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起業していても扶養に入ることができる
確定申告の時期ですね。平成27年は2月16日(月)から3月16日(月)までです。
起業していても軌道に乗るまでは、赤字決算になったりして、思うように利益が上がらないものです。そんなとき、社会保険料の負担は厳しい。配偶者が会社員なら、扶養に入れないだろうか、と考えます。
自分で事業を起こしても、それが法人ではなく個人事業であれば、配偶者の扶養に入ることができます(法人の場合は、たとえ社長1人の会社でも社会保険に加入する義務があります)。
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個人事業主の収入要件は、必要経費を差し引く
被扶養者になるには「年収130万円未満、かつ被保険者の2分の1未満(別居の場合は仕送り額未満)」という要件がありますが、個人事業主の場合は必要最低限度の経費を差し引いた所得(粗利)で判断されます。
と思われるかもしれません。しかし、身一つで職場へ行けば収入を得られる給与所得者と違い、売上げを得るためには仕入れや原材料費等がかかります。それを差し引いて「生活費に投入できる金額」を割り出さないと、逆に不公平、ということになります。
「必要経費」に認められない費目もある
「必要経費」といっても、所得税法上のそれとは異なり、生産活動のための最低限度の経費であって、算入されない費目もあります。
そして、そのチェックは協会けんぽよりも健康保険組合のほうが厳しいのが一般的です。
原材料費、仕入れ価格、荷造運賃、他人を使用したときの人件費 など
×必要経費にならない費目
接待交際費、広告宣伝費、通信費、水道光熱費 など
したがって、「事業所得が130万円未満だから大丈夫」と思って被扶養者の申請をしても、審査の結果、認定されないこともあります。
確定申告書と、青色申告決算書又は収支内訳書の控えを添付
協会けんぽ(手続きは年金事務所)に被扶養者の申請をするとき、個人事業主は直近の確定申告書の控えを添付してください、と言われます。(参考:従業員が家族を扶養にするときの手続き(日本年金機構HP))
健康保険組合の場合は独自の認定基準を規定していることがあり、これにプラスして青色申告決算書または収支内訳書の控えが必要になることが多いです。そして、直近3年分の決算資料を提出させる健保組合もあります。健保組合の扶養審査が厳しいのは、経営努力によるものです。
高齢者の医療費は、税金や、本人負担のほか、現役の人たちが加入する医療保険制度から拠出する支援金等(財源は保険料)でまかなわれています。そしてそれは、被扶養者も含めた全加入者の人数に応じて算出されます。
そのため、扶養する必要のない人が名簿に載っているだけで保険者の負担が増え、保険料の上昇にもつながります。
協会けんぽでも定期的に扶養実態調査を行っていますが、母体が一企業、あるいは同業同種の企業の集まりである健保組合のほうが、より厳しく内容チェックを行っているのです。(執筆者:服部 明美)