平均余命は女性のほうが長いものの、あくまでも平均であり確実ではありません。

今回は、万が一、夫より先に妻が亡くなってしまった場合に残された夫の年金受給の考え方について検証します。

妻に 先立たれた 夫の 「年金受給」

夫の「遺族厚生年金」

夫は妻が死亡した時に生計維持関係にあり、かつ年齢が妻死亡時に夫が55歳以上であれば「遺族厚生年金」の受給権が発生します。

実際の受給は60歳に達した日の属する月の翌月からです。

しかし、「遺族基礎年金」を受給できる場合には、60歳未満であっても「遺族基礎年金」を受けられる期間に「遺族厚生年金」も受給できます。

たとえば、

夫が56歳の時に妻が亡くなり、1人息子(障害なし)の18歳年度末到達時期が夫58歳である場合、夫は58歳までは「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の両方を受給できる

のです。

しかし、1人息子の18歳年度末到達によって「遺族基礎年金」の受給権を失権した場合には、その後60歳まで「遺族厚生年金」も受給できません

60歳に到達した日の属する月の翌月から再び「遺族厚生年金」を受給できます

60~64歳の「老齢厚生年金」と「遺族厚生年金」

昭和36年4月1日以前生まれの男性の場合、1年以上厚生年金の被保険者であれば、生年月日によって60~64歳の間で「老齢厚生年金」を受給できます。

しかし、「遺族厚生年金」とどちらを受給するかを選ぶ選択受給です。

また、60~64歳の間で「老齢厚生年金」を受給できる場合であっても、雇用保険からの給付(いわゆる失業手当、以下失業手当)とは併給されず、両方を受給しようとする場合には「老齢厚生年金」のほうがが支給停止されます。

さらに、同様の状況(60~64歳の間で「老齢厚生年金」を受給できる)で、かつ在職中で一定の収入がある場合には「在職老齢年金」によって年金が支給停止される場合もあります

「在職老齢年金」についてはこちらの記事をご参照ください。

しかし、「遺族厚生年金」は「在職老齢年金」の対象でもなく、かつ非課税です。

妻の「老齢厚生年金」の3/4であっても、自身の「老齢厚生年金」が「在職老齢年金」によって支給停止となるのであれば、「遺族厚生年金」を選んだほうがお得ということです。

「遺族厚生年金」と「失業手当」調整なし

自身の老齢厚生年金一択での判断は不利な場合も

前述のように60歳から64歳に受給できる自身の「老齢厚生年金」のほうが妻の「遺族厚生年金」より金額が多くなるケースは多々あることでしょう。

しかし、

・「遺族厚生年金」は失業手当との調整がない

・「遺族厚生年金」は「在職老齢年金」の支給停止の対象外である

ことを考慮すると自身の「老齢厚生年金」一択での判断は不利な場合もあり得ます

生年月日によって63歳から「老齢厚生年金」を受給できる場合を例に考えると、むしろ

60歳から62歳までは「遺族厚生年金」を受給し、63歳から「老齢厚生年金」を受給する

という選択肢も妥当です。

その際には、63歳から65歳の間の働き方がどのようになっているのかを考慮しましょう。

・ 在職老齢年金にて全部または一部年金が支給停止の対象となるか

・ 失業状況

などを考慮したうで、「遺族厚生年金」を引き続き受給すべきかとうかを判断すべきでしょう。

なお、「遺族厚生年金」から「老齢厚生年金」へと選択替えする場合には「選択申出書」を届け出ます。

また、変更する回数にも上限が設けられていません。

参照:日本年金機構

65歳以降

65歳以降は自身の「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」「遺族厚生年金」を併給できます

また、失業手当との調整もありません。

しかし、

・「在職老齢年金」との調整は65歳以降も続く

・ 厚生年金の被保険者ではなくなる70歳以降であっても、引き続き働く場合には対象となる

ので、注意しましょう。

再婚には注意

男性の「遺族年金」は女性と比べて給付額が少なく、受給開始も遅いのが特徴です。

女性の「遺族年金」についてはこちらの記事を参考にしてください。

そして、男女共通の「遺族年金」の失権事由のなかでも特に抜け落ちることが多い部分は「再婚」です。

万が一、再婚していたにもかかわらず、未届で「遺族厚生年金」を受給し続けていた場合には返還の対象にもなるために注意が必要です。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)