1年間で10万円以上の医療費を支払った場合には「医療費控除」を受けることが可能です。

しかし、自分では「医療費控除」の対象になる費用だと思っていても税務署が対象と認めないケースもありますので、今回は医療費に該当する費用と対象外の費用について解説します。

「医療費控除」の対象に なる費用・ならない費用

「医療費控除」の対象となる費用の考え方

「医療費控除」の対象となる費用は、確定申告をする人が支払った費用に限られます。

確定申告者自身の医療費はもちろんのこと、生計を一にする親族の医療費も支払っている場合にはその費用も「医療費控除」として申告できます。

「医療費控除」の対象となる主な費用

「医療費控除」の対象となるのは、基本的に次の5種類に該当する費用です。

・ 医師による診療や治療の代金

・ 治療するために必要になる医薬品の購入費

・ 病院や介護施設の費用

・ 治療に必要な施術費

・ 助産師による分娩の介助の対価

交通費はどこまで「医療費控除」として認められるのか

「医療費控除」の対象となる交通費は、公共交通機関を利用した場合のみ原則として認められています。

しかし、ケガや病気の状態によってい公共交通機関を利用できない状況下でタクシーを利用した場合には、そのタクシー代を医療費に含めることが可能です。

ただし、自家用車で通院した場合のガソリン代や、駐車料金は控除の対象にはなりません

また、産前産後の通院費用は「医療費控除」の対象ですが、出産のために帰省した際の交通費やホテル代は対象外です。

歯の治療費で「医療費控除」の対象になるもの・ならないもの

歯の治療に関する支出は原則として「医療費控除」の対象です。

しかし、一般的に支出される基準を超える部分の費用は医療費の対象外ですので注意してください。

金やポーセレンは歯の治療材料として一般的に使用されていることから、国税庁はそれらの材料を使用した歯の治療も「医療費控除」の対象として認めています。

また、歯列矯正については、健康維持目的か否かで控除対象の適否が変わります。

美容目的の歯列矯正の場合には「医療費控除」の対象外ですが、子どもの成長阻害を妨げる不正咬合を防ぐための歯列矯正など、年齢や矯正する目的から歯列矯正が必要となる場合の費用は「医療費控除」の対象です。

医療費以上に保険金を受け取った場合の計算方法

医療費以上に保険金を受け取った場合
病気により民間の保険会社から保険金がおりた場合や、出産の一時金を受け取った際には、支払った医療費から保険金等を差し引かなければなりません。

たとえば出産費用で50万円支払っても、自治体から40万円の出産一時金を受け取った場合には、差額の10万円が「医療費控除」の対象です。

入院などにより受け取った保険金の額が医療費以上の場合には、保険金の対象となった医療費を限度として差し引き、他の医療費からは控除することはありません。

保険金が下りた場合の「医療費控除」の計算例

【補填された保険金】

・ 入院費用A:30万円

・ 入院費用B:20万円

・ Aに対する保険金:50万円

【「医療費控除」の計算】

30万円 – 50万円 = 0円(対象の医療費を上限とする)

0円 + 20万円 = 20万円(「医療費控除」の対象額)

医療費の支払いが翌年になった場合の扱い

「医療費控除」の対象となる金額は、確定申告する年分中に支払った金額です。

医療費の金額が年内に確定しても、支払いするのが翌年になった場合にはその費用は翌年分の「医療費控除」の対象です。

なお、補填される保険金の金額が確定していない場合には、補填される見込金額で計算して申告することになります。

申告期限後に見込み金額が確定し、見込金額より実際の補填金額が多かった場合には「修正申告」、少なかった場合には「更正の請求」の手続きをしてください。

「医療費控除」をあえて申告しない選択肢もある

「医療費控除」は所得控除の1つなので、「医療費控除」の金額がそのまま還付金として戻ってくるわけではありません

医療費控除額が1万円の場合、所得税の税率が10%なら還付される所得税は1,000円です(復興特別所得税も合わせて還付されます)。

税務署の相談会場で申告手続をする際には時間と交通費がかかるため、還付金額が少ない場合には申告手続にかかる費用のほうが高くなるケースもあります

したがって「医療費控除」によって還付される金額が少ない場合には、あえて申告しないという選択肢もあることを覚えておきましょう。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)