公務員は国民の個人情報を取り扱う立場にあり、税務署であれば確定申告の内容に記載されている情報を管理しています。

税務署職員は管理している個人情報のほかに、職権を利用して他の公的機関や民間企業が保有している情報も調べることが可能です。

本記事では、元税務署職員の筆者が税務署職員が調べられる個人情報の範囲と、職権濫用した際の罰則規定について解説します。

税務調査対象者の個人情報はどこまで調べられるのか

税務署は金融機関などに対して調査の協力要請をできる

戸籍謄本は本籍地のある市町村が管理しているので、税務署では納税者の戸籍情報は分かりません。

しかし、国税に関する調査について必要があると判断された場合には、税務署は金融機関などの事業者や官公署に対して調査への協力を要請できることが法律上認められています。

協力要請できる内容は、調査に関して参考となる帳簿書類の閲覧や提供、その他の協力など幅広いものです。

したがって、税務調査に必要であれば協力要請によって戸籍謄本を閲覧できますし、水道光熱費の支払いや携帯電話の契約内容についても確認することが可能です。

税務調査対象者の個人情報は何でも調べられる

税務署は、税務調査の対象者となった人の個人情報を基本的にはすべて調べられます

税務署職員が無条件で個人情報を調べることはできませんが、税務調査に必要であると判断された場合には、調査対象者の住んでいる地域の銀行すべてをくまなく調べることも可能です。

したがって、確定申告書を一度も提出したことのない人であっても、調査対象者になれば住所・氏名・生年月日や家族構成、銀行口座および預金の入出金の状況まで調べ尽くされます

税務署職員への罰則規定は他の公務員よりも重い

公務員が職務以外の目的で権利を濫用したり、職務上で知った情報を漏らした場合には罰則の対象になります。

税務署職員は国家公務員ですので、立場を利用して私的に個人情報を集めることはできませんし、集めた情報を外部に漏らしてはなりません。

国家公務員法では守秘義務違反をした場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になると規定されています。

一方で、税務署職員が職務上で知ることのできた秘密を漏らしたり、情報を盗用した場合には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金と、他の公務員の守秘義務違反よりも重い罰則規定が設けられています。

税務署職員が公務員の地位を捨てるリスクを冒してまで、興味本位で他人の個人情報を調べることは考えにくいため、職員が職務上個人情報を把握したとしても、その情報が外部に漏られることは基本的にはありません。

税務署職員への罰則は厳しい

公務員には退職後も守秘義務がある

国家公務員法で規定されている「守秘義務」は、現役中だけではなく退職後にも適用されます。

退職した人が内部情報を暴露したとすると、守秘義務違反として罰則を受ける可能性があるということです。

したがって、私を含め元税務署職員の人間が現役時代の体験談をお伝えする際に実体験をそのまま話すことはありません。

実話だと思って聞いている体験談は、実は架空のものだったり、事実が分からないように抽象化して話しているということはちょっとした豆知識です。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)