担増になる可能性がある

このように、通勤手当は一定の限度額まで非課税になるという、税制面での優遇があります。

そのため都市部に住んでいた方が、生まれ育った地域に戻って、新幹線で通勤するようになり通勤手当の金額が増えたとしても、それが限度額の範囲内に収まっていれば、所得税の負担は増えません。

しかし、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の保険料については、大幅に負担が増える可能性があります。

例えば、職場の近くに住んでいるため、通勤手当を受け取っていなかったAさん(東京都の協会けんぽに加入、介護保険は未加入)が、新幹線で通勤するようになったので、基本給の20万円に加えて、10万円の通勤手当を受け取るようになったとします。

そうするとAさんの給与から控除される、1か月当たりの社会保険料の金額は、数か月が経過すると次のように増えてしまうのです。

健康保険:9,900円 → 14,850円(+4,950円
厚生年金保険:18,300円 → 27,450円(+9,150円

ですから、社会保険料を安くしたいなら、職場の近くに住んだ方が良いことになります。

社会保険料を安くしたいなら、職場の近くに住んだ方が良い

社会保険料を算出する際には、通勤手当などの各種手当も含める

給与から控除されている社会保険料は、勤務先の会社から支払われる、給与の金額を元に算出しております。

この給与とは、基本給(月給、週給、日給など)だけでなく、家族手当、役付手当、通勤手当、住宅手当などの各種手当を含めたものになるのです。

ですから、上記のように通勤手当を受け取るようになったり、子供が生まれて家族手当の金額が増えたりすると、社会保険料の金額が増える可能性があるのです。

なお、事業主の恩恵で支給される結婚祝金や見舞金、出張旅費などは給与の中に含めないため、これらを勤務先の会社から受け取っても、社会保険料の金額に影響を与えません。

退職金がいくらであっても、社会保険料は徴収されない

このように基本給や各種手当の金額が増えたり、新たな手当を受け取るようになったりすると、社会保険料の金額が増える場合があります。

そうなると、給与が上がらなければ、保険料率の変更などがないかぎり、社会保険料は増えないのですが、給与が上がらないのは困ります。

この矛盾を解消する策としては、例えば昇給分を基本給に上乗せするのではなく、退職金に上乗せしてもらうのです。

つまり、昇給分をすぐに受け取るのではなく、会社に積み立てしてもらい、退職する時に受け取るのです。

こうすると、矛盾が解消する理由としては、退職金からは社会保険料が徴収されないため、昇給分の上乗せにより退職金の金額が増えても、社会保険料は増えないからです。

従業員の給与の一部を掛金に回す「選択制確定拠出年金」

選択制確定拠出年金とは

企業年金の一種である「企業型の確定拠出年金」の掛金は、原則として勤務先の会社が拠出します。

しかし企業によっては、次のいずれかを従業員が選択できる「選択制確定拠出年金」を導入して、従業員に掛金を拠出させている場合があります。

(1) 基本給と共に支払われる、確定拠出年金の掛金に使える手当(例えば「ライフプラン手当」)の、全部または一部を受け取らないで、その受け取らなかった分を、確定拠出年金の掛金に回してもらう

(2) 確定拠出年金の掛金として使える手当を、確定拠出年金の掛金に回さないで、基本給と共に受け取る

確定拠出年金の加入期間が10年以上あると、60歳から請求できる「老齢給付金」は、一時金を選択して受給すると、退職金のように受け取れるのです。

ですから(2)を(1)に変更すれば、昇給分を基本給ではなく、退職金に上乗せしてもらうのと、似たような効果があります。

また昇給分を退職金に上乗せしてもらうのは、実現が難しいかもしれませんが、選択制確定拠出年金は(2)を(1)に変更するだけなので、制度があれば実現できると思います。

社会保険料が安くなると、困った時の保障が少なくなる

困った時の保障が少なくなるため、社会保険料は安いほど良いとは言えない面がある

給与から控除される社会保険料が減れば、原則65歳から支給される「老齢厚生年金」の金額が減ってしまいます。

また病気やケガなどで仕事を休んだ時に、健康保険から支給される「傷病手当金」、出産で仕事を休んだ時に、健康保険から支給される「出産手当金」の金額も減ってしまいます。

つまり、困った時の保障が少なくなるため、社会保険料は安いほど良いとは言えない面があるのです。

ただ新幹線通勤の通勤手当により、社会保険料が一気に高くなるようなケースでは、何かしらの対策ができないのかを、調べてみる価値があると思うのです。(執筆者:木村 公司)

 関連記事:手取り額しか見ない=ダメ社会人 「給与明細」でチェックすべき5項目と「給与明細」を捨ててはいけない理由

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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