読者の皆様、「パートが社会保険に入ったら夫婦の手取りはどうなる? 平成28年10月からパートも社会保険加入に」をご拝読いただきありがとうございます。
幸いこの記事を読んで下さるかたが多く、いくつか質問を受けました。今回は、質問に対する回答という形で記事を書いてみました。
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目次
質問1 年収141万円だと社会保険に入るのではないでしょうか?
現在(平成28年8月31日)時点での社会保険加入ラインは週30時間以上(正社員の3/4以上)働く人です。
年収141万円だと、年間1470時間(30時間×49週)働いたとして時給959円ほどになりました。今年10月からの東京都の最低賃金で932円なので、年収141万円だと厚生年金・健康保険に入っている方もいらっしゃることでしょう。
ただ、全国の事業所は約592万7000(平成26年賃金センサスより)あり、従事者数は約6,170万人です。そのうち厚生年金適用事業所は186万700(平成27年3月時点、厚生労働省調べ)、厚生年金・共済年金加入者は約4,039万人です。配偶者に扶養される形で国民年金に入っている人は約932万人です。
このように厚生年金・健康保険に入っていない事業所や働く人は結構な数です。働く人のうち、国民年金の保険料を支払う人は約1,200万人の計算になります。
今年10月からのパートの社会保険加入の条件をおさらい
1. 被保険者数が501人以上の特定適用事業所に勤めていること。
2. 週に20時間以上働いていること。
3. 月収(交通費、賞与など除く)が8万8,000円以上であること。
平成26年賃金センサスによると、正社員以外の常用雇用者(パート)の人数は、約1,900万人ですが、厚生労働省の調べによると社会保険に入るパートの対象人数は約25万人とのこと、現時点ではパートで社会保険に入る人は意外と少ないのです。
上記の「3つの条件を満たしたパート」以外は、今までと同じく社会保険に加入している事業所で働いていて、週30時間以上(正社員の3/4以上)働くパートの人が社会保険に加入する目安です。
「主婦の働き方は壁がたくさん 103万円、106万円、130万円、結局いくら稼ぐのがいいの?」では、高い社会保険料負担(平成28年度国民年金保険料月額1万6260円、居住地によって異なる国保保険料月額約6,000から8,400円)になる可能性の高い、国民年金・国民健康保険加入者だとして試算させていただきました。
ちなみに、年収141万円(交通費込月収11万7500円)で厚生年金・健康保険に入った場合、
健康保険料 月額約6,800円
になります
(東京都平成28年9月分保険料額表より)。
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質問2 2か所でパートの給料をもらっている場合、社会保険料は払いますか?
2か所での事業所で仕事を掛け持ちしている人もこのご時世多そうです。例えば、一カ所で130万円(労働時間週30時間 時給884円)、もう一カ所で135万円(労働時間週30時間 時給918円)給料を受け取っていたとします。
日本年金機構HPでは…
両方が社会保険適用事業所である場合を説明しています。
このように2か所(社会保険適用事業所)から給料をもらっている場合は、どちらかの事業所を被保険者(雇われている従業員)が選択します。「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を被保険者が提出するのです。
この「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」は、この手続き自体一般的には知られていないし、筆者は念のため、某年金事務所に確認してみました。
この届け出は
だと返答を得ました。
将来的には、中小企業のパートさんも週20時間以上の労働時間で社会保険に入る方向です。
20時間以上働く事業所をかけもちする人も出てくることでしょう。今後は、この届け出をする人が増えるのではないでしょうか?
2か所以上から給与をもらっていて、合計で年収130万円以上見込まれる場合はどうでしょう?
2か所以上から給与をもらっていて、片方は100万円(週20時間以上労働)、片方は40万円など、合計で年収130万円以上見込まれる場合はどうでしょう?
片方が社会保険に加入の事業所で働いている本人も社会保険に入る条件を満たしているなら、社会保険加入条件を満たしている会社で、健保・厚生年金保険料は給与から差し引かれることになります。もう片方の給与が少ない方は、税務署で確定申告の手続きすることとなりますね。
合計年収130万円を見込まれるようなときは、第3号被保険者が配偶者の扶養からはずれたときに該当するので、居住地の市区町村役場に、国民年金種別変更届(3号→1号)を出すことになります
合計が年収130万円以上見込まれる場合で以下の時
1.両方とも社会保険に加入している事業所でも労働時間や収入、従業員規模などで2か所とも働いている本人が社会保険に入る必要がないとき。
2.片方が社会保険に未加入の事業所、または2か所とも社会保険に未加入事業所のとき。
今までは、事業所が所得税の支払調書を提出するのが税務署で、厚生年金・健保関係書類は年金事務所(または健保組合)、国民年金・国保の書類は、従業員居住地の市区町村役場で、お役所同士が通じ合っている感じはありませんでした。
だから、2か所の給与合計が130万円以上の年収でも、2か所とも会社員の配偶者の扶養に入っている扱いにすることが実際できてしまいました。本当は、国民年金や国民健康保険の保険料を払うべきなのに、支払わなくても済んでいた…面もありました。
マイナンバーでごまかしの聞かない世の中に…
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今年からは会社が従業員のマイナンバーの把握をして、給与計算をすることになっています。給与支払するときに、所得税で支払調書が税務署に提出されれば、マイナンバーから他にも所得があることがおそらくわかります。
社会保険料を支払わなければならない年収だという情報が、年金事務所の方にも行くのではないでしょうか?
合計で年収130万円以上になりそうな該当者には連絡がくるようになるかもしれないですね。ごまかしの聞かない世の中になりそうです。(執筆者:社会保険労務士 拝野 洋子)
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