会社員や学生の方は、確定申告をした経験が無い人も多いと思います。
しかし所得税の確定申告書の提出件数は年々増加しており、日本人の6人に1人は所得税の確定申告を行っている計算です。
本記事では、国税庁の「令和3年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」を基に、令和3年分の所得税の申告状況について解説します。
参照:国税庁(pdf)「令和3年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」
目次
所得税の確定申告書の提出件数は2,285万件
令和3年分の所得税の確定申告書は2,285万件と、前年に比べて1.6%提出割合が増加しています。
確定申告書は、
・ 「納税申告」
・ 「還付申告」
・ 「納税額が無い申告」
の3種類に区分することができ、最も多い申告が還付申告の1,329.7万件(全体の58.1%)です。
納税申告の件数は、656.8万件と全体の28.7%しかありませんが、納税申告は確定申告書を提出した際に所得税を支払うことになった人の件数です。
たとえば還付申告は、先に納めていた税金を戻してもらうための申告手続きなので、還付申告を行った人でも、所得税を納めている方は大勢いらっしゃいます。
また会社員の方は年末調整で所得税の精算が完了するため、確定申告をしていない給与所得者の多くも所得税を納めています。
暗号資産取引(仮想通貨取引)の申告件数は8万2千件
「令和3年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」では、暗号資産取引(仮想通貨取引)の申告状況についても公開されています。
令和3年分の確定申告において、暗号資産取引に係る収入がある方の「その他の雑所得」の申告件数は8万2,000件です。
暗号資産取引は、利益が発生していなければ申告義務が生じないため、申告している人の多くは利益が発生している方々と考えられます。
そのため暗号資産取引をしている人は、申告件数よりも多いです。
ちなみに、国税庁が暗号資産取引の件数を公表したのは、令和3年分の所得税の確定申告が初めてです。
それだけ暗号資産取引が注目されているという意味がある一方、国税組織が暗号資産取引で発生した所得に対する課税を取り締まる意思を示しているものと考えられます。
e-Tax申告の件数増加は相談会場縮小に繋がる?
自宅等からe-Taxで所得税の確定申告書を提出した人は923万人と、令和2年分から133万1,000人(対前年比+16.8%)も増加しています。
税務署の確定申告相談会場で毎年申告している人にとっては、e-Taxの申告件数は無関係かと思われるかもしれません。
しかしe-Tax件数が増えれば、段階的に確定申告相談会場の縮小や、会場の設営期間が短くなる可能性があります。
国税組織は税務調査の件数を増やすために、確定申告の相談人員を削減するための対策をいろいろと講じています。
自宅からe-Taxで申告する人が増えれば、税務署に来署して申告相談をする件数が減りますので、現在一部の税務署で実施されている閉庁日対応が、将来的に終了することも否定できません。
確定申告のやり方については少しずつ変化しており、年末年始くらいにその年分の確定申告体制について公表されることが多いです。
令和4年分の確定申告は時期尚早ですが、今年も終わりに近づきましたら、国税庁ホームページで確定申告会場の設営期間等をご確認ください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)