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平成27年度の年金受取額は増額
年金受給者の受取額が6月(4・5月分)から増えます。物価・賃金の変動に応じて、受取額は年度ごとに改定されます。平成11年度をピークに、徐々に下がり続けてきた受取額が、やっと増額に転じました。
老齢基礎年金【国民年金】(※1):65,008円(平成26年度比+608円)
老齢厚生年金【厚生年金】(※2):91,491円(平成26年度比+1,225円)
(例)平均的な年収のサラリーマン夫(※2)と専業主婦(※1)の場合
年金受取額 夫婦合計:221,507 円/月(平成26年度比+2,441 円)
(※1.満額の場合、※2.平均的な年収513.6万円・40年間就業の場合)
春闘の結果によれば、昨年は15年ぶりに賃上げ率が2%台にのり、今年は昨年を上回る高水準が想定されています。消費者心理が改善して、財布の紐が緩む頃かもしれません。
しかし、年金受給者にとって、手放しで喜べない状況なのです。
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実質は目減り…
物価・賃金の上昇に応じて、平成27年度の年金額は2.3%増えるはずでした。しかし実際は、たった0.9%しか増えませんでした。
ずれが生じた原因は、二つあります。
一つ目は、「マクロ経済スライド」の実施によるものです。年金財政が破たんしないように、少子高齢化を加味した調整率が差し引かれました。
二つ目は、過去に支給された「過払い年金」を解消するために、調整率が差し引かれたことによるものです。
年金額が増えても、物価上昇分をカバーできないのであれば、実質的に年金額が目減りしたことになってしまいます。ご自身で、実質的な目減りについての対策を講じなくてはなりません。
対策
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年金受給開始のタイミングを、原則65歳から70歳まで遅らせる方法(繰下げ支給)があります。メリットは、1カ月遅らせるごとに0.7%ずつの加算率で受取額が一生涯増えることです。老齢基礎年金と老齢厚生年金はバラバラに繰下げることができますから、どちらか一方だけを遅らせることもできます。
~受給開始を遅らせた場合~
65歳から受給(原則) ∴受給額 780,100円/年
66歳から受給:+ 8.4% ∴受給額 845,600円/年
67歳から受給:+16.8% ∴受給額 911,200円/年
68歳から受給:+25.2% ∴受給額 976,700円/年
69歳から受給:+33.6% ∴受給額 1,042,200円/年
70歳から受給:+42.0% ∴受給額 1,107,700円/年
70歳受給開始がお得
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年金は何歳から受け取るのがお得なのでしょう?
受給開始年齢を70歳まで遅らせると、82歳以降に総受給額が逆転します(受給開始65歳と比較)。つまり、82歳以降も生きている場合、受給開始のタイミングを70歳まで遅らせた方がお得になるということです。
ちなみに、60歳まで生きた人の平均余命は男女共に82歳を越しています。女性に関していえば、90歳まで生存する割合が47.2%(厚労省)ですから、82歳以降の逆転に大きく期待できるでしょう。
男性:23.14年、つまり、平均83歳まで生きる
女性:28.47年、つまり、平均88歳まで生きる
66歳から受給:78歳以降も生きていればお得!
67歳から受給:79歳以降も生きていればお得!
68歳から受給:80歳以降も生きていればお得!
69歳から受給:81歳以降も生きていればお得!
70歳から受給:82歳以降も生きていればお得!
(注)年金受給を遅らせている間は、加給年金(家族扶養手当のような意味合い)がもらえません。
逆に、原則65歳から60歳まで受給開始年齢を早める方法(繰上げ支給)があります。
たとえ一生涯減額されても、年金を早めに受け取ってセカンドライフを楽しみたいというご判断も尊重します。いずれも途中変更ができませんから、メリット・デメリットを考えて慎重に判断しましょう。(執筆者:長沼 満美愛)