株式投資を行なう前提として、「市場は常に正しいのか?あるいは常に間違っているのか?」、つまりは市場が常に株価に影響を与える情報を素早く織り込んでいると考えるか否かの判断は、概念的なものとはいえ、大変重要なことです。
何故なら、大半の投資家は意識的か無意識的かに関わらず、何らかの理論ないしはシナリオを使って投資を行っているため、市場に対する根本的な見方が投資アプローチに影響を与えるからです。
市場は常に正しいと考える「効率的市場仮説」をベースとしたアプローチでは、様々な資産クラスと同じ動きをするように設計されたインデックス・ファンド、逆に常に間違っていると考える「行動ファイナンス」をベースとしたアプローチでは、個別銘柄への投資が選考されやすいでしょう。
市場の非効率をいち早く捉えて超過リターンを狙う投資手法が有効
こうしたなかでの私の市場に対する考えは、「市場は短期的には間違う可能性は高いが、中長期的には大体正しい」というものです。
こうしたシナリオに基づく投資アプローチでは、短期的な市場の非効率をいち早く捉えて超過リターンを狙う投資手法が有効となります。その際、市場の非効率の判断はテクニカル指標に基づくものではなく、中長期的な株価に反映されるファンダメンタルズに基づくものであるべきです。
短期的な市場の非効率を示す一例としては、市場に織り込まれている本当のコンセンサスと、アナリストやエコノミストなどの少数の専門家が予想する便宜的なコンセンサスとの乖離があげられます。
便宜的なコンセンサスであるアナリストやエコノミストなどの予想が頻繁にはずれるのは、本当のコンセンサスなど誰にも分からない、反証できない事象であることが最大の要因です。
加えて、アナリストやエコノミストなどの予想は同業他社との営業競争上、不確定な情報の下でも迅速な判断を下して顧客に示さなければならないケースが多いことも起因していると思われます。
さらに需給面からは、経済指標の発表などをイベントとして捉えて便宜的コンセンサスを上回ったか下回ったかで売買する短期志向の投資家が、市場の非効率の発生に加担していると考えられます。
本当のコンセンサスなど誰にも分からないなかで、少なくともマクロ経済においては私利私欲のない日米欧の中央銀行の動向を市場コンセンサスと捉えれば、これをベースとした個別銘柄のファンダメンタルズの把握は、学習と経験を積みさえすればさほど難しくはないと思います。(執筆者:青沼 英明)