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物価高なのに2022年度の「年金受給額が下がった」理由を解説

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物価高なのに2022年度の「年金受給額が下がった」理由を解説

世界的にインフラが進み、日本でもこのところ物価高が続いています。

しかし、2022年度の年金受給額の改定は、前年度に比べてマイナス0.4%です。

物価や賃金の伸び率に応じて、年金受給額は改定されるはずなのに、何故マイナス0.4%なのでしょうか。

今回は、物価高なのに2022年度の年金受給額が下がった理由について、わかりやすく解説していきます。

物価高なのに2022年度の 年金受給額が下がった理由

1. 2022年度の年金受給額

2022年度の年金受給額は、前年度比マイナス0.4%の引き下げです。

このことにより、老齢基礎年金の満額は、月額で2021年度の6万5,075円から2022年度は6万4,816円に引き下げられました。

老齢厚生年金も夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額が、月額で2021年度の22万496円から2022年度は21万9,593円に引き下げられました。

また、所得額が一定基準額以下の年金受給者の生活を支援するために年金に上乗せして支給される年金生活者支援給付金の給付基準額も、物価の変動に応じて毎年度改定を行う仕組みになっています。

2022年度の年金生活者支援給付金の給付基準額は、前年度に比べてマイナス0.2%です。

このことにより、老齢年金生活者支援給付金の基準額は、月額で2021年度の5,030円から2022年度は5,020円に引き下げられました。

障害年金生活者支援給付金の受給額は、月額で2021年度は1級6,288円、2級5,030円から2022年度は1級6,275円、2級5,020円に引き下げられました。

遺族年金生活者支援給付金の受給額は、月額で2021年度の5,030円から2022年度は5,020円に引き下げられました。

2. 年金受給額改定の仕組み

現在の年金受給額は、1年ごとに見直しが行われます。

年金受給額改定の仕組みは、物価や賃金の変化による年金受給額の改定率から被保険者の減少と平均余命の伸びに応じて算出したマクロスライドによる調整率を差し引くことで、年金の給付水準を調整しています。

即ち、以下の式により算出されますが、物価・賃金の伸び率によってマクロ経済スライドによる調整が行われるかどうかが決まります。

年金受給額の改定率 = 物価・賃金の伸び率 – 少子・長寿化の影響分による調整(マクロ経済スライド)

(1) 賃金や物価がある程度上昇する場合は、マクロ経済スライドによる調整をそのまま適用します。

(2) 賃金や物価の伸び率が小さくてマクロ経済スライドによる調整を適用すると年金受給額が下がる場合には、調整は年金額の伸びがゼロになるまでにとどめます。

(3) 賃金や物価の伸びが下落の場合はマクロ経済スライドによる調整を行わず、賃金や物価の下落分のみ年金額を下げます。

2022年度の場合は (3) になり、以下により算出されます。

-0.4%(年金受給額の改定率) =

-0.4%(物価・賃金の伸び率)- 0(少子・長寿化の影響分による調整(マクロ経済スライド))


3. 物価高なのに2022年度の年金受給額が下がった理由

上記の算出の通り、2022年度の改定は、物価・賃金の伸び率が-0.4%として計算されています。

物価上昇率がどんどん上がっていっているのに、物価・賃金の伸び率が-0.4%なのはおかしいかと思う方が多いと思います。

しかし、この物価・賃金の伸び率は、2021年の物価や賃金の変動率が適用されているため、2022年は物価高なのに-0.4%になっているのです。

適用にはおおよそ1年間のずれがある

このように、年金受給額の改定額に対する物価・賃金の伸び率の適用は、リアルタイムで反映されるものではありません

実際には、おおよそ1年間のずれがでてきます。

そのため、来年度の物価・賃金の伸び率はプラスになるかもしれませんが、その分2022年度には行われなかったマクロ経済スライドによる調整が行われる可能性が高くなります。(執筆者:社会保険労務士、行政書士 小島 章彦)

《小島 章彦》
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執筆者:社会保険労務士、行政書士 小島 章彦 小島 章彦

大学を卒業後、信用金庫に8年、システム開発の会社に約20年勤務。その傍ら、資格を生かした年金・労働・社会保険や、今まで携わってきた金融関係の記事を主にライティングしています。「分かりやすく理解していただく」をモットーに執筆しています。 【保有資格】社会保険労務士、行政書士、日商簿記3級 寄稿者にメッセージを送る

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