高度経済成長のころは、誰もが夢のマイホームの購入を目指して働いていました。
1973年正月の新聞に掲載された住宅すごろくの上がりは、郊外の庭付き一戸建て。
そんな「上がり」を夢見て、そのころの人たちは頑張っていたと思われます。ところが、近年の住宅事情はすっかり様変わりしてしまいました。
2000年代に入ると「上がり」も多様化。庭付き一戸建てのほか、タワーマンションや外国移住なども加わりました。
そしてついに、住宅すごろくから「上がり」が消滅したというのです。
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広まりつつある「共有」という概念
いま若者を中心に広がりつつある共有という概念。
不景気な時代しか知らない年代は、それより上の年代と比べて物を所有する傾向が低いというのです。
つまり、購入する必要がないものはレンタルで済ませたり、数人でお金を出し合って共同所有したりする傾向にあるようです。
共有で済ませられるものとして、ドレスや車、DVDなどが上位に並んでいますが、住宅もシェアで構わないと考える人も少なくないということが分かりました。
大観的には賃貸住宅もシェアと考えられるので、そこにはそのような人の意見も含まれているものと考えられます。
とはいえ、一般的に住宅で共有といったらシェアハウスを思い浮かべる人が多いと思います。
シェアハウスに関心を寄せる人は、若い世代を中心として増加しています。「共同生活はお金がない人がするもの」。
以前はそんなイメージを持たれがちだったシェアハウスですが、実情は少し異なるようです。
シェアハウスに住む人の年収は、他の形態の住宅に住む同年代の人と同等であるという調査結果が得られています。
どうやら彼らがシェアハウスに住む理由は、お金以外の何かにあるようです。
なぜシェアハウスに住むのか?
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人と人とのつながりや絆を求める人たちがシェアハウスに集まることが考えられます。
この傾向は2011年の東日本大震災以降顕著になったと言われています。シェアハウスでは他の入居者が先に帰っていれば明かり灯っています。
都会の暗いワンルームマンションにはない人の温もりを感じられるのがいいですね。
気の合う友達ができれば、シェアスペースで雑談したり食事をしたりすることもできます。こうした距離感も、若い人には心地よいのでしょう。
コンセプト型シェアハウスには、高価すぎて自分で購入することができない設備を備えたところも。
料理好きが集まるシェアハウスにはプロ仕様の調理器具が備わっていたり、ゴルファーが集まるシェアハウスにはドライビングレンジやシミュレーションゴルフの機器が備えられていたりしています。
共通の趣味を持つ仲間と存分に楽しむことができる環境が整っていることも、シェアハウス人気の一因となっているのではないでしょうか。
今後はこのような思考を持つ世代が増えることが予想されます。
賃貸事情の変遷に合わせて、そのニーズに合う賃貸住宅を提供していくことが求められそうですね。(執筆者:内田 陽一)