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今年に入って、マーケットは一方向に大きく動きました。大きな下落ですね。
通常はご祝儀相場で、年始は株価は上がることが多いです。年末は上昇してきていました。年明け早々のこれほどまでの株価下落は、だれも想像していなかったことでしょう。
昨年末はアメリカが利上げをしました。ドル高・円安を予想していた人も多かったと思いますが、予想に反して急激な円高になりました。
予想していないと言えば、サウジアラビアとイランの国交断絶、中国での導入したばかりのサーキットブレーカー作動、北朝鮮水爆実験、どれもこれも、誰も予想していなかったことが次々と起こりました。
予想していないことが起こると、投資家は不安になり、リスク・オフの動きとなります。持っていた株を投売り、円を買います。金を買って原油などのコモディティを売って、債券を買いますね。
昨年末に株を買い、ドルを買い、そのまま持ち越してきた人は、生きた心地がしなかったことでしょう。
もちろんこの先、流れが転換し、買った場所まで戻ってくることも十分に考えられます。それが長期投資を推奨している人たちの主張なのでしょう。
しかし、この論理では、「時間」を買うことはできません。もっとも、長期投資を主張する人は、「時間」がリスクを軽減するという論調ですからね。
昨年末、年末年始を前にポジションを手仕舞っておけば、大きな含み損を抱えなくてすんだわけです。それはキャッシュが手元にあり、それが新たな投資資金になるということです。
年明けから何が起こったのかを冷静に分析できるようになれば、「売り」で攻められますからね。
時間をリスク分散の道具として使うのか、利益の源泉と考えるのか、そこに大きな違いがあります。
「億り人」と呼ばれる、億というお金を市場で運用している人は、リスク分散は当然考えていますが、リスク分散より利益確保のほうに、考えの比重を置いていると思われます。
「億り人」にとってのリスク分散は、主に資産管理です。いかに投資資金を減らさないか、含み損を抱えないかが資産管理です。
その目的は、利益の源泉であるキャッシュを、いかに手元に残すかです。相場変動にうまく乗るための軍資金確保、そのためのリスク対策です。
そこが、投資信託を販売する銀行やファイナンシャル・プランナーの人たちが言うリスク分散とは、考え方が異なります。
そういう考えに立てば、手元にいつでも使える現金を残す、相場環境の変化にいつでも乗れる現金を確保しておくには、今年のような相場の動きを見れば、マーケットに長くいること事態がリスクそのものになってきます。
つまり、利益確定は早めに、こまめに行うのがよいですね。
それは短期投資とも取れますが、相場が落ち着かないボラティリティが大きいときこそ、利益確定を早めに行うことが、結局資金を守る、投資の本来の目的である「利益を得る」という目的を果たすことになるのでしょう。
含み益はあくまでも含み益で、キャッシュに換えてこそ利益です。
投資を短期か長期かで考えるのは、相場環境によります。アベノミクス初動時は長期投資が利益を伸ばせました。
どちらがいいというものではなく、一方を否定するものではありません。両方必要なのです。
ちなみに、長期といっても何年も持ちっぱなしというものではないですよ。10年持ちっぱなしは、もはや投資ではないですからね。
いまの環境は、そして来る相場展開、おそらく天井をつけて再び下落に転じることを考えれば、今は利益確定をこまめにする方法がよいと思います。(執筆者:原 彰宏)