国民年金の第3号被保険者となり、自分で保険料を納付する必要のない「専業主婦」、または「公務員」についても、2017年1月から個人型の確定拠出年金(以下では愛称に決まった「iDeCo」で記述)に、加入できるようになりました。
加入資格が拡大されてからもう8か月が経つのかと、感慨深く思うと同時に、
というタイトルの、産経ニュースの記事を思い出しました。
2014年1月にNISAが始まってから、ちょうど1年が経過した2014年12月末時点の、NISA口座の稼働率(総口座数に占める稼働口座数の割合)が約45%で、約55%は休眠状態で、証券業界が焦っているというものです。
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目次
株価の値動きと連動しているように見える、NISA口座の稼働率
直近の稼働率はどうなっているのかと思い、日本証券業協会のウェブサイトを見てみたら、最新のデータとして2017年7月末時点の稼働率が紹介されており、それは60.5%でした。
かなり稼働率は上がっているのですが、依然として約40%は休眠状態になっているのです。
稼働率の推移について
さらに詳しく調べてみると、稼働率が60%を初めて超えたのは、2016年末時点になります。
これはトランプ大領領が誕生すると、アメリカの株価は下落するという予想に反して、株価が急上昇し、その影響を受けて日本の株価も急上昇したため、日本の個人投資家がNISA口座を通じての株式の売買を、活発化したからのようです。
しかしここ数か月の株価は、落ち着いた値動きになっており、それと歩調を合わせるように、NISA口座の稼働率も上昇することなく、ほぼ横ばいで推移しております。
NISAとiDeCoは共通して、投資による儲けが非課税になる
例えば投資信託の分配金や譲渡益からは、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%が徴収されるため、投資によって発生した儲けの約2割は原則的に、税金として消えてしまうのです。
しかしNISA口座やiDeCo口座を通じて、投資信託を購入すれば、分配金や譲渡益は非課税になるという共通点があります。
このように両制度は似ている部分が多いため、iDeCo口座の稼働率もNISAと同じように、当面は低い水準で推移していくような感じがするのですが、個人的にはその心配はないと考えております。
NISA口座の稼働率は、個人投資家の「相場感」に影響を受ける
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産経ニュースの記事を読むと、NISAが開始してから1年が経過した時点の口座の稼働率が、約45%しかなかった原因として、
が挙げられております。
つまり急減な株価の下落を受け、多くの個人投資家は、この先も株価は下がっていくと予想し、そうなると今は投資に適したタイミングではないと判断したのです。
それに対してトランプ大領領が誕生した直後は、急減な株価の上昇を受け、多くの個人投資家は、この先も株価は上がっていくと予想し、そうなると今は投資に適したタイミングであると判断したのです。
このように考えていくと、個人投資家の株価の先行きに対する予想、いわゆる「相場感」が、NISA口座の稼働率に対して、強い影響を与えているのではないでしょうか?
最初に仕組みを作り、その仕組みに従って金融商品を購入するiDeCo
iDeCoは加入する時に、毎月拠出する掛金の金額と、その掛金で購入する金融商品(定期預金、投資信託、保険など)を決め、途中で変更しない限り、ずっと同じ金融商品を、同じ金額分だけ、定期的に購入していきます。
つまり最初に仕組みを作り、あとはその仕組みに従って、自動的に金融商品を購入していくので、iDeCo口座の稼働率はNISAと違って、個人投資家の相場感に左右されにくいのです。
また定期的に一定額の金融商品を購入していくと、価格が安い時には多く、価格が高い時には少なく購入するため、結果的に平均購入単価を抑えることができます。
このように定期的に一定額の金融商品を購入していく投資法は、「ドル・コスト平均法」と呼ばれており、iDeCoはこの投資法が、自然に実施できる仕組みになっているのです。
選択肢が多くなると「決定麻痺」が起き、購入率が下がってしまう
スーパーマーケットにジャムの試食コーナーを設置し、24種類のジャムを並べる陳列と、6種類のジャムを並べる陳列を、数時間ごとに入れ替え、そこで試食をしたお客さんが、どんな行動を取るのかを調べる実験が行われました。
試食コーナーに立ち寄ったお客さんは、24種類の場合は60%、6種類の場合は40%だったので、試食の種類が多い方が、お客さんの関心を集めることができたのです。
しかし試食した後の購入率は、24種類の場合は3%だったのに対し、6種類の場合は30%だったので、試食の種類が少ない方が、購入率が高かったのです。
このように選択肢が多くなると、迷いが生じてしまい、かえって購入率が下がる現象は、「決定麻痺」と呼ばれております。
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iDeCoは購入できる金融商品の選択肢が少なく、決定麻痺が起きにくい
NISA口座を通じて購入できる金融商品としては、
・ 株式投資信託
・ 国内外のETF
・ 国内外のREIT
などがあります。
ただ東証1部に上場している企業は、現在は2,000社を超えているので、この中から選ぶだけも、かなりの迷いが生じると思うのです。
その一方で、iDeCo口座を通じて購入できる金融商品は、運営管理機関(窓口となる金融機関)によって違いはありますが、20~30本くらいしかありません。
しかもこの中から、手数料の安いインデックスファンドだけを選んでいくと、更に選択肢は絞られます。
そうなるとiDeCoはNISAと違い、決定麻痺により口座の稼働率が下げる可能性は、かなり低いと思うのです。(執筆者:木村 公司)