先日、某生命保険会社の代理店向けのセミナーに参加してきました。冒頭は、医療保険不要論と先進医療特約のメリットのお話でした。医療保険は不要、必要なのは先進医療特約、それも交通費用までカバーできる商品にすべきとのこと。それはそうです。先進医療が受けられる医療機関は遠方にあることも珍しくなく、交通費が出るのは本当にありがたいものでしょう。
そして、後半は、相続対策と生命保険についてのお話でした。『金融商品のなかで相続の対策に、一番向いている、適しているのは、生命保険です。』が、話の始まりでした。それはなぜか…もはや、聞きなれた感のあるお話を事例をもとにされました。
第一に、何といっても、生命保険は、民法上、受取人の固有の財産であること。すなわち、遺産分割対象の相続財産に加えなくていいこととなるわけです。つまり遺産分割対象外。ということは民法上の相続財産を共有する関係にある相続人との話し合いは不要ということになります。
これは、遺言書で財産の取得者を指定しなくても、現金を生命保険にしてあげたい人を保険金受取人に指定しておけば、その目的は達成されることとなります。シンプルに、2000万円を長男に全額遺してあげたいといったような時は、生命保険に加入しておけば、遺言書を書かなくても事は足りてしまうこととなってきます。
もっとも、そのほかの財産の分割をどうするかという問題もあり、生命保険だけで相続の遺産全体の分割をカバーするのは無理ですので、円滑、円環な遺産分割には遺言書は用意したほうがよろしいでしょう。
また、固有の財産であることから、他の預貯金は遺産分割書や遺言書または相続人全員の合意書(実印と印鑑証明書が通常は必要)がなければ、勝手におろすことも使うこともできないのに対し、生命保険は何らの他の相続人の書類等の必要もなく保険金受取の手続きが出来ますので、面倒なく現金を受け取ることができます。
介護の面倒を見てくれた特別な人に特別に遺してあげたい…といったような時にも有効でしょう。この、固有の財産としての特性を活かした相続対策は、家族信託を利用しても可能となってきます。生命保険がいいか、家族信託がいいかはケースバイケースです。
その人その人の状況や事情や財産構成や相続人の数や関係、さらには、財産を残したい人の気持ち、どうしたいのか、によって一番理想に近い形での方策をいくつもの対策のパターンから選択していくほか方法はないでしょう。
大体において、あちらを立てればこちらがたたず…が、世の常。どこに妥協点を見出していくか。できることなら、そのいくつもの対策のパターンと妥協点の見出しに真剣に向き合ってくれる人に、相続対策の生命保険の提案は頼むべきかもしれません。
生命保険を利用したパターンや家族信託を利用したパターンなど、比較検討したほうがいい場合も当然に出てくるでしょう。結果は同じでも検証に検証を重ねておけば、いざ、相続といったときに、あのとき、こうしておけばといったようなことは起こりにくいでしょう。
何事も、いろいろなパターンをシミュレーションして、自分の希望にあった方策を探し出してみましょう。(執筆者:荒木 達也)