相続の話に欠かせない「争族対策」。遺産分割のときに相続人間で財産の分割の話し合いがまとまらない…遺言書が遺されていたものの遺留分に満たない相続人が減殺請求をしてその代償金をめぐって話し合いがまとまらない…等々。相続財産の分割をめぐって、相続人間で話がまとまらないと、いわゆる相続財産の分割をめぐっての争い、争族となってきます。
争わないためには、遺言書やエンディングノートを遺しておきましょう…と、まことしやかにあちこちで耳にし目にします。この争族となってしまう理由は一言ではいえないでしょう。小さいころからの想いとか、親の愛情とか…いろいろなことが絡んでいる場合もあるでしょう。
不動産価値のに対する認識の違いが争族につながる
その争族の一つの要因として不動産の価値の相続人間での認識の相違があるでしょう。遺産分割や遺留分の減殺請求の場合、不動産はいくらで評価するのか。相続人間の話し合いで決めていくものですから、当然、法律で定められたものはありません。法律では、いわゆる相続人の相続分が民法で定められているくらいです。
そうなってくると、どうするか…。基本的には被相続人が亡くなった時に、市場で売却できる金額となります。この売却できる金額は、どうやって算出するのか…。不動産は、大体いくらくらいで売れるといった売却予想額は査定金額として算出できますが、実際に売りに出してみないといくらで売れるかはわかったものではありません。
不動産には4つの価格の目安が存在しています。いわゆる一物四価といわれる所以です。固定資産税評価額、路線価、公示価格・基準地価格、そして実際相場価格。
固定資産税評価額、路線価、公示価格・基準地価格は、国や地方の行政が毎年(固定資産税評価額は3年に一度)評価額を算出しています。固定資産税表額は固定資産税を課税するため各市町村が。路線価は相続税や贈与税を課税するため国税庁が、公示価格は売買の価格の目安として国土交通省が、基準地価格は売買の目安として各都道府県が算出し公表しています。
公示価格・基準地価格が時価(売却できそうな金額)水準で算出され、路線価はその8割、固定資産税評価額はその7割水準で算出されています。
さらに、実際の該当する不動産の近くで販売された事例をもとに算出する取引事例価格や収益還元法などを用いて、個々の不動産の価値を算出することができます。
ここで、話を戻しますと、遺産分割や遺留分の減殺請求の場合、相続人間でこの不動産の価格をめぐっての争いがよく生じるわけです。不動産をもらう相続人は不動産はなるべく安く、できれば、固定資産税評価額で。不動産以外の財産を貰う人は、不動産はなるべく高く評価することを望んでくるわけです。
この不動産の価格というか評価をめぐって、裁判所の調停や審判にいたるときもあります。裁判所までいって、話しがまとまらなければ、裁判官は不動産鑑定士の鑑定評価書をもとに遺産分割の内容を決めていくようです。
不動産価値を把握したうえで相続対策の検討を
このように、分けにくい、換金しにくい、価格がわかりにくい…不動産は相続のときには本当に厄介な存在となってきます。
生前の相続対策を考えましょうと奨められて争族対策として固有の財産である生命保険金を利用しましょうと提案されることが、非常に多いかと思います。ただ、円満、円滑な遺産分割や納税のための相続対策には、いきなり生命保険や土地活用を進めるのではなくて、全ての不動産の価値(売ったらいくら、貸したらいくら…等)を推し量ったうえで検討してみてください。
思い描いていた遺産分割の内容を変更する考えも湧くかもしれません。その遺産分割の内容を替えてくると、当然に納税のプランも変わってくるかもしれません。不動産の価値…まずは、ご確認してみてください。(執筆者:荒木 達也)