厚労省(平成23年パートタイム労働者総合実態調査)によると、パート主婦全体の55.2%は年収130 万円未満で働いている。年収130万円とは、健康保険・厚生年金等について夫の扶養からはずれるかどうかの境界線にあたる金額である。
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「働かない方が有利」の仕組みにメス
平成28年10月施行の法改正で、社会保険における被扶養者の認定基準が、年収130万円未満から年収106万円未満に引き下がる。既に、平成24年8月10日に国会で成立しているため、条件等の修正が若干あるとしても大筋決定している。
加えて、政府税制調査会で「配偶者控除」の廃止または縮小について、検討が始まっている。配偶者控除とは、夫の税金を計算する際に、妻のパート収入が103万円以下であれば「配偶者控除」が適用されて夫の税金が軽減される制度である。
妻がパート勤めをする場合、年収103万円や130万円を意識して就業時間等を調整していることは否めない。とうとう、税制や社会保険制度において、働かないほうが有利となる仕組みにメスが入ったかたちとなる。
現行、パート主婦にとって存在する2つの壁とは?
●103万円の壁:年収103万円を超えると、妻自身が所得税を納めることになる。
●103万円の壁:年収103万円以内は、税制において扶養範囲。年収103万円超より配偶者控除が適用されないので夫の税負担が増す。
●130万円の壁:年収130万円未満は、社会保険において扶養範囲。年収130万円以上より夫の健康保険・厚生年金等の被扶養者ではなくなり、妻自身に保険料負担発生(収入の約1割程度)。
今後、新たに出現する壁とは?
●106万円の壁:労働時間が週20時間以上30時間未満かつ年収106万円(月収8.8万円)以上で、夫の健康保険・厚生年金等の被扶養者ではなくなり、妻自身に保険料負担発生(収入の約1割程度)。ターゲットとなるパート主婦は、単純計算によると、時給770円(全国平均)であれば週29時間労働~時給1,110円であれば週20時間労働。
今後、社会保険において夫の扶養範囲内で働く3つの選択肢は?
●労働時間を週20時間未満かつ年収を130万円未満にする。
●労働時間が週20時間以上30時間未満の場合、年収を106万円未満にする。
●企業規模500人以下の会社で、労働時間を週30時間未満かつ年収を130万円未満にする。
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※色付け部分が法改正(平成28年10月施行)
※健康保険が夫の扶養である場合と、年金が第3号被保険者である場合は、妻の保険料負担なし
求められる106万円の壁にこだわらない働き方
今後は夫婦の実質的な合計手取り額が増えるように、106万円の壁にこだわらない働き方を選択することが賢明であろう。妻自身が保険料を払えば老後の年金収入増も見込める。106万円の壁を越えても実質働き損が出ないような妻のパート収入を覚えておくと良いだろう。(※パート先の社会保険料・夫の収入・家族構成など諸条件により誤差があるため概算で求めた目安)
●夫の年収:~400万円ならば、妻のパート収入:約122万円超で世帯収入アップ↗
●夫の年収:~600万円ならば、妻のパート収入:約123万円超で世帯収入アップ↗
●夫の年収:~1000万円ならば、妻のパート収入:約127万円超で世帯収入アップ↗
以上。(執筆者:長沼 満美愛)