厚生年金から支給される「遺族厚生年金」には「短期要件」と「長期要件」という2つの支給要件があります。
今回は「遺族厚生年金」を請求するにあたり、「どちらの要件で申請すべきか」と「それに付随する一時金の受給の可能性」について検証します。
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目次
「遺族厚生年金」
「遺族厚生年金」を簡単に整理すると次のようになります。
「短期要件」
・ 被保険者が死亡した時
・ 被保険者であった者が資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日がある疾病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡した時
・ 障害等級1級または2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が死亡した時
「長期要件」
・「老齢厚生年金」の受給権者(保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合算した期間が25年以上)または保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合算した期間が25年以上ある者が死亡した時
「中高齢寡婦加算」
また、「中高齢寡婦加算」においても「短期要件」と「長期要件」では要件が異なります。
なお、「中高齢寡婦加算」については、こちらの記事をご覧ください。
「中高齢寡婦加算」においては、「長期要件」の場合240月の被保険者期間が必要であるのに対して、「短期要件」ではそもそもみなし300の適用があるために240月を下回ることはありません。
考え方としては「長期要件」のみにしか該当しない場合には選択の余地はありませんが、「長期要件」「短期要件」両方に該当する場合に、どちらを選択すると受給額が多くなるのかを確認し、選択すべきでしょう。
また、「中高齢寡婦加算」は65歳に達するまでしか支給されず、その後は生年月日(昭和31年4月1日以前生まれ)によっては、「経過的寡婦加算」が支給されます。
「中高齢寡婦加算」「経過的寡婦加算」の受給額
受給額は以下の通りです。
「中高齢寡婦加算」
40歳以上65歳未満である間:
「経過的寡婦加算」
「死亡一時金」の受給の可否
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亡くなられた方のご年齢が65歳未満の場合には、「死亡一時金」を受給できないかも確認すべきでしょう。
国民年金第1号被保険者として36か月の被保険者期間があれば支給対象となりますが、「老齢基礎年金」を既に受給している場合は対象外です。
また、繰下げている場合にも「実際には受給していなくても受給でき得る状態である」ことから対象外です。
厚生年金から60~64歳の間に支給される年金(特別支給の老齢厚生年金)を受給している場合には
・ 国民年金から支給される老後の年金ではなく、厚生年金から支給される老後の年金である
ため、「死亡一時金」の支給対象となり得ます。
「死亡一時金」の金額
なお、死亡一時金の金額は次の通りです。
「遺族年金」と「死亡一時金」の併給は可能か
複数の年金や一時金を受給できる場合には、「併給できるのか?」という問題が生じます。
「遺族厚生年金」と「死亡一時金」
結論としては、「遺族厚生年金」と「死亡一時金」は併給可能です。
・「死亡一時金」は国民年金から支給される
ことから併給可能です。
「遺族基礎年金」と「死亡一時金」
しかし、「遺族基礎年金」と「死亡一時金」は同じ国民年金からの支給であるので併給はできません。
例外として、「遺族基礎年金」が同一月内に受給権の発生と消滅が重なった場合には、結果的に「遺族基礎年金」が全く支給されないことから、その月に「死亡一時金」が支給されます。
【例】母子(または父子)家庭で育った障害を有しない高校3年生の1人息子のお子さんが高校卒業時に母(または父)が他界したようなケース
障害を有しないお子さんの場合には、18歳年度末までが「遺族基礎年金」の支給対象です。
設例では(多くの場合の)卒業時であるは3月に母(または父)が他界した場合には「遺族基礎年金」の受給権が発生(他の要件は満たしている前提)するものの、同じ月に受給権消滅となってしまいます。
よって、「死亡一時金」の支給対象となり得るということです。
遺族年金等は非課税
なお、今回登場した「遺族厚生金」「遺族基礎年金」「中高齢寡婦加算」「経過的寡婦加算」「死亡一時金」は全て非課税ですが、老後に受給する年金は課税対象です。
しかし、社会保険の扶養の範囲内に含める収入には含まれます(たとえば、配偶者他界後に働かずに子供の扶養に入る場合)ので、明確に分けて考える必要があります。
また、「死亡一時金」は時効が年金より短く2年となっています。この点も注意しておきたい部分です。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)