両親、又はご自分が高齢になってくると、住み慣れたご自宅をもっと安全に快適に暮らせるように、床の段差を解消してバリアフリーに直したり、手すりもつけておこうと、元気なうちにリフォームしておこうと考えてしまうものです。
なにごとも、元気なうちにが大切なのですが、介護を見据えたリフォームについては、元気なうちにが落とし穴になってしまう場合があります。
今回は失敗しない住宅改修のコツを少しお伝えしておきたいと思います。
目次
早まったリフォームが無駄になる理由
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住宅のリフォームは少し手を入れるだけでも高額な費用がかかるものです。
内装や間取りを変えるなどの不具合をリフォームするついでに、床をバリアフリーに直すということであれば問題ありません。
ただ、リフォームの予定もない場合には、高齢に向けてのリフォームは早まる必要はありません。
正確には、早まらない方が無駄になりません。
実際に無駄になってしまった事例を3つ紹介します。
事例1
高齢になると、足腰が弱るだろうと予想して、まだ両親が元気なうちに250万円をかけて、床をバリアフリーにリフォームしましたが、足腰が弱る前に父が認知症を発症しました。
進行が早く徘徊がひどく自宅での介護が困難となり、老人ホームに入所の運びとなりました。
250万円あれば、老人ホームへの入居金にあてられたのにと後悔しています。
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事例2
介護用の住宅改修の経験のない業者にすすめられて、30万円で一般的な廊下の右側に手すりをつけてもらいましたが、脳梗塞の後遺症で右側に麻痺が残り、右側の手すりは全く役に立たない手すりになりました。
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事例3
両親の自宅の玄関は段差が2段あり、転倒予防の為に18万円かけてスロープをつくりました。
母が車椅子が必要になりましたが、スロープの幅が狭く、車椅子では使えないことに後から気がつきました。
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この3つの事例からもご理解いただけるように、介護が始まる前に改修を行うと、無駄になってしまうことがありますし、かえって邪魔になることも予想されます。
無駄にならない住宅改修のコツは2つ
1. 介護が必要になってから
介護を見据えたリフォームは、介護が必要になってからでも遅くありません。
住宅改修の費用を考えても、介護保険の要介護認定を受けていれば、自宅で介護を続ける為に必要な住居の改修(手すり、段差の解消、床、扉、便器の取り替え、これらに必要な工事費用)には介護保険が適用されます。
工事内容が条件を満たしていれば、1つの家屋につき20万円までは費用の1割(又は2割)負担で改修を行うことができます。
介護保険の住宅改修の詳細については、次回に少し解説させていただきたいと思います。
2. 事業者選びは慎重に
介護が必要になってから、どこに手すりがあったら、活動しやすいのかを実際に体験することが重要です。
介護が必要になってから住宅改修を行っても、実際に使ってみたら役に立たなかったというケースも多いのが現状です。
これはほとんどの場合、高齢者向けの改修の実績がない業者による改修に原因があります。
住宅改修を検討される場合には、ケアマネージャーや実績のある業者に依頼し、本人が実際に使ってみながら手すりの最適な位置、長さを決めていく必要があります。
また、住宅改修だけに頼るのではなく、利用される方の身体状況や住居の環境によっては、福祉用具の利用やリハビリテーションを組み合わせることで、改修の規模や費用を抑えられることもあります。
是非、意味のある住宅改修と最低限の費用で、快適な暮らしを手に入れていただきたいものです。(執筆者:佐々木 政子)