不動産経営では、本質を見つめることが大切です。不動産経営は誰にでもチャンスがあるものですが、簡単ではありません。成功している人による自慢話しは話題になりやすいのですが、これは全体像を表しているものではありません。世の中で目にしやすいものが、実際に起きていることではないのです。
目次
表に出にくい「失敗事例」
成功とは反対に、不動産で失敗をした正確な事例は表に出てきません。現役オーナーさんとしても苦労やトラブル事例を話したくないものです。
先日、賃貸物件を売却した事例について多数のオーナーさんの意見を集めたいとの取材依頼を受けました。売却事例といえば、築古の自宅の売却、ワンルームマンションの売却や中古マンションの売却が大半ですが、このような事例について話をしてくれる人がなかなか見つかりませんでした。記者さんも沢山の人に声をかけたが、快諾をしてくれる人が見つからないとのこと。
失敗事例は成功事例よりも、表に出にくいという傾向があります。
一方で、不動産に対する注意喚起として「物件の売買を継続することはギャンブルに近い」と言われることがあります。かつてバブルといわれた時期には、土地の売買を重ねて利益を上げ続けた人がいたようですが、今はそれが成立する時期ではありません。
まず、短期で売却をすることを前提にした投機ともいわれる行為は避けるべきです。不動産物件の売買を繰り返して行うことは、プロの不動産業者が行うことであり、一般のサラリーマンが行うべきものではありません。
短期売却が目的でなくても、不動産投資では「物件を売ればよい。出口戦略として物件を売り抜けられる。」という意見があります。これは多数派の意見ですが、一般の個人はプロに大きく買いたたかれることが多いということも知っておくべきです。
不動産経営は「じっくり」が基本
出口戦略を語る人でも、毎月の定期収入である家賃収入(インカムゲイン)に一番の重点を置いているのが王道です。毎月の家賃収入には限りがありますが、これをより大きなものとするためには、何年も継続すること、時間をかけて収益を積み上げることが大切です。不動産経営は、じっくりやることが基本なのです。
不動産経営が簡単、容易、気軽などと言葉を発することがある場合には、オーナーさんご自身にとって失敗をする可能性が高くなっている状態だと注意してください。またセミナーやコンサルタントの立場で短期的な売却で成功できるなどと発言することはもっての他です。簡単に信じるべきではありません。
不動産経営とは「断崖絶壁にある釣り橋に敷かれたふわふわの赤いじゅうたんの上を歩くようなもの」だと思います。これは、皆さんを恐がらせようとしているのではありません。不動産経営を表現するのに良い言葉だと思います。
そのじゅうたんの上を無事に歩いているときには、問題がなく、お年を召したオーナーさんでも、無事に安定して賃貸経営をされているたくさんの事例があります。成功事例が多くあるということは、アパート経営の潜在的な力であると思います。
不動産経営の良さと大切なこと
不動産経営のもう一つの良さは、ローンを完済した後も建物に問題が起こらないようにして、さらに継続して入居者が快適に過ごしてもらえる状態を形成できることです。ただし、安定した経営状態から足を踏み外してしまったときは、正常な状態に戻すにはとてつもない苦労を強いられることになります。正常に戻すことができないこともあります。
そのために不動産賃貸業の中でもより硬く、より時間をかけてじっくりと事業計画を進めるべきだと思います。たくさんの得るべき情報があります。知っておくべき法律があります。金融知識が必要なときもあります。ご家族や身内から理解を得るのにも時間がかかります。
良い不動産を持ち、安定したアパート経営をしている限りは、無理に物件数を増やすのではなく、たまには繰上げ返済でもして、じっくりと進めることがより良い方法です。
着実な立地で、差別化がある建物を所有し、しっかりとした経営方針をあらかじめ検討すること。満室状態であっても決して気を抜くことなく、常に新しい情報を掴んで経営すること。不動産経営では、落ち着いて考え、確実な方法で行い、無理をしないことが大切です。(執筆者:大長 伸吉)