平成28年10月施行の「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」について法改正の内容を十分に理解すれば、自分らいし働き方を上手く選択できるのではないでしょうか。
目次
どう変わるの?
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フルタイム労働者を除く非正社員のことを短時間労働者といいます。勤め先での呼称は、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員・嘱託などです。
のです。
健康保険や年金について、パート主婦が年収130万円未満で働く場合、サラリーマン夫の扶養から外れません。平成28年10月からは、その認定基準が年収106万円未満に引き下げられます。「106万円の壁」が新たに出現することになるわけです。
実際のところ、影響は大きいの?
短時間労働者の就労実態を分析してみましょう。
・平均時給 :1,012円
・1日の実労働時間数 :5.3時間
・1カ月の実労働日数 :17日
このデータを使って、単純に平均的な年収を試算してみると…
年収106万円を超えていますね。サラリーマンの夫を持つパート主婦にとって「106万円の壁」は切実な問題であり、他人事ではないといえるでしょう。
自分には関係するの?
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以下(1)~(4)の全てに該当するパート主婦は、サラリーマン夫の扶養から外れます。健康保険と厚生年金の保険料は、平成28年11月から給与天引きされることになります。
(1)勤務期間は1年以上の見込みがありますか?
雇用期間が1年未満であっても、「更新される」又は「更新される場合がある」と契約書面に明文化されている場合は、1年以上とみなされます。
(2)労働時間は週20時間以上ですか?
所定労働時間で判断するため、就業規則や雇用契約書で確認しましょう。所定労働時間が週単位で記載されていない場合は、以下の方法で週の労働時間に換算してください。
・ 1カ月単位の所定労働時間× 12/52
・ 1年単位の所定労働時間× 1/52
(3)月額賃金8.8万円以上ですか?(根拠:年収106万円以上)
就業規則や雇用契約書に記載されている、時給・所定労働時間・所定労働日数で1カ月の賃金が自動計算されます。欠勤などは考慮せず、あくまでも契約上の数字で算定されます。年の後半で労働時間を調整できるようなものではないということです。
ちなみに、賞与・残業代・通勤手当・家族手当・臨時手当は含まれません。
(4)従業員501人以上の企業にお勤めですか?
現行の基準で、健康保険・厚生年金の被保険者数が501人以上の企業にお勤めであれば対象となります。派遣社員の場合は、派遣元の規模で算定します。派遣先の企業が小規模であっても、大手の派遣会社に登録している方は対象となる可能性が高いですね。
勤め先の対応は?
対応は二極化する予想です。
・労働の長時間化を図る
⇒人材を厳選して長時間働いてもらう。雇用数を減らす。できるだけ正社員を採用する。正社員への転換を促す。
・労働の短時間化を図る
⇒所定労働時間数を短くする。雇用数を増やす。賃金を下げる。勤続年数を1年未満にする。できるだけ学生を活用する。
サラリーマン夫を持つパート主婦の対応は?
「106万円の壁」にこだわらず、世帯手取り額が増えるような働き方を選択することが賢明でしょう。年収130万円超を目指しましょう。保険料は勤め先と折半で納めることになります。厚生年金保険料を納めておけば、老後の年金収入が増えます。目先の損得勘定ではなく長期的な視点で対応すると良いですね。(執筆者:長沼 満美愛)