入浴は高齢者の事故が起こりやすく、注意と対策が必要です。
・ のぼせ
・ おぼれ
・ 血圧障害
など、実際に数々の事故が入浴中に発生しており、高齢者にとってお風呂場は決して安全な場所とはいえません。
そこで、高齢者が少しでも安全に入浴をするために、ぜひ利用したい入浴用品などをいくつかご紹介します。
お金をかけなくても、低予算でまかなえるものもありますので、ぜひ参考にしてください。

目次
入浴中に起こりやすい高齢者の事故
転倒・転落
浴室は床が濡れていてすべりやすく、転倒や転落のリスクが高いです。
また、全身なにも身に着けておらず皮膚がむき出しなため、切り傷や打撲などのケガも重症になりやすいです。
打ちどころが悪いと最悪の事態にもなりかねないため、歩行に問題のない高齢者であっても用心深く入浴するに越したことはありません。
のぼせ・湯疲れ
入浴時間が長い、お湯の温度が高い、体調不良といったことが原因で、入浴後にぐったりしてしまい、体調を崩してしまう人がいます。
高齢者の体にとって、お湯につかることは想像以上に負担が大きく、体力を消耗する行為です。
人によっては、気分が悪くなったりめまいの症状が出ることもあります。
お湯の温度に気をつけたり長湯を避けたりして、体に負担の少ない方法で入浴しましょう。
おぼれ
浴槽での「おぼれ」も、高齢者には非常に多い事故です。
東京消防庁によると、浴槽でおぼれた人のうち、65歳以上の高齢者は全体の約8割にものぼります。

しかも、救急搬送された人のうち、8割以上が危篤か死亡という重症レベルで、入浴中の「おぼれ」がいかに恐ろしい事故かがわかります。

ヒートショック
もうひとつ、入浴中の事故で見逃せないのが「ヒートショック現象」です。
ヒートショックとは、気温の急な変化によって血圧が変動し、心臓や血管などに悪影響を与えることをいいます。
冬場に、暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室へ移動したときなどに起こり、血圧が急激に上がったり下がったりして体に危険を及ぼします。
高血圧、糖尿病、動脈硬化、肥満などの症状がある高齢者は、なお注意が必要です。
安全な入浴をかなえるおすすめ安全グッズ
高齢者が安全に入浴するには、まず以下のようなことを意識しましょう。
・ 長湯をしない
・ 体調がよくない日は無理して入浴をしない
・ 同居家族がいる場合は、なるべく家族がいる時間帯に入浴する
さらに、次から説明する入浴用品や設備をとり入れて、入浴の安全性を高めていきましょう。
入浴用品は介護保険の対象用品であれば、年間10万円を上限に価格の1~3割負担で購入することができます。
入浴用手すり

浴槽のヘリに取り付ける手すり。
浴槽への出入り時につかまって、体を支えたり転倒や転落を防止したりします。
とくに、体重の軽い女性の高齢者などは、お湯の水圧や浮力で体が不安定になりやすいため、手すりがあると安心です。
介護保険対象用品
価格(目安)… 1万円~2万5,000円(1~3割負担で購入可能)
浴槽内イス

浴槽の中に置いて、その上に腰かけます。
座面がすべりにくく加工してあるので、すべって転んだりおぼれたりする危険が少なく、立ち上がりも楽になるなどのメリットがあります。
介護保険対象用品
価格(目安)… 1万円~2万円(1~3割負担で購入可能)
シャワーチェア

座面が高く、立ち上がりが楽で、足腰へかかる負担を減らせます。
脚に滑り止めがついていて安定感があり、背もたれがついているタイプを選べば入浴中に寄りかかることもでき快適です。
折り畳みタイプなら、使用後に小さく畳めるので、家族の入浴時に邪魔になりません。
介護保険対象用品
価格(目安)… 1万円~3万円(1~3割負担で購入可能)
滑り止めマット
浴室の床や、浴槽の底に敷いて使います。
足元が滑りにくくなるので、転倒やおぼれの予防になります。
滑り止めマットはさまざまな商品がありますが、高齢者向けの安全性の高い商品がおすすめです。
介護保険対象外。
価格(目安)…3,000円~7,000円
ノーリツ「見まもり機能付き給湯器」

給湯設備メーカーの「ノーリツ」は、ヒートショックの危険と対策を呼びかけるため、「STOP!ヒートショック プロジェクト」を立ち上げて啓発活動をおこなっています。
注目は、スマートフォンで家族の入浴の様子を確認できる「見まもり機能付き給湯器」です。
家族の浴室への入退室や、湯船につかっている時間を、スマートフォンでチェックすることができます。
前もって時間を設定しておけばアラームで知らせてくれるので、長湯や入浴事故の防止にもなります。
家族の安全を手元で確認できる手軽さに加え、もしもの時に気づきやすいというメリットもあり、高齢者のいるご家庭では大いに役立ちそうです。
また、別売りの「浴室暖房換気乾燥機」と組み合わせると、浴室の室温を検知して台所リモコンに知らせ、スイッチひとつで浴室と脱衣室の予備暖房ができるタイプもあります。
高齢者の体を脅かすヒートショックも、このような浴室環境の改善で予防しやすくなります。
価格は規格やサイズによって異なります。
普段の気づかいでも防げます
こうした機器を使わなくても、
・ お湯をためるときはお風呂のふたを開けておく
・ 脱衣所に暖房機器を置く
など、できるだけ部屋間の温度差をなくすことで同じ効果が得られます。
高齢者の事故が多いお風呂も、事故が起こりにくいように環境を整えることで安心して入浴できるようになります。
浴室での事故は重大な事態をまねくことも多いため、高齢者のいる家庭はぜひこの記事で紹介した対策法を検討してみてください。(執筆者:渡辺 有美)