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「130万円の壁」を見直しする前に、反対意見を抑える政策が実施される その背景と今後の見通しを解説

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「130万円の壁」を見直しする前に、反対意見を抑える政策が実施される その背景と今後の見通しを解説

国民年金から支給される老齢基礎年金を65歳から受給するためには、国民年金の保険料を納付した期間や、納付を免除された期間などの合計が、原則として10年(120月)以上必要になります。

また20歳から60歳までの40年(480月)に渡って、国民年金の保険料を欠かさずに納付すると、満額の老齢基礎年金を受給できます。

フリーランスなどの国民年金の第1号被保険者は、納付書などにより自分で保険料を納付するため、国民年金の保険料を納付しているという自覚があると思います。

一方で会社員や公務員などの第2号被保険者は、給与から控除された厚生年金保険の保険料の一部が、国民年金の保険料として使われているため、あまり自覚がないかもしれません。

また第3号被保険者第2号被保険者に扶養されている、年収130万円未満の配偶者のうち、20歳以上60歳未満の方)も、自分で保険料を納付していないため、あまり自覚がないかもしれません。

このように第3号被保険者に該当する方が、国民年金の保険料を納付しなくても良いのは、第2号被保険者が負担しているからです。

つまり給与から控除された厚生年金保険の保険料の一部は、第3号被保険者の国民年金の保険料としても使われているのです。

ただ厚生年金保険の保険料は、各人が受け取る給与(月給、賞与)の金額を元にして算出します。

また第3号被保険者の国民年金の保険料は、独身や共働きの方も含めた第2号被保険者が共同して負担しているため、配偶者が第3号被保険者になっても、厚生年金保険の保険料は高くならないのです。

どうなる? 130万円の壁

女性の就労を阻害している「130万円の壁」

第3号被保険者になっている方は、配偶者が加入する健康保険の、被扶養者になっている場合が多いと思います。

この被扶養者になっている方は、健康保険などの公的医療保険の保険料を納付しなくても、業務外の病気やケガになった時などに、原則3割の自己負担で診療を受けられるのです。

また出産育児一時金や訪問看護療養費などの、各種の保険給付を受けられるのです。

このようなメリットがあるため、年収が130万円以上にならないように意識している方は、かなり多いと推測されます。

特にパートなどの短時間労働者として働く女性は、そのような傾向があるため、「130万円の壁」は女性の就労を阻害していると批判されてきました

また第1号被保険者に扶養されている配偶者、独身や共働きの第2号被保険者の中には、第3号被保険者は不平等な制度と思う方がいるのです。

こういった点から「130万円の壁」は、かなり昔から見直しが検討されており、最近では岸田総理が見直しについて言及しました。

ただ具体的な見直し案や時期などについて、岸田総理は特に言及していないため、今の段階では推測するしかないのです。

第3号被保険者を縮小させる「106万円の壁」

第3号被保険者の行方について推測する際には、「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」や社会保障審議会で議論された、次のような4つの見直し案が参考になると思います。

3号の見直しはどうなる?

(A) 夫婦間の年金権分割案

第2号被保険者の給与から控除された厚生年金保険の保険料の半分は、第3号被保険者が負担したと見なす案になります。

この案の特徴としては厚生年金保険の保険料の半分を、第3号被保険者が負担したと見なすだけなので、実質的な負担は増えない点です。

また保険料の負担分に応じた老齢厚生年金(厚生年金保険から老齢基礎年金の上乗せとして支給される年金)を、第3号被保険者も受給できるようになる点です。

(B) 負担調整案

第3号被保険者に対して、将来に受給できる老齢基礎年金などに応じた、国民年金の保険料の負担を求める案になります。

(C) 給付調整案

第3号被保険者に対して負担を求めない代わりに、国民年金の保険料の納付を免除された方と同じくらいまで、老齢基礎年金などを減額する案になります。

(D) 第3号被保険者縮小案

社会保険(健康保険、厚生年金保険)の適用を拡大したり、年収130万円という基準を変えたりして、第3号被保険者を縮小していく案になります。

3号被保険者はどうなるか

以上のようになりますが、こういった見直し案に対していろいろな意見が出されたため、ひとつに絞ることができなかったのです。

しかし社会保険の適用拡大によって、第3号被保険者を縮小していく方向性については、参加者の意見が一致しました。

そのため年収が106万円以上などの要件を満たすと、短時間労働者であっても社会保険に加入する、いわゆる「106万円の壁」が新たに創設されたのです。

「勤労者皆保険」を実施すれば反対意見が抑えられる

岸田総理は「勤労者皆保険」という政策を実現したい意向を、総理に就任した当初から示してきました。

要するに社会保険の加入要件を従来よりも拡大し、働いている方はフリーランスなども含めて、社会保険に加入させる政策です。

岸田総理は「130万円の壁」の見直しよりも、この「勤労者皆保険」の実施を優先する可能性が高いと思うのです。

その理由としては「勤労者皆保険」の実施によって第3号被保険者の人数が大幅に減ると、「130万円の壁」の見直しに対する反対意見が抑えられるため、これを実現しやすくなるからです。

もし「130万円の壁」の見直しを優先するなら、年収の要件を少しだけ引き上げして、38万円の配偶者(特別)控除を受けられる年収150万円に合わせるなど、反対意見が出にくいものに止めると予想しております。

なお厚生年金保険の保険料は次のように、収入の金額によって負担が変わるのです。

  • 月給が8万8,000円(年収だと約106万円):月額8,052円
  • 月給が10万8,000円(年収だと約130万円):月額1万65円
  • 月給が12万5,000円(年収だと約150万円):月額1万1,529円

一方で2022年度の国民年金の保険料は、収入の金額にかかわらず、月額1万6,590円になります。

こういった点から考えると、第3号被保険者から外れるなら社会保険に加入した方が良いと思うのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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