女性の社会進出に期待が高まっていますが、「103万円の壁」を意識する女性が多いのも現実です。彼女たちは
という思いが強く、短い労働時間で中途半端に「103万円の壁」を超えるよりは、扶養の範囲に収まっていた方が得策と考えているようです。
目次
「103万円の壁」ギリギリママたちに朗報
今回は、「年収103万円を超えると税金がかかるから……」というパートママさんに、収入を増やしても課税所得が抑えられ、なおかつ老後資金準備ができるという新ワザをお伝えしたいと思います!
なお、同じ「103万円の壁問題」でも、配偶者控除の計算とは異なります。以下のテクニックを使うと、家計の主収入を担う人が配偶者控除を受けられなくなる場合も出てきますので、ご注意ください。
2017年1月から「パート主婦」も個人型確定拠出年金に加入できる
2017年1月から、個人型確定拠出年金(=個人型DC、愛称:iDeCo、以下「個人型DC」)の加入対象者が拡大します。
対象が「公務員や専業主婦などに広がる」と説明されていることが多いですが、正式には「専業主婦」の部分は「国民年金制度の第3号被保険者」です。
「国民年金制度の第3号被保険者」とは
会社員や公務員などに扶養されている配偶者です。
ここで「扶養」とは、「社会保険における扶養」です。従来は「年収130万円未満」「週30時間未満の労働」などが扶養の要件でしたが、2016年10月より社会保険の加入対象が広がります。
その配偶者の勤務先の規模や働き方によっては、年収106万円以上130万円未満の配偶者自身が第3号被保険者でなくなり、自身で社会保険に加入(第2号被保険者)することになります。
個人型DCの特徴や2017年1月からの改正点は、多くの執筆者が説明していますので詳細は割愛します。
従来、個人型DCに加入できなかった第3号被保険者には、「専業主婦」だけでなく、「扶養内で働くパート」主婦・主夫も含まれます。
この記事では、いわゆる「103万円の壁」を超えないように調整しながら働いている方が理解しておきたい、超重要ポイントをお伝えしましょう。
念のため、「103万円の壁」の確認
「103万円の壁」は上記「社会保険における扶養」とは全く別の話。「自身が所得税を納める壁」、であり「配偶者が配偶者控除を受けられる壁」でもあります(超えても配偶者特別控除があります)。
ここでは、「自身が所得税を納める壁」を超えずに老後資金を貯める新しい方法をお伝えします。
給与以外に収入がない場合、自身が所得税を納めるかどうかを判断する年収の「103万円の壁」は、次の式で計算されます。
(所得)=(給与年収)-(給与所得控除 65万円)
(課税所得)=(所得)-(基礎控除 38万円)
コストは所得にカウントされない!
「年収(=年間収入)」と、年間の「所得」は違います。「所得」は「収入」から「経費」を引いたもの。パートに出るには、洋服や靴、化粧品などを買うなど身支度が必要です。その代金を、概算の「経費」として所得税の計算上、認めています。
この経費が「給与所得控除」です。「控除」は「カウントされない」という意味です。「給与所得控除」は、年収によって異なります。ここで対象にしている「103万円の壁」ギリギリさんにとって、給与所得にカウントされない金額は、65万円です。
「基礎控除」は、人が生きるために必要な経費です。
生きるためのコストとして38万円は所得にカウントしなくていいというものです。
パート収入から
・ 生きるためにカウントされない(基礎控除)38万円
この合計が103万円です。収入のうち103万円までは、課税所得に入りません。課税所得がゼロ円の人は所得税を納めなくて良いのです。
年収が103万円を超えると、超えた部分が課税所得となり、所得税がかかります(一般に年収100万円から住民税がかかりますが、自治体によって詳細が異なる場合があります)。
「103万円の壁」ギリギリさんこそ、個人型確定拠出年金
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個人型DCは、企業型と違い、全額自分の収入から掛金を納めます。
しかし、掛金の額は、所得にカウントされないのです。「小規模企業共済等掛金控除」といって、その年に納めた掛金分は、給与所得控除や基礎控除と同じように、収入から差し引くことができます。
つまり、確定拠出年金に加入した場合、掛金相当額の収入を増やしたとしても、所得税の計算上、掛金が課税所得に含まれないのです。しかもその掛金は、自分の老後資金として運用されています。
月給2万円アップで働き、老後資金に回す
2017年1月から、第3号被保険者は、月額2万3,000円(年額27万6,000円)まで確定拠出年金を利用できます。
ざっくり言って、月給2万円程度までは仕事を増やしても、所得税の面では納税義務はありません。その上、老後の生活費を準備できるというワケです(配偶者の方の配偶者控除、住民税、社会保険制度にはご留意ください)。
確定拠出年金は、ほかにも税制面でのメリットがあります。運用益が非課税で、将来受け取る際にも税金面で優遇されています。また、原則として60歳までは現金化できないというデメリットもあります。
他の記事などを参考にして頂き、制度の詳細を十分理解してから加入してください。(執筆者:石原 敬子)