「投資詐欺事件が又もや起こってしまった」、MRIインターナショナル社は、米国に拠点を置く1998年設立の資産運用会社で、日本国内の個人顧客約8千人から約1,300億円以上の資金を集め、そのお金を運用せずに消失させた疑惑がもたれています。
目次
この会社が行った米国内での資産運用の仕組みを簡単に説明
医療保険に加入している患者が掛った治療費は、通常医療機関が民間保険会社に診療報酬の請求をします。しかし保険会社から支払を受けるまでの期間は数か月掛るため、資金繰りが厳しい医療機関にとって、直ぐにでも資金が必要となります。
そこでMRIは集めた資金を使ってそういった医療機関から手数料を取り、診療報酬の請求権を買い取り、保険会社から代金を回収します。そのタイミングで手数料の一部を配当金として個人顧客に還元する仕組みとなっています。
勧誘の巧妙な手口
この会社が行った勧誘の主な内容は、「高配当、元本保証を謳った安全な金融商品」、「ホテルでのフルコースのディナーや一定の投資額以上の顧客を対象とした本社見学・ラスベガス招待旅行」、「MRI発行の定期雑誌に登山家、バレリーナ、歌舞伎役者などの著名人のインタビュー記事の掲載」、「大手全国紙の新聞広告掲載、経済専門チャンネルの投資セミナー開催」等があります。
極め付けは、「芸能人などを広告塔として活用したこと」、および「私達が日頃よく目にする有名なマスメディアを利用していた」ことです。これなどは「この話、ちょっと怪しいぞ!」と思っていても、「有名人の掲載や大手新聞社が扱っている広告なので安全・安心だ」と錯覚させる手口といえます。
疑問だらけのMRI
・MRIは年率で6%~10%超の配当金を顧客に還元すると説明しています。この高配当は顧客に還元する分だけなので会社の儲け分を仮に同率とした場合でも合わせて12%~20%の手数料を差引いて医療機関から医療報酬請求権を買い取ることになります。
米国の金利は現在0.15%(国の政策金利)で日本と同じく低水準です。個人のカードローン金利でも15%前後の水準です。
つまり、この金利水準からすると医療機関はMRIから多額の手数料を払って医療報酬請求権を買い取ってもらうより、つなぎ資金として銀行などから借りて金利を払った方が寧ろ得ではないかと考えられます。
その理由は、カードローン金利と違って、担保が明確(保険会社からの支払)なので、それより低いレートで借入が可能となるはずです。これは、MRIにとっても同じで、個人投資家から資金を募るより金融機関から調達しても十二分にペイできると推測されるからです。
・この金融商品の販売先は日本で、主に日本人だけを対象としていました。MRIは為替リスクを負担してまで、なぜ日本人をターゲットとしたのか?米国の場合は一例として、ファイナンシャル・プランナーが一般的に認知されています。従って、こういった怪しい事案に対しては、個人がFPなどの第三者に相談しやすい環境にあります。
翻って、日本は、国全体で金融教育が不十分、現預金などの安全資産を好む人が多い、振り込め詐欺などの金融犯罪も多い、等々の要因で、MRIが狙いを付けたのかもしれません。
・米国本社のHPを閲覧すると、巨額の資金運用を行う会社とは思えない程の掲載コンテンツの貧弱さに驚きます。例えば、社長および役員の経歴・名前・顔写真、沿革、重要な財務情報などの大抵の会社が掲載しているページがこの会社には見当たらないことです。
これらの他にも、「経理処理は?」、「監査法人による会計監査は?」、「会社組織としての内部統制状況は?」など、この事件の全貌が見えないので何とも論じることはできませんが、この点においても大いに疑問が残ります。
詐欺被害に遭わないために その見分け方、チェックポイントは?
美味しい話には必ず裏がある。
儲かる話は絶対ない
高配当、高利回りもリスクと考える
資産を運用している国の為替や金利水準を日頃からチェックする。
その会社のHP(ホームページ)を一度は閲覧してみる。
運用の仕組みが理解出来なければ、話に乗らない。
この場合、会社の財務・経理の人、税理士、FPなど第三者に相談する。たとえ相談料が有料でも大金を失うことを考えれ ば安い
プッシュ&プル手法に注意
勧誘時、安心・安全を強調して強力に進めるが、時として、「信用できないと思う場合は購入しなくても問題ない、その後は勧誘しない」などと言うセールストークの手法
華美・過剰なサービスは怪しい
絶対儲かる商品であればそうする必要性はない
将来使う目的のあるお金は絶対投資しない。
失ったお金の殆どは戻ってきませんが、それを取り返すためには基本的に訴訟を起こすしかありません。その際、弁護士コストなど余分な費用も掛ってきます。儲け話にはくれぐれも用心することが肝心です。