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消費税8%で経済はどうなったか?
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昨年4月の消費税率引き上げによって、日本経済は14年4~6月期、7~9月期と2四半期連続のマイナス成長となりました。
その後、14年10~12月期、15年1~3月期と一応プラス成長とはなったものの、多くの人々にとって景気回復の力強さを感じられないのが現状ではないでしょうか?
実際に、この度5月20日に発表になった15年1~3月期GDP1次速報では、前期比を押し上げた主な要因として「在庫増」があげられていました。
これは、逆に考えれば「将来の生産圧迫要因になりかねない」とも言え、景気回復という甘い香りの言葉に酔いしれてばかりはいられないと思います。
また、GDPの半分以上を支える「消費」も依然と弱々しい状況が続いています。同じく5月20日の発表では、雇用や賃金が改善し、さらに原油安の効果がありながらも、10─12月期と同じ伸び率の前期比プラス0.4%という結果でした。
このように今回発表されたGDPをみてもわかるとおり、昨年4月の“消費増税”以降、日本経済が力強い回復をとげているか? というと…どうしても疑問符がついてしまうのは筆者だけでしょうか?
なぜ消費税を上げるのか
では、なぜここまでも景気に水を差すような「消費増税」を断行したのでしょうか?
さらには、17年4月にも再び増税をするというのでしょうか?
それは、極々シンプルにいえば、『どんどん増えていく国の借金に対して手を打つために これ以上借金できない! 消費税を増やします!』ということだと思います。
確かに、至極理解しやすいロジックではあります。
しかしながら、一般の消費者は 「収入は増えないのに増税分価格が高くなる」ということでは嫌気がさすでしょうし、企業側からは「増税されたら商品が売れにくくなる」、「その分の価格転嫁は難しい」といった嘆き節も聞こえてきそうです。
消費税が10%になったら…
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では、今度消費税が10%になったらどうなるのでしょうか?
一説によると、一般的な平均年収世帯で消費税5%の時に比べて17万円前後の負担増になるという試算もあります。
正確なところは正直上がってみなければわかりませんが、消費者への負担が増える、企業にとってもビジネスモデルの再構築が必要になることは明らかであります。
ちなみに97年の橋本内閣が消費税を3%から5%に引き上げた時には、国民に9兆円程の負担が課せられたとも言われており、景気が悪化し、その後の中小企業倒産・廃業、大手金融機関の金融危機へと繋がって行きました。
もちろん、財政再建を放置は出来ませんし、膨らむ国債発行額とその日銀購入策、はたまた2020年のプライマリーバランス黒字化公約、今の子供たちの未来にツケを回さないことなどを考えれば、税収増は喫緊の課題だと思います。
バランスとタイミングがポイント
しかし、筆者が懸念しているのは、景気が良くないにもかかわらず腕ずくで増税に向かった時のリスクであります。
安倍総理は、「次回2017年4月の消費税率10%への引き上げには景気判断条項を付すことなく確実に実施する」と語っていますので、経済情勢にかかわらず実施されるということでしょう。
以前からこの欄でもそういったスタグフレーションリスク等に言及していました。
「日銀の追加金融緩和で”一気通貫”? カンフル剤の副作用に注意」
そういう意味では2017年までそんなに時間があるわけではありませんし、駆け込み消費等を考えれば、実質ここ1年の間にいかに本当の景気上昇が図れるか? その上での増税を実施できるか? がポイントだと思います。
「消費税が10%になったら、何でも1割なので計算がしやすくなる!」などといった単純な話ではなく、消費増税に関しては、財政と景気のバランスをどう考えるか?…その上でいつどのようなタイミングで実施するのがよいか? を考えるべき問題だと思います。(執筆者:阿部 重利)