16日、ロシア中央銀行が政策金利を10.5%から17%に大幅利上げしました。
ロシア中央銀行は12日に政策金利を9.5%から10.5%に引き上げたばかりですが、それからわずか4日後に6.5ポイントもの緊急大幅利上げを行うことになりました。
目次
ハイパーインフレに向かうロシア
今回の大幅利上げは急激に進行するルーブル安とハイパーインフレに対する捨て身の打ち手です。
2014年初には1ドル=30ルーブル台だったロシアルーブルの価値は、ついに一時1ドル=70ルーブルを超えるまでに下落してしまいました。
またルーブル安に加えて、欧米からの経済制裁に対する報復措置として欧米からの食料品を禁輸したことは、むしろロシア経済に深刻な物価上昇を招いており、11月のインフレ率は実に9.1%まで跳ね上がっています。
こうした急激なインフレと通貨安の進行によって、ロシアのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、ついに危険水域と言われる400を超えて600に達しようとしています。
ロシアの経済危機が深刻化してきた経緯
「社債投資まとめ!」でもロシア経済の緊迫度はたびたびお伝えしてきました。
ウクライナ危機に対する欧米による経済制裁の影響が表れ始めたのは今年の3月頃でした。しかし、この頃のロシアルーブルは、まだ1ドル=36ルーブル程度でしたから、今から思えばまだ高い水準でした。
4月末にはS&Pがロシア国債を投資適格級では最低級に格下げしました。しかし、この頃のロシアのCDSは、デフォルト確率18%超とはいえ、まだ280程度でしたからまだ危険水域にまでは至っていませんでした。
その後ロシア中央銀行による必死の通貨防衛策の効果もあり、ロシアルーブルの為替相場は一進一退となりました。7月には、ロシアルーブル安が進行したことに対して想定外の利上げを行うなど、ロシア中央銀行は懸命な対応を続けていました。この頃のインフレ率は、まだ7.8%程度でしたから、今から思えばまだ低い水準でした。(参考記事:「ウクライナ問題による経済制裁によって追い込まれるロシア」)
10月頃にはルーブル安も進行はしていたものの、まだ1ドル=40ルーブル前後にとどまり、ウクライナ危機でも歩み寄りが見られるなど改善の兆しも見えそうな状況になってきました。(参考記事:「ロシア国債格下げ ただし政治情勢には好転の兆しも」)
原油安による破局的なロシアルーブル安
このように2014年になってから一貫して強い通貨安の圧力にさらされながらも、ロシア中央銀行の懸命な利上げや為替介入などによって防衛されてきたロシアルーブルですが、10月以降急激に進行した原油安の直撃を受けて、ついに破局的な通貨安の局面を迎えてしまいました。
ロシア経済を支える原油輸出ですが、ロシアが経済政策の前提としている北海ブレント価格は1バレル=100ドルです。しかし、北海ブレント価格は9月に1バレル=100ドルを割り込んだ後、10月以降急落し、現在は1バレル=60ドルを切る事態になっています。
この原油安は、先進国の景気停滞による需要減、北米シェール・オイル増産、石油輸出国機構(OPEC)による減産見送りなど様々な要因によって引き起こされたものです。
欧米からの経済制裁がボディブローのように効いて弱体化が進んでいたロシア経済は、こうした急激な原油安の直撃を受けて一気に通貨安が進み、もはや中央銀行のコントロールが効かない状況に陥ったと言えます。
今回の10.5%から17.0%への大幅利上げも恐らく限定的な効果しか期待できないでしょう。1998年ロシア財政危機以来のロシア国債デフォルトの可能性も想定しておいた方がよさそうです。
原油価格が一定水準まで戻らない限り、ウクライナ情勢がいかに安定しようともロシアルーブル安が解消される見通しは立たない状況です。(提供:社債投資まとめ!)