一般的に、6~7月は「夏のボーナスシーズン」と言われています。「もう受け取ったよ」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
会社員のAさんもその一人。前回同様の金額が支給されそうだと噂に聞いていたので、「パソコンを買おう」、「小旅行に行こう」、「住宅ローンの繰り上げ返済もしよう」等と思いをめぐらせていました。しかし、残念ながら計画が狂ってしまったようです。
なぜなら、手取りが思っていたよりも減っていたからです。
明細を見ると、支給額は前回と変わりません。そこから控除される厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料の額だってほとんど変わりません。
雇用保険料についてはむしろ減額となっています。ところが、所得税額が約5万円もアップしているのです。
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これはいったいどういうことなのでしょうか。
会社の経理担当の方ならご存じのことと思いますが、ボーナスに対する源泉所得税額は、国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の税率にあてはめて求めていきます。扶養親族等の数※(下に説明あり)と、前月の給与の課税対象額(社会保険料等控除後の額)で税率が決まるのです。
ボーナスの課税対象額が80万円で、扶養親族等が2名の場合で仮に見てみましょう。
前月の給与課税対象額が43万円の場合
この場合の税率は12.252%です(平成28年)。80万円にこの率を乗じると、所得税額は9万8,016円となります。
前月の給与課税対象額が48万円の場合
税率は14.294%(平成28年)。80万円に乗じて求めた金額は11万4,352円となります。
前月の課税対象額によって、所得税額がアップすることがあるのです。
「そういえば、前月は残業が多かったな」と思い出したAさん。手取りを減らしたくないなら、前々月にたくさん働き、前月はそれなりに…ということが言えそうですが、会社員の場合は、そうは上手くはいかないでしょうね。
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なお、給与は「給与所得の源泉徴収税額表」を元に税額を求めていきます。給与、ボーナスから天引きされた(先払いした)所得税は、年末調整で精算していきます。
※ここでいう「扶養親族等」とは、控除対象配偶者及び控除対象扶養親族のことを言います。控除対象扶養親族とは、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の人を言います。
なお、その年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の扶養親族は、特定扶養親族と言います。(執筆者:横井 規子)