総務省が行う労働力調査によると、60歳台後半のうち働く人は、2014年度は男女合計374万人になり、2013年度よりも10%増えました。これは60歳台後半の40.7%にあたり、5人に2人が働いている計算になります。
また労働環境については、定年制度の廃止・定年の引き上げ・定年退職後の再雇用等によって、60歳以上の高齢者が少なくとも年金受給開始年齢まで働くことのできる環境が整ったことも挙げられます。今回のコラムでは、永続勤務の60歳代で働かれている方を対象に、65歳前もしくは後の退職時の失業保険についてお話しします。
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目次
1.失業保険の基本的事項
退職し、失業状態にある時に雇用保険から支給される金員は「基本手当」、一般的には「失業保険」と呼ばれています。(以下、「失業保険」といいます。)
失業保険は、退職の理由・退職時の年齢・被保険者として雇用保険に加入していた期間、によって支給日数が決まっています。
2.65歳前の退職と、65歳以降の退職で異なる失業保険の給付内容
心身に障害等の就職困難事由がなく、自己都合による退職をされた方について、退職の時期に応じた失業保険の給付内容は次のとおりとなります。
・65歳の誕生日の前々日までに退職された場合
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上記以外にも、一定の要件を満たした場合には技能就職手当、寄宿手当、傷病手当
等の諸手当がつく場合があります。
・65歳の誕生日の前日以降に退職された場合
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給付日数や内容で判断すると、65歳の誕生日の前々日までに退職された方の給付内容は手厚くなります。
3.ライフスタイルに合わせて選びたい退職の時期
次に給付に付随する手続について検討してみます。
65歳の誕生日の前々日までに退職された方の給付には、いわゆる「現役世代」と同様の手続が必要です。つまり、
(2) 4週間に1回のハローワークの指定する日時(「失業の認定日」といいます)にハローワークに出向いて、認定を受けること。
(3) 一定期間内に、一定頻度の求職活動の実績が必要なこと。
などが挙げられます。
他方、65歳の誕生日の前日以降に退職された場合には、
(B) 一時金として支給され、失業の認定も1回のみであるから、ハローワークに出向く頻度は原則、退職直後の休職の申込みと失業の認定の2回。
(C) 失業の認定日に失業の状態であればよく、翌日から就職したとしても返還は必要ない。
従って、
より手厚い給付内容が期待できる65歳の誕生日の前々日までの退職には「現役世代」と同様の手続が必要である一方、65歳の誕生日の前日以降に退職した場合には早期に、失業状態にとらわれないご自身の時間を持つことが可能になります。
勤務先の状況、仕事の引き継ぎ、就業規則の内容等によって退職時期の選択の可否は左右されます。しかし、ご自身が退職時期を決定できるのであれば、退職後の雇用保険の給付内容や手続、ご自身のライフスタイル等からも考えてみるのも良いかもしれません。(執筆者:岡村 ひろ子)