一般的に認知症を発症すると、多かれ少なかれ記憶力や判断力の低下が見られるようになり、その結果、訪問販売などで大金を支払う詐欺被害に巻き込まれる方も増えています。
このような方の被害防止に役立つと言われている制度に「成年後見制度」というものがあります。
今回は、その中でも「既に判断能力が低下している」と判断される方が活用する「法定成年後見制度」を利用するメリットについて紹介していきます。
目次
「法定成年後見制度」とは

「法定成年後見制度」は、判断能力が十分でないとされる方の権利を守るために作られた制度です。
この制度を利用するには、
必要があります。
その証明をもとに家庭裁判所は、判断能力の低下の有無やその度合いを判断して、制度の活用が必要か否かを審判します。
審判の結果、制度の活用が適当であると判断された場合には、その方が有している判断能力に合わせた支援者(後見人・保佐人・補助人のこと。以降、支援者と表記)が選定されます。
支援者ができる支援内容についても、申立てに基いて家庭裁判所が決定します。
「法定成年後見制度」を活用するメリット
では、「法定成年後見制度」を活用するメリットについて紹介していきましょう。
1. 本人が行った契約の取り消しができる
日本では「クーリング・オフ」という制度があり、一度契約をしたとしても決められた期間内であれば、その契約を解除できます。
しかし、判断能力が低下した高齢者の方はクーリング・オフ制度を知らなかったり、そもそも自分が契約をしたことを忘れてしまっていることもあります。
そのため、特に1人暮らしをしていて子ども達の訪問も少ない方などは、そのことに気付かれにくく、高価なものをたくさん契約してしまうなどの被害が多く見られています。
このような場合でも
です。
また、クーリングオフ期間を超えていたとしても、支援者が認めていない契約であれば取消が可能です。
たとえば、訪問販売や通信販売などで購入した高価な寝具や電子機器などの購入契約等です。
本人がした不当な契約の取消ができれば、本人の財産を守ることにも繋がります。
2. 本人の財産管理をできる
認知症の発症によって判断能力が低下することは予想が難しく、気付いたときにはその状態に陥っていたということもあります。
その場合、本人にかかる介護費用や生活費などに本人の預貯金を使用しようとしても、現金を引き出せず、必要な介護を受けられなくなってしまうこともあります。
「法定成年後見制度」においては、財産を管理することも支援者の役割に含まれることが多く、
です。
もちろん、本人の財産を支援者が私的に使うことは厳禁です。
支援者には定期的に不正流用等がないかを家庭裁判所に報告する義務が課せられているため、本人の財産を守ることにも繋がります。

認知症発症者の財産と権利を守る
高齢の親と離れて暮らすことが多くなり近隣との繋がりも希薄化している昨今では、詐欺被害に気付くことは難しくなっています。
認知症を発症していれば、助けを求めるシグナルを出すことはさらに困難と言えることでしょう。
認知症を発症している方の財産や権利を守るために、この「法定成年後見制度」を正しく理解し、活用を検討してみてください。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)