「健康保険」と「厚生年金保険」の保険料の計算方法は、以前の記事で紹介しました。
しかし、「保険料は毎月の給与によって変わるの?」、「保険料ってどうやって決定されるの?」と様々な疑問があると思います。そこで、今回は保険料の決定・改定時期について解説をしたいと思います。
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目次
「健康保険」と「厚生年金保険」の保険料の決定・改定時期は一緒
「健康保険」と「厚生年金保険」の保険料の計算方法(※1)は個々の被保険者の「標準報酬月額」に基づいて計算されています。決定や改定の時期は、
(2) 定時決定
(3) 随時改定
(4) 育児休業等終了時改定
の4つに大別されます。
※1「健康保険」と「厚生年金保険」の保険料の計算方法は、2016年5月20日の記事「知って納得 「健康保険」と「厚生年金保険」 保険料の計算方法」をご参照ください。
「資格取得時決定」とは
「健康保険」と「厚生年金保険」に加入した(被保険者資格の取得)時に、労働契約等の内容に基づき、会社が被保険者の報酬月額を届け出します。
最初の給与など現に受け取る報酬額をもとに算定し決定するわけではありません。
「定時決定」とは
原則として会社が7月1日現在で使用している全被保険者が対象となります。
会社は、7月1日前の3か月間(4、5、6月)の支給された給与の平均より報酬月額を出して、新たな「標準報酬月額」を決定します。
この4、5、6月の時期に、残業が多いと支給される給与も多いことから「標準報酬月額」が実際の給与よりも高くなってしまうことがあるので注意が必要です。
この定時決定された「標準報酬月額」は、その年の9月から翌年8月まで、原則として各月同じ標準報酬月額となります。
「随時改定」とは
原則として上記の「定時決定」で決められる「標準報酬月額」は原則として1年間変更はされません。
しかし、給与が昇(降)給等によって大幅に変わったときは、「標準報酬月額」を改定することとなります。これを「随時改定」といいます。
随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行います。
(2) 変動月以降の継続した3か月間(連続3か月間)の給与の支払基礎日数が17日以上であること
(3) その3か月間に支給された給与(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均額が、すでに決定されている標準報酬月額と比べて著しく高低(原則2等級以上の差)が生じたこと
「随時改定」は、変動月から4か月目から新しい標準報酬月額に改定することとなります。
「育児休業等終了時改定」とは
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3歳未満の子を養育している被保険者が育児休業等を終了し、職場復帰し給与が育児休業等前の給与より低くなった場合でも、以前は従前の「標準報酬月額」のまま定時決定まで計算されてきましたが、随時改定に該当しなくても一定条件に該当する場合は「標準報酬月額」が改定することができます。
これを「育児休業等終了時改定」といいます。
育児休業等終了時改定は、次の条件を満たす場合に行います。
(2) 育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月間の給与の平均額とこれまでの標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じること
(3) 1か月における支払基礎日数が17日以上(原則として17日未満の月がある場合はその月を除く)あること
「育児休業等終了時改定」は、育児休業終了日の翌日が属する月以後4か月目から新しい標準報酬月額に改定することとなります。
このように保険料の決定・改定はされますが、時期によって残業が多くしてしまうと実際の給与より高い「標準報酬月額」として計算されてしまうことがあります。(執筆者:社会保険労務士 高橋 豊)