扶養の範囲内にいるという場合、「〇万円の壁」という言葉があるように、専業主婦(主夫)側の収入を抑えることに通常対策がされます。
ただ大黒柱の夫(妻)側の状況によっても外れることがありますので、ここもおさえておく必要があります。
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目次
(1) 税の扶養:給与年収1,120万円超になると(平成30年以降)
所得税・住民税計算上の扶養は、給与年収103万円以下が範囲内という「103万円の壁」が有名ですが、平成30年以降は「150万円の壁」も生まれます。
この壁を超えなければ、大黒柱の所得から38万円控除できるというものです。
しかし平成30年以降は給与年収1,120万円を超えると控除額は減少し、1,220万円超では控除額は0になって事実上扶養を外れる形になってしまいます。
ただし給付金の所得制限においては、年収103万円以下である限りは扶養親族等としてカウントされます。この点の詳細は下記を参照ください。
「150万円の壁」ができても児童手当の所得制限でまだ残る「103万円の壁」とは
(2) 健康保険の扶養:年齢75歳以上になると
社会保険完備の職場で勤めていて加入要件を満たしていれば、配偶者などの親族が健康保険の扶養に入ることはできます。
退職しても任意継続という形で前職の健康保険に加入していれば、2年間の任意継続の期間が終了するまでは、扶養のままでいることはできます。
ただ大黒柱(被保険者)が75歳になったら、そのまま勤めていようと(もしくは退職で任意継続に切り替わって2年未満でも)職場の健康保険からは脱退し、都道府県単位の後期高齢者医療保険に加入します。
後期高齢者医療保険は国民健康保険と同様、扶養の概念がありません。
扶養を外れると通常は市区町村の国民健康保険に加入し、保険料負担が発生します。ただし、このようなケースで外れる場合は保険料が軽減されます。
国民健康保険料の所得割(所得に応じた額)は免除され、定額の均等割は7割軽減(平成29年度の場合、平成30年度については5割軽減)されます。この点の詳細は下記を参照ください。
世帯所得 ≦ 33万円だと8.5割軽減となる「後期高齢者医療保険」 国保との違いや、段階的な改正に注意すべき点をまとめました
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(3) 年金の扶養:年齢65歳以上になると
こちらも職場の社会保険に加入していれば、配偶者が年金の扶養(国民年金第3号被保険者)になることができます。
しかし大黒柱が65歳になり老齢年金の受給権が発生すると、配偶者は国民年金第3号被保険者から外れます。
もっとも国民年金保険料は60歳到達前までが支払期間ですから、保険料支払いが発生してしまうのは5歳以上の年の差婚といったケースです。
勘違いしやすい点
ここは少しややこしいところですが、職場の厚生年金は70歳到達までは加入するので、厚生年金保険料が給与から天引きされているのに、配偶者は扶養から外れるという状況も生じます。
厚生年金加入者には
・ 国民年金第2号被保険者
という2通りの定義づけがありますが、老齢年金の受給権がある65歳以上70歳未満の「厚生年金被保険者」は「国民年金第2号被保険者」にはあたりません。
年金の扶養と言える国民年金第3号被保険者は、国民年金第2号被保険者の配偶者に限定されます。
職場の社保に加入している限り扶養のままだと思い込んでいると、見込み違いの国民年金負担が発生することにもなりかねないので、ここは注意が必要です。
さらに第3号被保険者から第1号被保険者(国民年金加入者)への切り替え手続きも忘れてはなりません。
受給する年金の減額がされることも
また厚生年金保険料を負担しながら給与と年金両方もらうと、支給される年金が少なく調整されるケースも制度上生じることがあります。
現状65歳以上も働き続けられる環境を用意している企業は増えてきていますが、65歳以上就労人口比率が1割台と多いとは言えません。
しかし今後、年の差婚夫婦の大黒柱が65歳以上も働き続けるとなった場合には、年金の支給調整と国民年金負担のダブルパンチに悩まされるケースも増える可能性があり、扶養を外れるリスクを理解しておく必要もあります。(執筆者:石谷 彰彦)