クーリング・オフ制度をご存じの方は多いと思います。

名前は有名ですが、実際に使ったことがある人はあまりいないようです。

今回は、生命保険におけるクーリング・オフ制度について詳しく説明しましょう。

生命保険における クーリング・オフの手順

クーリング・オフとは

本来、契約とは消費者の「申込み」を事業者が「承諾」するという、互いの意思表示の合致によって成立するものです。

しかしながら、不意打ち的な訪問や声かけにより、よく考える間もなく契約させられてしまった場合もあるでしょう。

「契約だから守るべき」という原則のままでは、消費者が不利な立場になってしまいます。

そのため、一定期間内であれば、消費者が一方的に解約できる機会を設けました。

それが、クーリング・オフです。

一般的によく知られている訪問販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引(マルチ商法)・訪問購入などに対するクーリング・オフ制度は、特定商取引法という法律で定められています。

生命保険契約や損害保険契約の場合は、「保険業法」という法律でクーリング・オフ制度が定められています

クーリング・オフの期間

クーリング・オフ期間は、保険業法では「8日以内」としています。

この「8日」は、「保険契約の申込日」もしくは「クーリング・オフ制度に関する書面を受け取った日」のどちらか遅い日を含んだ日数です。

保険契約を結ぶ際、担当者は必ず「クーリング・オフ制度」について説明を行い、契約者に必要な書面を渡す決まりになっています。

ほとんどの場合、契約日より申込日の方が遅いことはありません。

クーリング・オフ制度の起算日は契約日」だと覚えておけば間違いないでしょう。

保険会社によって違うクーリング・オフ期間

保険会社によっては、クーリング・オフ期間を、10日や15日20日など長く設定している場合もあります

また、始まりの日を「契約の申込日もしくは初回保険料払込日のどちらか遅い日」としている会社もあります。

いずれにしても、法令より期間が短いことはありません。

もしも、契約した後で考えが変わり

「クーリング・オフしたい。でも、契約日から8日以上過ぎてしまった」

場合でも、保険会社によっては間に合うかもしれません。

解約とクーリング・オフの違い

解約とは、いったん開始した契約をやめるということです。

クーリング・オフは、契約を結ぶ前に戻すということです。

例えば、契約締結と同時に保険料を支払い、保険期間がスタートしていた場合、クーリング・オフでは、保険料が全て返還されます。

解約の場合、既に保障が開始していた分の保険料は戻ってきません

「未経過分の保険料を日割りで返還」あるいは、その保険契約内容や経過日数などの状況によっては、全く戻ってこない場合もあります。

もし、契約を後悔しているのなら、すぐにクーリング・オフを使いましょう。

クーリング・オフを行うときの手順

クーリング・オフは、必ず書面で行うよう法令で定められています

担当者が「口頭で大丈夫」と言ったとしても、書面で行いましょう

保険会社によっては、クーリング・オフ制度に関する書面とともに、必要事項が印刷された「クーリング・オフ用のはがき」を発行しているところもあります。

専用はがきがない場合は、官製はがきに必要項目を記入して郵送します。

クーリング・オフは 必ず書面で

書面の書き方

必要項目についてはおおむね以下の通りです。

・ クーリング・オフについての意思表示
・ 契約日(契約申込日)
・ 契約をした保険の種類
・ 証券番号(申込番号)
・ 保険料領収証番号
・ 担当者の情報(保険会社の取扱営業店・担当者名)
・ 契約者の情報(住所・氏名・連絡先)

保険会社や払い込み方法などによって異なる場合があるため、「クーリング・オフについての書面」や「約款」で確認してください。

記入したはがきは、コピーを取っておきましょう

期間内の「発信」で大丈夫

クーリング・オフの期間内に到着しなくても、期間内の消印や郵便局の受領印があれば有効です。

到着が不安な場合は、簡易書留や特定記録郵便などを利用するといいでしょう。

クーリング・オフ制度が使えない契約について

クーリング・オフ制度は、どんなものにも使えるわけではありません。

期間内であっても、クーリング・オフが適用されない契約もあります

参照:e-Gov保険業法施行規則第241条

クーリング・オフできない保険契約

保険業法 第309条
保険業法施行令 第45条

を元に解説します。

・ 申込者が、あらかじめ訪問日を通知し、契約目的であることを明らかにし、保険会社営業所などで契約をした場合

・ 申込人が、預貯金口座への振込みによる方法で保険料を払い込んだ契約(ただし、保険会社や代理店などに振込みを依頼した場合はクーリング・オフ可能)

保険会社の指定する医師の診査を受けた契約の場合

・ 既に契約している保険の更新や見直しの場合

営業や事業のために締結する保険契約の場合

・ 社団法人や財団法人、国や地方公共団体などが申込みをした契約の場合

・ 法令により加入が義務づけられている場合(自賠責保険など)

保険期間が1年以下の契約の場合

申込者が積極的に動いて契約している場合や、申込みから契約締結までにある程度の時間をかけている場合などは、「不意打ち的な訪問や声かけにより、よく考える間もなく結んでしまった契約」とは言えないため、クーリング・オフが適用されません。

参照:
e-Gov 保険業法
e-Gov 保険業法施行令

特に気をつけるべきは見直し契約

見直し契約も、クーリング・オフが適用されません

そして、「元の形に戻す」こともできません

見直し契約は、既に契約している保険内容を部分的に変える契約です。

多くの場合、既存の保障内容を新商品でグレードアップする提案ですが、中には契約者の意向に添っていない案もあるでしょう。

特に貯蓄性のある保険をお持ちの場合は、注意してください。

クーリング・オフ制度は万能ではない

クーリング・オフ制度は万能ではありません。

「あとでクーリング・オフすればいい」と頼りすぎるのは、危険かもしれません。

保険営業員から設計書を提示された場合は、その場で返事をせずに、ひと晩ゆっくり考えてみることも大切です。(執筆者:仲村 希)