かってスイスのチューリッヒに証券マンとして5年間駐在し、多くのプライベートバンカーと接触してきました。また昨年日本アナリスト協会主催のシニアPB(プライベートバンカー)の取得に伴いプライベートバンキングの勉強を始めましたので、ご紹介していきたいと思います。
目次
プライベートバンキングとは何か?

プライベートキングの定義
お金を持った個人の資産管理にかかわるあらゆる総合的なサービスを提供する金融サービスのコンシェルジェのような役割である。具体的には下記のような条件が求められております。
・富裕層が顧客の対象となる
・プライベートバンキングを提供する金融機関をプライベートバンカーと呼ぶ。
スイス銀行法ではプライベートバンカーと呼ばれるためには、無限責任社員を含むパートナー制度を必要要件としているが、スイス内でも厳密なプライベートバンカーは限られている。
世界のプライベートバンキング
上位25行の運用資産残高は下記の表の通りです。
【プライベートバンキング 運用資産残高 上位25行 2015】

スイス 27%、アメリカ 47%と合計で72%と圧倒的なシェアを占めている。
以下、スイスとアメリカについて解説したいと思います。
スイスのプライベートバンキング

スイスでプライベートバンクが育った背景
・スイスはかってヨーロッパの最貧国と言われていたので、海外で多くの傭兵(兵隊の出稼ぎ)が戦争で戦っていた。そこで血を流して得た稼ぎを故郷に送金したり、あるいはそのお金を運用する目的からプライベートバンクが誕生したと言われている。
・その後スイスの銀行は安全で運用能力が高いという評判が口コミえ伝わっていって、徐々に外国からの資金流入が増大していった。
プライベートバンクとしてのスイスの魅力
・スイスは永世中立国であり、政治的中立性を維持している。
・経済が安定し、インフレ率が低く、通貨であるスイスフランが強く、金利が低い。
・スイス銀行法による銀行の「守秘義務」が厳しい。
・世界各国と租税条約を結んでいるが、租税負担が低い。
・資本の輸出入規制が緩い。
最近の傾向
・近年 スイスでも米国からマネーロンダリング問題を追及されて従来のような厳格な守秘義務を維持することが難しくなってきておりプライベートバンカーの優位性を維持することが難しくなってきている。
・スイス内でも伝統的なプライベートバンカーよりも 大手銀行のプライベートバンキングが存在感を増しつつある。
米国のプライベートバンキング

特徴は下記のようである。
・米国にはスイスのような無限責任社員をかかえるプライベートバンカーは存在しない。大半は大手金融機関(大手投資銀行、大手商業銀行等)の一部門のプライベートバンキング部門として発達してきた。
・多くは個人の信託をベースにしている。中にはロックフェラー家資産を管理するロックフェラー&カンパニーのようなファミリーオフィスというスタイルもある。
・プライベートバンキング業務をコーポレートファイナンスとリンクさせて展開しているケースが多い。
以上です。(執筆者:須原 國男)