前回のコラムで「民泊とは何か?」、「民泊と民宿の違い」、「民泊新法」について説明いたしました。
第2回目として、今回は、民泊がこれほどまでに注目を浴びる理由と、民泊における空き家の活用の可能性および課題について考えてみようと思います。

目次
民泊が注目される背景
日本政府観光局の統計によると、平成27年の外国人旅行者数は1,974万人。前年と比べて600万人以上増加、2,000万人に迫る勢いです。そして、今年は2,000万人超えが確実視されています。
そこで懸念されているのが、宿泊施設の不足です。

日本における宿泊者の7人に1人が外国人
観光庁によると、日本国内の延べ宿泊者数は平成21年度まではほぼ横ばい。外国人宿泊者数は全体の6~7%に過ぎませんでした。
ところが、外国人宿泊者数の割合は翌平成22年から増え始め、平成26年には9.5%、平成27年には14.7%に達し、日本における宿泊者の7人に1人が外国人という状況です。
外国人旅行者の増加に伴い宿泊施設の稼働率も上がっています。平成27年7月の客室稼働率は、ビジネスホテルが78.1%、シティホテルが82.2%と非常に高い状態です。
このペースで外国人観光客が増えると、客室稼働率はより高くなり、宿泊施設の不足がより深刻になると考えられています。そこで、民間人の資産を活用した民泊が注目を集めるようになったのです。
民泊は、この社会のひずみをうまく利用したビジネスといえそうです。

空き家活用の3つの課題
空き家を活用して民泊を行う際には、次の3つの課題が考えられます。
1. 違法性をいかにクリアするか
前回ご説明したように、民泊新法を制定して、2017年からそれを合法化しようという流れにはなっていますが、現時点では営業に該当する民泊行為はすべて違法行為です。
お金をもらって人を泊めても営業とは言えないこともあります。しかし、民泊の行為が反復継続されていることや事業性が高いことが認められれば、それは列記とした営業に当たるので注意が必要になります。
Airbnbなどの仲介サイトを利用して民泊に参入する人も多くいます。こうした民泊の多くは宿泊料を請求しているはずで、程度の差こそあれ繰り返し旅行者を宿泊させているはずです。つまり営業に当たる民泊を運営していることになります。
こうした有償の民泊はなぜ摘発されないのか?
その理由の1つとして、反復して有償の民泊が行われているという事実の把握と、所有者・経営者の特定にかなりの労力と時間を要することが挙げられます。限りなく疑わしいグレーでは摘発することはできません。
また、1件摘発したとしてもそれを上回る新規参入物件があるため、手を付けることができないというのが現状です。
Airbnb経由での民泊は、このような理由でいわば放置されてしまっているだけで、決して合法的なものではないことをご理解いただけたでしょうか。ただ、この点に関しては、2017年に施行予定の民泊新法によって解決される課題といえます。
2. 民泊のリスク
民泊の利用者が必ずしも善良な旅行者とは限りません。あらかじめ、あらゆるトラブルを想定しておくことが大切です。
何らかの理由で人が亡くなるような事故が発生した場合、マンションなどの賃貸物件と同様、物件価値が失われてしまうことだって考えられます。
3. 周辺住民からの理解

3つの注意点の中で、私はこれが最も重要だと感じます。
民泊を利用するお客さんは周辺住民にとっては見ず知らずの旅行者です。周辺住民との後々のトラブルを防ぐためにも、空き家を利用して旅行者を宿泊させる旨を周知し、しっかりと理解を得ておくことが重要です。
他人の敷地に入って記念撮影をしたりするなど、モラルが欠如した旅行者も多いと聞きます。ルールを守るよう、宿泊者に注意を促すことも必要です。地域住民の理解を得ることなくして、安定的な民泊経営はあり得ないといっても過言ではないでしょう。
制約はあるにしても、もう間もなく2017年に民泊が広く認められるようになる流れになっています。民泊ビジネスに興味がある人は、もう動き始めてもよいころだと思います。民泊がどのように社会に浸透していくのかも楽しみです。(執筆者:内田 陽一)