目次
学習指導要領
それは文部科学省が定める、わが国の学校教育の方針が書かれた法的文書。それは10年ごとに改訂され、日本中の子どもたちが使う教科書の中身や、先生たちの授業の内容を大きく左右するものです。
そして、今年2017年度というのは、高校の新しい学習指導要領が告示される年なのです!(小学校は一昨年度,中学校は昨年度というより今年の3月末でした。)いやぁ文部科学省、加計問題に揺れている場合じゃありません。
今回は、すでに告示されている中学校の新学習指導要領から、お金について気になるところをピックアップして考えてみたいと思います!
新学習指導要領から、政府の思惑を読み取る

社会
お金と言えば金融。まずは社会の学習指導要領を見てみましょう。旧版と比較して、こんなのが増えています。
起業について触れるとともに、経済活動や起業などを支える金融などの働きについて取り扱うこと。
なるほど。起業マインドを中学生のころから養うのですね。子どもたちが大人になったら、ベンチャービジネスへの投資が加速しそうです。
その指導が公務員である先生方にできるのかというのには、いささか疑問が残りますが…。
さらに、学習指導要領解説(学習指導要領をさらに詳細に解説したもの)には、こうもあります。
…社会に必要な様々な形態の起業を行うことの必要性に触れること、経済活動や起業などを支える金融などの働きが重要であることについて取り扱うこと…企業を経営したり支えたりすることへの関心を高めるとともに…。
社会の担い手としての企業について知ったうえで、それが望ましい姿で実現するため、金融すなわち投資という手段で支える人間を育成しようという政府の意思が感じられます。銀行任せにしない人間を育成するのですね。
家庭科
続いて、現行の学習指導要領で裁縫を削ってファッションについての知識獲得に舵を切った(コレ英断だったと思います)家庭科についても見てみましょう。新学習指導要領にはこんな記述があります。
計画的な金銭管理については、生活に必要な物資・サービスの購入や支払い場面を具体的に想定して学習を展開するように配慮し、高等学校における長期的な経済計画や家計収支等についての学習につながるようにする。
でましたね!
こんな文言、現行の学習指導要領にはありません。
そんなことを高校では学習するのでしょう。
それを見据えた指導が、中学校には求められています。
遅くとも来年の3月になる、高校の学習指導要領には注目ですね!

政府が自己責任をサポートする時代へ
以前のわが国は、銀行が護送船団方式なら国民も終身雇用と年功序列で、家計や金融について知識がなくても、なんとなく生きてこれたのでしょう。
しかしそれも今は昔。政府が企業を守り企業が国民の生活を守ることの無理を、政府もついに悟ったのではないでしょうか。
その姿勢が如実に表れた今回の学習指導要領改訂だったと思います。
はい。いまさらかもしれませんが、これからの時代は、生活保障は自己責任です。ですから
「お金の話は難しい」
なんて言ってられませんよ。
新学習指導要領はすでに告示されており、中学校では2021年度から、高校では2022年度から全面実施されます。2021年に中学1年生(12歳)の子どもが大学を卒業して社会人になるのは2031年。
今からたった14年後です

私ならまだ40代、人生は半分近く残っています。そのころには、私たちが学校で習っていない知識やスキルを身に付けた新世代が現れるのです。これはうかうかしていられませんね。
はい。やはり旧世代…の私たちも、ゆっくりと新時代の水に慣れていかなければならないのでしょう。そのあたりのことは政府も配慮してくれているみたいで、近年はさまざまな制度が矢継ぎ早に出来ていますよね。
新制度の創設は今後も続くかもしれません。
・ 2016年:ジュニアNISA
・ 2017年:iDeCo(個人型確定拠出年金)
・ 2018年:積立NISA
きっと非課税制度を創設することで、国民の自己責任をサポートしようとしているのでしょう。資産を形成するという本来の目的にとどまらず、知識やスキルを高めるという意味でも、これを利用しない手はないと思います。
これが公的年金縮小への布石ではないことを願って…。(執筆者:徳田 仁美)