今年6月に金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理(pdf)」が公表されました。
この報告書がいわゆる「老後2,000万円問題」に発展し、うすうす老後の金銭的な問題について気づいていた方も含めて、直球で2,000万円の数字を突き付けられた形になりました。
そして、この問題が老後に向けての資産形成を行動に移すきっかけとなり、iDeCo(個人型確定拠出年金)もより注目されています。
ただし、その制度を利用する際にはメリットだけに目を奪われるのではなく、デメリットを確認・理解した上でそのデメリットに納得や対応できるのであれば加入しても問題ないと言えます。
前置きが少し長くなりましたが、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入する前に確認しておきたい3つのポイントについて、今回は2つのポイントについて触れていきます。
目次
ポイント1:60歳まで原則、引き出すことができない
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iDeCoの特徴ですが、払い込んだ掛金は自分の資産であっても、死亡または高度障害の状態になった時、または次の(1)~(5) の要件をすべて満たす時以外は引き出すことができません。
この(1)~(5) の要件に該当するケースはかなり稀な場合に限られます。
脱退一時金の受け取り要件
(1) 国民年金の保険料免除者であること
(2) 障害給付金の受給者ではないこと
(3) 通算拠出期間が1か月以上3年以下、または個人別管理資産が25万円以下であること
(4) 企業型DCまたはiDeCoの資格喪失日の属する月の翌月から起算して2年を経過していないこと
(5) 企業型DCから脱退一時金の支給を受けていないこと
60歳まで引き出すことができないことで、老後に向けての準備が確実にできることをメリットとして感じる方もいるでしょう。
また、掛金を拠出した時に所得控除の対象となり所得税・住民税が低くなることもメリットですが、一方で、60歳までの突発的なことも含めて大きな支出が発生した場合でも、iDeCoの積立金を使うことはできません。
それにより、借入金を利用するのであれば所得控除のメリットは借入金の利息で吹っ飛んでしまうでしょう。
特に、自営業者の場合には、資金繰りが苦しい時には老後のことよりもまずは目の前の危機を乗り越えることが重要になってきます。
その場合でもiDeCoの積立金は事業資金には利用できません。
iDeCoを利用することでメリットになる人
60歳までのライフプラン(住宅、教育、その他大きな支出)に関する資金の計画と準備がしっかりとできている場合に限られます。
今後のことは「何とかなる」などあまり考えていない場合には、iDeCoに加入する前に1度立ち止まって考えてみる必要があります。
ポイント2:途中解約ができない!
iDeCoでは、積立金の引き出しができないだけでなく、加入期間中に解約したい場合でも原則解約ができません。
言い換えると、iDeCoといったバスに1度乗ると、途中下車はできずに60歳までそのバスに乗り続ける必要があります。
なお、今後掛金を拠出するのが難しくなった場合には「拠出する掛金を引き下げる」または「掛金の拠出を停止する」のどちらかの選択肢があります。
そして、iDeCoに加入する際に新規加入時手数料2,777円(税込)が発生しますが、それ以降もiDeCoの加入者には次の3つの手数料が発生し続けます。
iDeCoの口座管理にかかる手数料
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・国民年金基金連合会に支払う手数料:月額103円(掛金を納付する都度負担)
・事務委託先金融機関業務に関する手数料:月額64円
・運営管理手数料:金融機関によって異なる
もし、掛金の拠出を停止しこれまでの積立金の運用のみを行う場合でも、事務委託先金融機関業務に関する手数料と運営管理手数料は発生し続けます。
毎月わずかな金額ではありますが、塵も積もれば山となることも考えられるでしょう。
iDeCoというバスに乗り続けていく中において、この「口座管理にかかる手数料」は1つの問題点になってきます。
iDeCoに加入後、途中で掛金の大幅な減額が予想できる、または掛金の拠出が難しくなる可能性があるのであれば、別の選択肢と比較検討する必要があります。
そして、3つ目ですが、iDeCoを検討される時に「3つの税制メリット」という言葉を聞いた方も多いでしょう。
については、次回お伝えします。(執筆者:岡田 佳久)