「介護予防」と聞くと難しく考えがちですが、皆さんが毎日行っている歯磨きも介護予防のひとつです。
毎日なにげなく行っている歯磨きは、虫歯を予防するだけではなく、特に高齢者に多い誤嚥性肺炎を予防し、身体機能の向上にも効果をもたらしてくれていることが認められています。
しかし高齢になってくると、義歯が増えてきたり、手にしびれがある、膝や腰が慢性的に痛いから動くのがおっくう、寝たきり、などの理由から習慣だったはずの歯磨きをおろそかにしてしまう方も少なくありません。
簡単にできる介護予防として今回は、高齢者の口腔ケアの有効性と専門家も取り入れている口腔体操をご紹介していきたいと思います。
まず高齢者の誤嚥性肺炎とは、どんなものなのでしょうか。
高齢になると飲み込む機能が低下していく為に、飲み込んだ食べ物などが気管へ入ってしまう誤嚥を起こすことが多くなります。
健康な人は咳をして誤嚥したものを気管から出そうとしますが、高齢になると力が弱い為、完全に気管から出すことができないことがあります。
気管に残る量が多かったり汚かった場合には、肺に炎症が起こり肺炎になります。この誤嚥による肺炎を誤嚥性肺炎といいます。
目次
口腔ケアが誤嚥性肺炎を予防する理由
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誤嚥により気管の中に入る物としては、食べ物、飲み物の他に唾液があります。
唾液は刺激としては弱く少量の場合では肺炎にはなりません。
しかし、唾液に口腔内の細菌が多く混ざっている場合には肺炎になるリスクは高くなります。
口腔内の細菌としては虫歯菌や歯周病菌の他に、清潔に保たないことから緑膿菌や肺炎球菌も繁殖することがあります。
口腔ケアにより、口腔内を清潔に保ち唾液中の細菌を減らして増殖を抑えることは肺炎の予防につながると考えられています。
口腔ケアの5つの有効性
口腔ケアは、肺炎の予防以外にも日常の生活を維持、向上させる力を持っています。
1. 脳を活性化させる
口腔内への刺激は脳にとって大きく、脳の約40%が活性化するといわれています。
歯磨きやうがいを行うことは、脳を活性化させることができます。
2. 口腔機能が向上する
寝たきりの高齢者にとっては、口を動かす時は食事の時だけという方も少なくありません。
会話ができなくても、口腔ケアで歯ブラシを口に当てたりうがいをするだけでも口を動かすきっかけが持てます。
口を開けたり、歯ブラシで舌や頬を押したり引いたりされる負荷は、自然と口腔機能の向上につながっています。
3. 唾液分泌を促すことができる
唾液は口腔内の環境を良好に保ってくれる働きがありますが、高齢になると唾液の分泌も減っていく傾向があります。
口腔ケアは唾液腺への刺激にもなるので、寝たきりで口を開けたまま呼吸をされている方などには、口腔内の乾燥予防にもなるのでおすすめです。
4. 味覚障害の改善につながる
口腔ケアにより、口腔内の乾燥が改善されることで味覚も改善されることがあります。
また舌についた舌苔を除去していくと、舌苔が障害していた味覚を取り戻すことがでる場合もあります。
味覚が戻ることで食事も楽しくなり摂取量も増えるかもしれません。
5. 嚥下機能が向上する
口腔ケアを行うことは口腔機能の向上に合わせて飲み込む力にも影響を与えているといわれています。
口腔ケアの際の刺激が脳を活性化させ嚥下機能を改善させていることも明らかにされています。
口腔ケアの有効性を簡単にあげてみましたが、口腔ケアといっても難しいことは何もありません。
普段の歯磨きをすることは立派な口腔ケアなのです。
口腔機能向上に向けて
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デイサービスやデイケアなどの通所系介護でも「口腔機能向上」を取り入れている事業所があります。
これは口腔ケアを言語聴覚士や歯科衛生士、看護士が専門的に評価しながらケアや指導を行ってくれるサービスになります。
また、日々のレクリエーションや機能訓練の中にも口腔体操などが取り入れられています。
最後に、実際に行っている口腔体操をひとつ紹介しておきたいと思います。
口腔体操 「パタカラ発声」
2.舌の先に力を入れて「タ」
3.舌の奥に力を入れて「カ」
4.舌の先を口の中の上(口蓋)につけて「ラ」
パ、タ、カ、ラ、と1音を5回ずつ発音します。
パタカラと続けて発音を5回繰り返します。
パタカラ体操は口や舌の運動を効果的に行うことで、唾液の分泌を促す効果があります。
食事の前に行うと効果的です。
食事が美味しくなる魔法だと思って、1日1回で良いので毎日続けてみましょう。
寝たきりの方や経管栄養の方にも口腔ケアはとても有効です、是非日常の介護に取り入れてみてください。
無理のないところから始めて、毎日続けることで口腔ケアの効果が実感でき、介護予防を目指す強い味方になること間違いなしです。(執筆者:佐々木 政子)