先日の香港セミナーは少人数での開催でしたので、参加者の方と日本の公的年金制度の現状について、色々な意見交換をすることができました。
専門家の話では、「今の現役世代は自分が支払った国民年金もしくは厚生年金保険料の総額に対して、平均寿命ぐらいまで長生きできたとしても、支払った保険料の半分ぐらいの年金を将来受け取ることが出来れば良い方である、また、専業主婦が優遇される現在の公的年金制度の見直しは必至で、配偶者控除制度は遅かれ早かれ廃止されることになるでしょう。」ということでした。
こうした現状に対して、日本在住者はどう思っているのか、香港在住のセミナー参加者が日本の家族や友人にこうした話をしてみても、危機感を持っている人達は非常に少ない、とのことでした。
日本人は良く危機管理に弱い国民性と言われます。いまの公的年金制度に問題があると分かっていても、問題が表面化しない限り、具体的な行動を起こそうとする人達はまだまだ日本国内では少数派のようです。しかし、私達は原発の問題で、事前の危機管理を怠っていたがために、次の世代に大きな汚点を残してしまいました。公的年金の問題も、このまま放置していて良いはずがありません。
法大の小黒一正准教授の談話によると、2014年度からの消費増税は「止血剤」にすぎず、「税率を5%から10%に引き上げても、日本の財政運営が行き詰まる時期を4年ほど遅らせるだけであり、消費増税だけで財政破綻を回避するには、税率を30%以上まで引き上げなければならない」と話しています。
高齢化の進展などで自動的に膨らむ年間約1兆円の「自然増」に切り込まない限り、消費増税に踏み切っても穴の開いたバケツに水を注ぐのと同じ状況と言えます。
私も以前は日本の財政再建のための増税はやむを得ないと考えていましたが、様々な専門家の意見を聞いているうちに、増税は日本経済を将来に渡って疲弊させるだけだということに気づきました。
いまの日本に最も必要な政策は、徹底的な歳出削減と社会保障制度の効率化によって小さな政府を実現させ、豊富な財政黒字を擁する香港やシンガポールのような自助努力型の社会に移行していくべきだと思います。
年金も医療も、年功序列社会の代償として、これまでは国や会社が面倒を見てくれましたが、もはや国や会社に頼れる時代ではなくなった、自分の老後は自分で守る時代がやってきた、と考えるのが賢明です。
以上