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金融機関から借り入れをしたことのある経営者なら、信用保証協会(以下、保証協会)を一度は利用したことがあるのではないでしょうか。
保証協会とは信用力の乏しい中小企業のために保証人となってくれる公的機関です。現在、全国に385万ある中小企業・小規模事業者のうち約3分の1が利用しています。
保証協会が金融機関に対して原則80%を保証してくれることで、財務内容に問題がある、あるいは担保や保証面が弱くても、金融機関から借り入れがしやすくなるので、中小企業にとって保証協会は重要な存在といえます。
保証協会は中小企業から保証料を徴収し、もし中小企業が返済不能に陥った場合は代わりに返済をします。そして、その収支(信用保険事業収支)が赤字の場合は最終的に税金で補てんすることになるのですが、実は長年赤字が続いているのです。
そのため、財務省は財政健全化を理由に黒字化を求めており、信用保証制度の見直し議論がスタートしたのです。
信用保証制度の大幅な見直し
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経済産業省は昨年11月に設置した中小企業政策審議会にて、信用保証制度の見直しに関する議論をスタートさせました。昨年に見直しの基本的方向性を取りまとめ、今年1月以降に制度改正の詳細を議論していく予定です。
かつて保証協会は全額保証していました。しかし、金融機関にもリスクを負担させるために、2007年から一部の制度を除き保証協会が80%、金融機関が20%負担とする大改正が行われました。そして、今回の信用保証制度の改正も現行制度を大幅に見直す内容になることでほぼ間違いありません。
現時点での案としては、創業期には100%保証を行い、中小企業が成長していくにつれて徐々に保証利用を減らし金融機関の保証割合を高め、そして、最終的には保証協会の利用から卒業を目指す形にするべきとしています。
また、リーマンショックや東日本大震災が発生した際には、100%保証制度によって多くの中小企業が救われました。世界的な金融危機や大災害に対しては、中小企業では対応が難しいことから今後も100%保証の制度は維持される方向です。
財政健全化が優先
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2014年4月に消費税は8%に引き上げられ、今後は10%になる予定です。消費税以外にも相続税の基礎控除額の削減、所得税の最高税率の引き上げ、厚生年金保険料の引上げ等も実施され増税が目立ちます。
財務省としては、負担割合を金融機関と保証協会で半分ずつにし、100%保証を減少させたい考えです。日本の財政は毎年赤字を出し続けていることから、財政健全化のために信用保険事業収支の赤字を減らす動きになることはやむを得ないことなのかもしれません。
しかしその影響で、金融機関からすると現状の80%保証があるから支援できたが、これ以上に保証協会の保証割合が縮小されれば支援が困難となる中小企業が出てくることも懸念されます。
創業時あるいは大震災等危機的状況の場合は今後も手厚い保護を行っていきますが、日本の財政を考えると、信用保証制度が縮小されていく流れにあります。
創業してから何年も経つような中小企業は保証協会を利用しなくても資金調達ができるような経営をしていかなければならないし、金融機関側も保証協会に頼らずとも中小企業を支援していかなければならないのです。(執筆者:瀬野 正博)