テレビや雑誌で認知症のことがクローズアップされる度、自分の親は大丈夫だろうか? と不安がよぎるものです。
私たちも、ある日買い物へ行き、購入しようと思っていた品をすっかり買い忘れて帰ってきたり、「今日は何日だったかしら?」とついうっかり忘れていしまう経験はあるものです。
しかし、高齢の親が同じ様なついうっかり忘れた行動をとると「認知症では?」と疑ってしまいます。
目次
もの忘れは加齢でも起こる
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認知症という病名が一人歩きしている時代で、もの忘れは全て認知症と思われている方も少なくありません。
認知症でいう「もの忘れ」は初期や軽度の時期に起こる認知機能の低下の影響からみられる症状です。
認知症の他に、年齢を重ねていくにつれて低下してくる記憶機能の影響からくる「もの忘れ」もあります。
記憶のメカニズムの1つに、思い出す働きをする「想起」といわれる分野があります。老化によりこの思い出す働きが低下していくことが老人性の「もの忘れ」といわれるところです。
では、認知症と老人性の「もの忘れ」の違いはどこにあるのでしょうか?
今回は「もの忘れ」の違いと見分け方を少し考えてみたいと思います。
まずわかりやすく1つ例をあげてみたいと思います。
つい、うっかりのもの忘れ
買い物へ行き、牛乳を買って冷蔵庫にしまおうとした時に、買ったばかりの牛乳が冷蔵庫にあるのを見て「あら、しまった」と思うことがたまにあったとします。
もちろん、認知機能に障害がない場合には次から気をつけようと考えます。
認知症によるもの忘れ
しかし、認知症により認知症機能に障害があると、買い物へ行く毎に牛乳を買ってしまい、冷蔵庫に新しい牛乳があっても「あら、しまった」とはあまり思わなくなります。
その為、冷蔵庫の中は牛乳がいくつも入っているということになります。
牛乳の例の他にも、お孫さんの名前を忘れてしまっても、よく考えてしばらくして思い出すことができれば、老人性のもの忘れといえますが、お孫さんの顔を見ても誰だかわからないといった場合には、認知症による認知機能の低下の可能性も否定できないといえます。
容易に脳を検査するなどできれば問題も減りますが「もの忘れ」が目立ってきたところで専門医のもの忘れ外来などをすすめても、「私は大丈夫よ」とこちらの思うようには受診してもらえないのも、現実に多くあります。
認知症のチェックリスト
専門医でも、認知症の早期のもの忘れと老人性のもの忘れは区別が難しいといわれています。
正解のわからない疑問に少しでも答えを導くヒントになるかもしれません。認知症のチェックリストをのせておきますので、チェックしてみましょう。
□ もの忘れの症状が進行している
□ もの忘れについて自覚がない
□ 数日前のことを覚えていない
□ メモするなど工夫ができない
□ 初めての場所へ行けない
□ 銀行や郵便局のお金の管理ができない
上の7項目から、回答が0または1つ程度あてはまる場合には、認知症の心配はなしといって良いそうです。
ただし、回答が5つ以上あてはまる場合には認知症を疑う必要がありそうなので早めに専門医又は、かかりつけ医に相談されることをおすすめします。
認知症は早期発見、早期対応が重要
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認知症は早期発見がなによりも大切になりますが、おひとりおひとりの生活もあります。
すぐに受診が難しい場合には、ご家族のかかわり方で認知症の進行を緩やかにできることもあります。
なんとなく過ぎてしまう毎日に、少し色をつけてあげることでご本人に活性を与えることができます。
認知症に不活発は敵
例えば毎朝、新聞を声を出して読むようにすすめたり、離れて暮らしている親御さんには毎日ひと声の電話をかけるようにすることで、お金をかけなくても毎日の日常を少し活性させることができます。
難聴も認知症と間違われやすい
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難聴や老眼は不活発の原因になりす。
老化による聴力の衰えはご家族にも気づくのは難しいですが、難聴により適切な応答ができずに認知症と間違われてしまうケースも少なくありません。
また、難聴から周囲とのコミュニケーションも薄くなり日常生活での刺激がなくなり不活発になる危険も高くなります。
不活発予防のためには、聴力や視力の衰えを適切にとらえて眼鏡や補聴器などの利用を促すことも大切になります。
ご本人が口にしていなくても、声をかけてみると意外と不便を感じられていることもありますよ。
認知症早期発見が、大切な理由
認知症の進行にかかわることはもちろんですが、認知症の「もの忘れ」は初期、軽度の時期の症状です。
認知症が中度、重度へ進行していくと徘徊が始まり、ニュースで耳にするような徘徊して交通事故に巻き込まれたり、車の運転をして交通事故を巻き起こしたりしてしまいます。
これらの事故の責任はご家族が肩代わりしなければならない世の中になりつつあります。認知症が進行し徘徊が始まるとご家族だけでは到底介護しきれない現実が待っています。
認知症を患ったとしても、進行を緩やかにしていくことで介護の負担を軽減することができます。
私にも他人事ではありません。これからも一緒に認知症について少しずつ考えていけたらと思っています。(執筆者:佐々木 政子)