「認知症」と新聞にも雑誌にも載らない日は無いくらい、関心の高いキーワードになってきましたね。これは、誰もがなる可能性があります。高齢になってきた親が一人暮らしで引きこもりがちであったり、人生の伴侶の死がきっかけになって認知症が始まることも少なくありません。
しっかり者で、尊敬する親が変わり果てていく姿は想像するだけでも辛いものですね。まして、子どもたちの顔がわからなくなる時期まで進むと受け止める自信も無いという家族がほとんどです。
(実際は、顔を見てわからなくても、不思議と自分の子どもの名前はいつまでも忘れずにいらっしゃる方が多いです)
その様に、人間が持つ意識を大切にしている、無駄にしない、誰にでもできる認知症ケア「ユマニチュード」を紹介したいと思います。
目次
フランス生まれの「ユマニチュード」
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「ユマニチュード(Humanitude)」は、認知症ケアと呼ばれる1つで、実は30年以上も前から、研究が行われているケアの方法です。日本には、2011年から取り入れられています。
「人とは何か」、「ケアする人とは何か」を哲学的な考え方から生まれました。主に、医療や介護の現場で実践されていますが、誰にでもできる方法を基本としています。
魔法と言われるゆえん
ユマニチュードはよく、「まるで魔法の手のよう」と表現されています。それは、誰にでもできる方法という説明からもわかるように、特別なことをしていないのに、認知症の症状が改善する効果がみられたという事実から言われています。
例えば、脳挫傷などからくる認知症で暴力的だった人も、ユマニチュードによる対応を1分行なったら、とても穏やかな表現をされたという事例があります。
どんなことをするの?
魔法の手と呼ばれ、効果も聞いたら、何をしているのか気になりますね。
誰にでもできるので、いたってシンプルです。
基本動作の行動は4つ
・見る
ただ見るのではなく、まっすぐの位置から、同じ目の高さにして、さらに20cmくらいの近くから長い時間見つめます。
・話しかける
ゆっくりと、前向きなことばで話しかけます。実況している様になるべく具体的に話しかけます。
・触れる
ボディタッチは人間関係を親密にするといわれます。ここでも、安心感を得られる様に本人の背中に優しく触れる、話しかけながらそっと手に触れることが効果をもたらします。
・立つ
1日20分立つことを目指します。いつも腰掛けていても、歯を磨く時や体を拭く時にはなるべく立った姿勢で行います。寝たきりでも、歯ブラシや食事の時はなるべく起きた状態を目指します。
立つ動作は厳しいと思われる方も多いと思いますが、「自分の足で立つことが、人の尊厳を自覚する」と考えられており、筋肉など身体的機能だけでなく、立つことで色々な感覚を取り戻す効果があります。
4つの行動を組み合わせた150の手法
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いくつか紹介すると、見つめながら、話しかける。優しく背中に触れる。ゆっくりと話しかける。最後は必ず手に触れて「またくるね」と伝える。などです。
この150の手法を修得したスタッフにケアされると、認知症による意欲喪失や、怒りっぽい症状の方は表情も和らいでいきます。ユマニチュードは、手法よりも、人としての尊厳を持たせること、絆を大切にすることが重要であると考えています。
認知症の進行は個人差があります。ユマニチュードなど特別ではないかかわり方で、進行が緩やか、または改善の希望があるのなら覚えておく価値はあります。介護サービス費削減にも繋がりますので、まずは知識として持っておかれる事をお勧めします。 (執筆者:佐々木 政子)