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住宅ローン控除の適用誤りが見つかった
国税庁が2018年12月にホームページで発表した所によりますと、会計検査院の指摘により、住宅ローン控除の適用誤りが見つかったとのことです。
適用誤りの詳細は以下で解説しますが、これにより2013~2016年に確定申告を行った最大約1万4,500人について、追加納税の必要があります。
まず、ケース別に今回の事例を解説し、これが今後に与える影響についても解説します。

適用誤りは、どれも国税庁のチェック漏れ
どのような事例が適用誤りとされたのでしょうか。
国税庁のホームページに沿って、ケース別に解説します。
ケース1:贈与された金額をまったく考慮していなかった
住宅は高額な買い物ですので、「直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」や「特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例」で贈与が受けやすくなっています。
しかし、これらの資金はあくまで住宅取得に資金使途が限られているため、住宅購入価格から贈与額を差し引いた額が、住宅ローン控除の対象額となるはずです。
今回のミスは、上記の贈与額をまったく考慮せず、住宅ローン控除の対象額を計算していたことです。

3,000万円の物件を購入し、1,000万円を住宅取得資金贈与として受け取っていた場合
住宅ローン控除限度額は2,000万円です。
しかし、1,000万円を家具購入費用などに使ってしまい、500万円しか充当できなかった場合、住宅ローン控除額は2,500万円に増加します。
本来であれば、500万円は目的外利用として住宅ローン控除限度額を2,000万円で抑えなければならなかった所、そのまま2,500万円の住宅ローン控除額が通ってしまったということです。
この場合、500万円が余分な住宅ローン控除額ということですので、500万円の1%相当の5万円の追加納税が、必要になると考えられます。
ケース2:併用できない不動産の特例が、できてしまった
住宅ローン控除においては、居住の用に供した年分及びその前後2年間ずつの計5年間の間に、「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」や「居住用財産の譲渡所得の特別控除」など、5つの特例との併用が認められていません。
しかし、これらの不動産の特例を利用しながら、住宅ローン控除も利用できていました。
この場合、そもそも住宅ローン控除は利用できなかった訳ですから、少なくとも確定申告した年に還付された住宅ローン控除相当額の返戻が、必要になると考えられます。
ケース3:受贈者の所得要件の確認ができていなかった
「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」においては、受贈者の合計所得金額が2,000万円以下である必要があります。
しかし、所得要件の確認が出来ておらず、年収が2,000万円超であっても、非課税の特例が適用されていました。
この場合、贈与は通常の贈与とみなされるため、基礎控除110万円を差し引いた額に贈与税がかかります。
今年の確定申告から、住宅ローン控除の要件チェックが厳格に

2017年の確定申告からは、これらのミスは指摘されていないので、国税庁としても突合性のチェックを強化していると考えられますが、2018年12月に公に発表した以上、
でしょう。
住宅資金贈与においては、贈与資金は必ず全額住宅取得資金に充当する、不動産の特例を利用する場合は住宅ローン控除の適用を諦めるなど、確定申告者自身が慎重になる必要があります。
住宅ローン控除に限らず、不動産の税金関係はかなり複雑です。
わからないことがあれば、国税庁のタックスアンサーを利用するなど、納得してから申告するようにしてください。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)